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コーヒーは非肥満者のアディポネクチンに関連し代謝改善に有効も、肥満者では無効の可能性 徳島大学

非肥満者ではコーヒー摂取と血清アディポネクチン値が有意に正相関し、肥満者ではその相関がみられないとする研究結果が報告された。徳島大学の研究チームによる成果であり、「Nutrition, Metabolism, and Cardiovascular Diseases」に論文が掲載されるとともにプレスリリースが発表された。著者らは、今後のコーヒー摂取を含めた食習慣と代謝異常との関連についての研究では、肥満の有無による違いに注目した検討が必要ではないかと述べている。

コーヒーは非肥満者のアディポネクチンに関連し代謝改善に有効も、肥満者には効果がない可能性 徳島大学

研究のポイント

  • 脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、インスリンの働きを助け、血糖値を下げる、動脈硬化を予防するなどの働きがある。
  • コーヒー摂取で血清アディポネクチンが増えるという報告があるが、肥満ありの人、なしの人に分けて解析されていなかった。
  • 本研究では、コーヒー摂取と血清アディポネクチンとの関係を肥満の有無で分けて検討した結果、肥満がない人において有意な正の関連がみられた。

研究の背景と経緯:コーヒーとアディポネクチンとの関連は、肥満の有無で異なるか

循環器疾患は主要な死因の一つであり、2021年には世界で2,050万人が循環器疾患関連で死亡したと報告されている。循環器疾患のリスク要因である肥満、高血糖、脂質異常、高血圧は、それらの複合体としてメタボリック症候群を形成する。

一方、コーヒーは世界で最も人気のある飲料の一つで、疫学研究の結果から、コーヒーの健康への効果も期待されている。例えば、本論文の著者らの研究グループは既に、コーヒーをよく飲んでいる人は、肥満の有無に関わらず代謝の異常が少ないということを報告している(Watanabe et al., Nut Metab Cardiovasc Dis. 2023)。

脂肪細胞から分泌されるホルモン「アディポネクチン」は、インスリンの働きを助け、血糖値を下げる、動脈硬化を予防するなどの働きがあることが知られている。そして、コーヒー摂取により、血清アディポネクチン値が上昇するとする、複数の研究報告がある。

しかし、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、肥満と重要な関係があるにもかかわらず、肥満の有無に分けた、コーヒー摂取との関連の解析は行われていなかった。

研究内容と成果:普通体重群でのみ、コーヒー摂取とアディポネクチンが正相関

本研究では、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC STUDY)徳島地区調査に参加した606名の方を対象に、コーヒー摂取と血清アディポネクチンとの関係について、肥満の有無によって分けた解析を行った。

年齢、性別などの交絡要因となり得る因子を調整した重回帰分析※1の結果、普通体重者においてはコーヒー摂取と血清アディポネクチンに有意な正の関連(コーヒーをよく飲む人では血清アディポネクチンが高い)がみられた。その一方、肥満者においては有意な関連がみられなかった。

※1 重回帰分析:ある変数(本研究では血清アディポネクチン)とある変数(コーヒー摂取量)との間の関係性を、交絡因子(関係性に影響を与え得る因子。年齢、性別など)を調整したうえで検討できる解析手法。

今後の展開:個人の体質を考慮した栄養指導へ

コーヒーを飲んでいると代謝の異常のある人が少ないことの理由として、肥満のない人ではアディポネクチンが関与していることが示唆された。

これまでの研究から、肥満者と非肥満者の代謝異常は、遺伝的背景も含めて病態が異なるとされている。著者らは、「今後、コーヒーを含めた食習慣、生活習慣と代謝異常との関係について、肥満の有無による違いに注目した解析を行うことで、個々人の体質にあった、健康に良い生活習慣を考えるうえで有用な情報を発信していきたいと考えている」としている。

プレスリリース

肥満の無い人はコーヒー摂取で代謝を助けるホルモンアップ?(徳島大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Association between coffee and adiponectin according to the obesity status: A cross-sectional analysis of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study in Tokushima, Japan」。〔Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025 Apr 28:104103〕
原文はこちら(Elsevier)

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