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過体重・肥満者の食事制限による介入に筋トレを加えると、除脂肪量の低下が抑制される メタ解析

体重管理目的でのカロリー制限の負の側面である除脂肪量の減少が、筋トレを並行して行うことで抑制されることが、システマティックレビューとメタ解析のエビデンスとして報告された。筋力の有意な上昇も認められたという。

過体重・肥満者の食事制限による介入に筋トレを加えると、除脂肪量の低下が抑制される メタ解析

摂取エネルギーを減らすことのみによる減量では、減った体重の3割は筋肉の減少

肥満の有病率は過去35年で3倍に増加しており、一般人口における過体重・肥満者の減量は世界的な公衆衛生上の課題となっている。減量治療の中心は食事介入であり、摂取エネルギー制限等の有効性は多くの報告により支持されている。しかしその一方で、摂取制限によって減少した体重の2~3割は、主として筋肉の減少、除脂肪体重の減少であるとされている。人口の高齢化とともに、サルコペニアや肥満にサルコペニアが共存した状態であるサルコペニア肥満に伴う公衆衛生上の健康リスクが相対的に上昇しており、減量戦略の新たな課題となっている。

それに対して、筋肉量や筋力の維持・向上に筋力トレーニングが有効であり、筋トレが心血管代謝リスクを押し下げることも示されてきている。よって、摂取制限に筋トレを並行して行うことで、摂取制限の負の側面を抑制し得ると考えられ、既にそのような研究が行われてきている。ただし今回取り上げる論文の著者によると、それらの研究報告を対象とするシステマティックレビューとメタ解析の報告はこれまでなかったとのことだ。

2023年1月までに報告されたRCTの論文を抽出して解析

システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に基づき、PubMed、Embase、CINAHL、Scopus、Web of Scienceなどの文献データベースを用いてシステマティックレビューを実施。それぞれのデータベースの開始から2023年1月までに収載され、過体重(BMI25以上)または肥満(同30以上)の18~65歳の成人を対象に、食事介入と食事介入+筋トレ介入の効果を比較し得るデザインで行われた無作為化比較試験(RCT)の結果を、査読システムのあるジャーナルに英語で報告している論文を検索。観察研究、横断研究、比較対象のない研究、レビュー論文などは除外した。

一次検索で6,934報がヒットし重複削除後の5,147報を2名の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。102報を全文精査の対象として最終的に25件のRCTの報告をメタ解析の対象として特定した。

メタ解析対象RCTの特徴

メタ解析の対象とされた25件の研究の参加者数は合計1,608人で、15件は女性のみ、1件は男子学生のみ、その他の研究は男性と女性が参加していた。介入期間は、18件は短期(2~5カ月)、その他は長期(6カ月~3年)だった。

筋トレ介入には、大半(23件)の研究でマシンまたはフリーウエイトを用いて実施されており、週3回が最も多く、1回あたり30~60分実施されていた。これらの遵守状況について、その情報が記されている報告ではおおむね85%を超えていた。食事介入については15件の研究が推定必要量より500~1,200kcal低い中程度のカロリー制限とし、その他の研究ではより厳格な制限(800~900kcal/日以下)が採用されていた。栄養素のバランスは、多くが炭水化物を50~60%、脂質を20~30%、タンパク質を15~25%としていた。

カロリー制限に筋トレを並行して行うことで、体組成と心血管代謝リスクが良好になる

メタ解析は、体重、体脂肪量、除脂肪量について、それらの全体解析および介入期間の長短(5カ月以下/6カ月以上)でのサブグループ解析が行われ、それらとは別に代謝関連マーカーの解析も行われている。

体重については介入期間にかかわらず、筋トレ並行の有無による減量効果に有意差なし

体重については25件のRCTがあり、食事介入のみでは-0.7~-20.4kgの減量、筋トレ並行では-2.5~-20.9kgの減量効果が認められ、平均差(MD)は-0.32kg(95%CI;-1.00~0.35kg)と非有意だった(p=0.35)。研究間の異質性は中程度だった(I2=60%)。

介入期間の長短で層別化したサブグループ解析も結果は同様であり、短期介入ではMD=-0.07kg(95%CI;-0.86~0.73kg、p=0.87、I2=55%)、長期介入ではMD=-0.87kg(-2.09~0.35kg、p=0.16、I2=63%)であった。

体脂肪量については介入期間にかかわらず、筋トレ並行群のほうが減少効果大

体脂肪量については22件のRCTがあり、筋トレを並行する介入のほうが、より効果が大きいという結果であった(標準化平均差〈SMD〉=-0.36〈95%CI;-0.49~-0.23、p<0.00001、I2=9%〉)。

介入期間の長短で層別化したサブグループ解析も結果は同様であり、短期介入ではSMD=-0.33(95%CI;-0.50~-0.17、p<0.0001、I2=0%)、長期介入ではSMD=-0.38(-0.62〜-0.14、p=0.002、I2=40%)であった。

除脂肪量については、短期介入では筋トレ並行群のほうが増大効果大

除脂肪量については18件のRCTがあり、筋トレを並行する介入のほうが、より効果が大きいという結果であった(SMD=0.40〈0.18~0.61、p=0.0003、I2=59%〉)。

介入期間の長短で層別化したサブグループ解析では、短期介入では筋トレ並行介入での増大効果のほうが有意に大きかったが(SMD=0.52〈0.25~0.78、p=0.0001、I2=43%〉)、長期介入では有意差がなかった(SMD=0.20〈-0.09~0.48、p=0.17、I2=57%〉)であった。

心血管代謝マーカーについては、筋トレ並行群でより好ましい影響

心血管代謝関連マーカーとして、8件の研究で心肺機能、血糖値、インスリン値、インスリン感受性、血清脂質、血圧などが評価されていた。メタ解析の結果、SMD=2.36(1.38~3.34、p=0.00001、I2=86%)であり、筋トレ並行介入でより良好な変化が生じたことが示された。

以上より論文の結論は、「肥満および過体重の人において、食事制限に加えて筋力トレーニングを行うことで、食事制限の有益な効果を高めることができる可能性がある。除脂肪量の減少の抑制は中程度の確実性、脂肪量の減少の促進は高い確実性、筋力の向上は低い確実性のエビデンスが得られた」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of resistance exercise on body composition, muscle strength and cardiometabolic health during dietary weight loss in people living with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2025 Sep 2;11(3):e002363〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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