6年ぶりの改訂で新たに「身体冷却」を推奨 JSPO『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック-第6版』
熱中症予防活動の指針となる教材として1994年の発刊以来、全国の指導者、教育関係者を中心に幅広く活用されてきた『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』(公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO))が6年ぶりに改訂、ウェブサイトでの公開がスタートしました。どなたでも無料でダウンロードできますので、ぜひご一読のうえ、スポーツ現場での熱中症予防にお役立てください。
「スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条」で身体冷却を新たに推奨
今回の改訂で注目すべき箇所は「スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条」です。この中の第4条【薄着スタイルでさわやかに】が【冷やそう、からだの外から内から】となりました。

改訂の意図について、同協会スポーツ活動中の熱中症事故予防に関する研究班長 川原 貴氏は「最近はスポーツ活動中の身体冷却が注目されるようになり、その有効性が認められるようになりました。しかし、スポーツの現場へ十分には普及されていません。そこで今回の改訂では、身体冷却を大きく取り上げることにし、スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条へ入れることにしました」とコメントしています。
身体冷却の意義と具体的な取り入れ方
全64ページのガイドブック第6版は、熱中症の基礎情報とともに、「熱中症予防5ヶ条」それぞれの詳しい解説が掲載されています。今回加わった【第4条冷やそう、からだの外から内から】については、「体温・筋温の最適レベル」、「身体冷却の効果」、「外部冷却の効果」、「内部冷却の効果」、「身体冷却のタイミング」、「身体冷却をスポーツ現場に取り入れる」、「体からの熱放散促進」といったテーマで理解を深めることができます。その中から一部ご紹介します。本編はガイドブックをご確認ください。
身体冷却をスポーツ現場に取り入れる
『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』(第6版)P. 50より一部抜粋
表にスポーツ活動時における実践的な身体冷却方法とその特徴をまとめました。それぞれの冷却方法の目的や冷却効率を理解したうえで実施することが重要です。また、身体冷却は競技特性を考慮して実施すべきであり、スポーツ現場ではそれらの実用性や簡便性が重要になってきます。実際の暑熱環境下のスポーツ活動時では、イラストのように身体内部(アイススラリーの摂取)と外部からの冷却(クーリングベストの着用、手掌冷却)を組み合わせ、深部体温をコントロールし、高い運動パフォーマンスを発揮できるよう工夫するとよいでしょう。実践的な暑さ対策は、夏季におけるトレーニング効率を向上させるため、熱中症予防や運動パフォーマンスの向上につながります。暑熱下のスポーツ活動時に、積極的に身体冷却を取り入れ、熱中症を予防しましょう。
表 身体冷却方法とその特徴

身体冷却のタイミング
『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』(第6版)P. 49より一部抜粋
冷却のタイミングは、運動前(プレクーリング)、運動中、ハーフタイムなどの休憩時、運動後のリカバリーに大別できます。プレクーリングはあらかじめ運動前に体温を低下させておいて、運動中の体温の許容量(貯熱量)を大きくでき、運動時間を延ばそうとするものです。運動中や休憩時の冷却は、体温や筋温の過度な上昇を防ぎ、疲労感や暑さなどの主観的な感覚を和らげます。また運動後の冷却は、上昇した体温や筋温による疲労の軽減、筋損傷や炎症反応を抑えることができます。いつまでも体温上昇が続くと余分なエネルギーを消耗してしまうため、運動後に身体を冷却することで、リカバリー効率の向上につながります。
図 暑熱環境下の競技現場における身体冷却のタイミング、目的、種類
(長谷川、中村. スポーツ現場における暑さ対策、2021))
関連情報
- 公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)
- JSPOスポーツ医・科学研究プロジェクト「熱中症を防ごう」
- 熱中症からカラダを守ろう(大塚製薬株式会社)
- 熱中症予防情報サイト(環境省)
- SNDJ熱中症予防情報(スポーツ栄養Web)
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