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運動後の高炭水化物摂取による回復率は、肝グリコーゲンが6時間で100%、筋グリコーゲンが12時間で70%

サイクリストが疲労困憊に至るまで運動を続けて肝臓や筋肉のグリコーゲンを枯渇した後に、炭水化物を摂取することによるグリコーゲン回復の程度を、高磁場13C MRSと筋生検で検討した結果が報告された。肝グリコーゲンは6時間で完全に回復し、筋グリコーゲンは12時間後にも運動前の状態に回復していなかったという。

運動後の高炭水化物摂取による回復率は、肝グリコーゲンが6時間で100%、筋グリコーゲンが12時間で70%

高磁場13C MRSと筋生検によって、グリコーゲンの回復を追跡

肝臓や筋肉のグリコーゲンを枯渇させた後に高炭水化物食を摂取した場合、前値に回復するのにどの程度の時間を要するかについて、複数の報告があるものの結論は得られていない。今回取り上げる論文の研究では、十分なトレーニングを行っている男性サイクリストを対象として、超高磁場(7テスラ)MRIによる13C磁気共鳴分光法(13C MRS)、および筋生検によって、グリコーゲン枯渇後の回復を調査している。その結果、肝臓では6時間で枯渇前の値に回復するが筋肉では12時間経過後も前値まで回復しないこと、および、13C MRSと生検での測定結果は強く相関することなどが明らかになったという。要旨を紹介する。

12人の男性サイクリスト対象の無作為化クロスオーバー試験で検討

この研究には、年齢18~40歳、BMI18.5~25、VO2peak 50mL/kg/分以上という条件を満たす、日常的にトレーニングを行っている12人の男性サイクリストが参加した。喫煙者、疾患有病者、および、過去2カ月以内の献血歴やベジタリアンまたはビーガンの該当者は除外されている。

参加者の主な特徴は、年齢25±5歳、BMI 21.9±1.5、体脂肪率13±3%、VO2peak67±5mL/kg/分、Wmax(最大作業負荷)5.8±0.7W/kg。摂取エネルギー量は2,479±395kcal、炭水化物53±5%、タンパク質16±3%、脂質31±4%。

試験デザインは無作為化クロスオーバー法で、疲労困憊に至るまで運動を続けた後、回復期間に水のみを摂取する条件(絶食条件)と炭水化物を摂取する条件(炭水化物摂取条件)を、順序を無作為化し7日間のウォッシュアウト期間を設けて実施した。詳細は以下のとおり。

運動負荷テスト

テストの2日前から激しい運動、飲酒を禁止し、前日の22時までに標準化された食事(2.3MJ〈約550kcal〉、炭水化物65%、タンパク質15%、脂質20%)の食事を摂取後、絶食とした。自転車エルゴメーターを用いて90%および50%Wmaxで各2分(60rpm)を交互に行い、90%Wmaxで2分を維持できなくなった時点で80%Wmaxに下げ、それを維持できなくなった時点でさらに負荷を下げていくことを繰り返し、疲労困憊に至るまで続けられた。

回復中の食事

炭水化物摂取条件では、運動負荷終了後6時間までは30分ごとに、ショ糖含有飲料(ショ糖として1.2g/kg/時、6時間で7.2g/kg)を摂取し、8時間後と10時間後の2回、炭水化物(1.4g/kg)を含む食事を摂取した。12時間での炭水化物摂取量は合計で10g/kg。

一方、絶食条件では、運動負荷終了後12時間まで、水または茶のみ摂取可とした。

グリコーゲンの測定

各条件において、運動の負荷前、負荷終了直後、回復6時間後、12時間後の計4回、13C MRSにより肝臓と大腿四頭筋のグリコーゲン量、筋生検により大腿四頭筋のグリコーゲン量を測定した。

肝グリコーゲンは6時間で100%超回復、筋グリコーゲンは12時間で7割回復

疲労困憊に至るまでの時間は、炭水化物摂取条件が124±14分、絶食条件は125±13分で有意差はなかった(p=0.816)。

肝グリコーゲンの変化

13C MRSで測定した肝臓のグリコーゲン量は、絶食条件では、運動負荷前が53±22g、運動負荷直後が25±11gであり、有意に減少していた。そしてそれ以降、回復6時間時点では20±10g、12時間時点では18±11gと低下傾向はみられたが有意な変化でなかった。

一方、炭水化物摂取条件では、運動負荷前が51±20g、運動負荷直後が31±18gであり、有意に減少していた。そして回復6時間時点では77±21gと、運動負荷直後との比較のみでなく、運動負荷前との比較でも有意に高値となっていた。12時間時点では86±11gとさらに増加していた。

全体として、肝グリコーゲンは疲労困憊に至る運動により約60%に減少し、その後、絶食とした場合はさらに約50%のレベルへと減少した。それに対して炭水化物を摂取した場合は回復6時間時点で既に運動負荷前の100%を超えるレベルに回復していた。

筋グリコーゲンの変化

13C MRSで測定した大腿四頭筋のグリコーゲン量は、絶食条件では、運動負荷前が62±20g、運動負荷直後が22±9gであり、有意に減少していた。そしてそれ以降、回復6時間時点では22±7g、12時間時点では22±12gと、有意な変化がなかった。

一方、炭水化物摂取条件では、運動負荷前が68±20g、運動負荷直後が24±11gであり、有意に減少していた。そして回復6時間時点では35±11g、12時間時点では45±13gとなっていて、いずれも絶食条件より有意に高値だった。

全体として、筋グリコーゲンは疲労困憊に至る運動により約35%にまで減少し、その後、絶食とした場合は変化がなく、炭水化物を摂取した場合は12時間時点で約70%に回復していた。

13C MRSと生検での測定値の相関

13C MRSと筋生検での測定結果の相関をみるとr=0.89であり、強い相関のあることが確認された(p<0.001)。また、級内相関も0.87(95%CI;0.83〜0.92)と高く、測定結果を絶対値としてみてもよく一致することが示された。

文献情報

原題のタイトルは、「Carbohydrate intake of 10 g/kg body mass rapidly replenishes liver, but not muscle glycogen contents, during 12 h of post-exercise recovery in well-trained cyclists」。〔J Physiol. 2025 Aug 20〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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