気候変動により猛暑日が激増し当たり前の時代に? 文科省・気象庁「日本の気候変動2025」を公表
文部科学省と気象庁は先ごろ、「日本の気候変動2025」を公表した。かつては発生頻度が“100年に1回”だった極端な高温が、現在は“100年に38回”程度発生していて、このまま温暖化が進むと2075年以降には何と“100年に99回”になる、つまり100倍の高頻度になる可能性などが記されている。
5年ごとに公表される「日本の気候変動」
「日本の気候変動」は、日本の気候についての観測結果と将来予測をとりまとめた報告書。文部科学省と気象庁が、気候対策の効果的な推進に資することを目的として、5年ごとに作成し公表している。温室効果ガス、気温、降水、雪、熱帯低気圧(台風など)、海水温、海面水位、海氷、高潮・高波などについて、現状の「観測結果」と「将来予測」が詳細にまとめられている。ここでは、熱中症との関連が深い、「気温」の項目を中心に紹介する。
観測結果:平均気温の上昇とともに極端な高温の頻度も増加している
おもなポイント
- 世界と日本の年平均気温は、さまざまな時間スケールの変動を伴いながら上昇している。
- 日本の年平均気温の上昇率は世界平均よりも高い。
- 日本国内では、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が増加しており、冬日の日数は減少している。
- 都市域では、地球温暖化に都市化の影響が加わり、気温の上昇率が高くなっている。
日本の年平均気温の上昇率は世界平均よりも高い
国内の都市化の影響が比較的小さいとみられる15観測地点で観測された年平均気温は、変動を伴いながらも長期的に上昇しており、1898年から2024年までの上昇率は100年あたり1.40°C。とくに1990年代以降、高温年が頻出している。また、日本の平均気温の上昇率は世界平均よりも高い(図1)。
図1 日本の年平均気温偏差の経年変化
真夏日、猛暑日、熱帯夜が増加し、冬日は減少している
国内13観測地点の観測によると、1910年以降(熱帯夜については1929年以降)、真夏日(最高気温が30°C以上)、猛暑日(同35°C以上)、および、熱帯夜(最低気温が25°C以上)の日数は、いずれも増加している。とくに、猛暑日の日数は1990年代半ばを境に大きく増加している。
また、2018(平成30)年7月や2023(令和5)年7月の猛暑などの、近年の猛暑事例のいくつかは、地球温暖化の影響がなければ起こり得なかった事象であったことが統計学的解析によって示されている。
一方、同期間における冬日(最低気温が0°C未満)の日数は減少している。
大都市の気温は温暖化とヒートアイランド現象で全国平均を上回る割合で上昇
都市域では、都市化の影響が比較的小さいとみられる15地点平均と比べ、気温の上昇率が高い。また、都市化率が高いほど気温の上昇率も高い。1950年代後半から1970年頃にかけて、東京などの大都市と15地点平均の差が急速に広がった。
一方、都市化による気温の上昇傾向は、冬季、日最低気温で特に明瞭。都市化による気温上昇は夏より冬の方が大きい。都市化による気温上昇は、日最高気温に比べて日最低気温に現れやすい。
将来予測:平均気温の上昇、および極端な高温の発生頻度・強度の増加が予測される
いずれの温室効果ガスの排出シナリオにおいても、21世紀末の世界と日本の平均気温は上昇すると予測される。これに伴い、日本における多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数も増加すると予測される。
4°C上昇シナリオでは、21世紀末の日本の年平均気温は約4.5°C上昇し、猛暑日は全国平均で約18日増加すると予測される。また、工業化以前の気候では「100年に1回」だった極端な高温が、ほぼ毎年発生すると予測される。
図2 100年に1回の極端な高温の発生頻度と強度の変化
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