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子どもの運動能力の発達には親への介入が重要? 縦断研究で観察された親の態度や行動の影響

5歳児の親の子どもの運動能力に関する態度や行動が、子どもが9歳半に成長した時点の身体能力の有意な予測因子であるとする、縦断研究の結果が発表された。著者らは、子どもの運動能力の発達を促すうえで、親をターゲットとした介入の重要性を示す結果であるとしている。

子どもの運動能力の発達には親への介入が重要? 縦断研究で観察された親の態度や行動の影響

生涯にわたる活発な身体活動には、幼少期に運動能力を高めておく必要がある

習慣的な身体活動に、心血管疾患や2型糖尿病、早期死亡のリスク低下など、健康上のメリットがあることは広く知られているが、それにもかかわらず多くの成人が身体活動不足の生活を送っており、それが非感染性疾患(non-communicable diseases;NCD)蔓延の一因となっていると考えられている。

身体活動量の成人の特徴として、多忙のため時間がないなどのほかに、基礎的な運動能力の低さも該当する可能性が指摘されている。基礎的な運動能力は幼少期から成長の過程で身に付くと考えられ、幼少期に一定程度以上の運動能力を獲得しておくことが、生涯にわたる活動的な生活につながる可能性がある。

横断研究からは、幼少期の運動能力の発達には親の関与の重要性が示唆されている

幼少期の運動能力を規定する因子として、複数の研究から保護者の関与が指摘されている。つまり、親が子どもに外遊びを促したり、一緒にからだを動かしたりすることは、子どもの基本的な運動能力の獲得に寄与し、反対に安全上の懸念等から外遊びを制限したりすることは、子どもの運動能力の発達に負の影響を及ぼす可能性がある。

ただし、これらの知見の大半は横断研究によるものであり、今回紹介する論文の著者は、「子どもの遊びや運動能力への親の影響を関連付けた縦断的な研究のエビデンスは存在しない」としている。

幼少期の運動能力の発達に対する親の役割を縦断研究で検討

以上を背景として、この研究は縦断的デザインにより、子どもの運動能力の発達に対する親の役割が検討された。研究には、小児肥満予防を目的としてメルボルンで実施された、乳児の摂食や栄養・身体活動に関する研究(Melbourne Infant Feeding, Activity and Nutrition Trial;InFANT)のデータを用いた。InFANTには542組の初産婦と幼児(生後4カ月)が参加し、このうち子どもが9歳半になるまでの追跡データのある199組(子どもは男児が47%)を、今回の研究の解析対象とした。

5歳時点で子どもの身体活動に関する親のかかわりを調査

子どもが5歳になった時点で親を対象とする調査で、(1)子どもの身体活動を支援するうえでの自己効力感、(2)子どもの身体活動の支援行動、(3)子どもの身体活動に対する態度、という3項目を調査した。

自己効力感は、「子どもがテレビを見たいという時に活動的な遊びをさせる」、「子どもにさまざまな活動的な遊びの選択肢を示す」、「子どもと遊ぶ」という3項目について4段階のリッカートスケールで回答を得て評価。支援行動については、「子どもを自転車等に乗せて外出する」、「子どもに外遊びを勧める」などの6項目について4段階のリッカートスケールで回答を得て評価。態度については、「子どもに与える遊具は発達や活動に影響を与える」、「親がスポーツなどで活動的に過ごしていると子どももそれを楽しむようになる」などの4項目について4段階のリッカートスケールで回答を得て評価した。

9歳半時点で基本的な運動能力を評価し、交絡因子を調整して解析

5歳時点の子どもの運動能力の評価には、粗大運動発達検査-第2版(Test of Gross Motor Development-2nd Edition;TGMD-2)、運動スキル自己評価(Perceived Movement Skill Competence;PMSC)を利用し、子どもの代わりに親が代理回答した。9歳時点で、走る、跳ぶ、ボールを蹴る・打つなどの6種類の基本的な運動能力(論文ではmotor competence for active play〈活発な遊びのための運動能力〉と記されている)について、同様に親が代理回答した。

子どもが男児であること、5歳時点のTGMD-2スコアが高いこと、親の社会経済的地位が高いことは、いずれも9歳半時点の基本的な運動能力(活発な遊びのための運動能力)の高さと有意な関連が認められた。よって、これ以降の解析に際しては、これらも交絡因子として考慮した。

子どもの運動能力向上に、親をターゲットとした介入が重要

9歳半時点の基本的な運動能力(活発な遊びのための運動能力)を目的変数とする単回帰分析では、親の自己効力感、支援行動、および態度という三つの因子は、すべて有意な関連が認められた。次に多変量解析を行った結果、自己効力感は有意性が消失したが、支援行動(β=0.201、p=0.008)、および態度(β=0.165、p=0.028)は引き続き有意性が保たれていた。

著者らは「この研究結果は、子どもの運動能力の発達を促進する際に親をターゲットにすることの重要性を強調しており、とくに非構造化活動環境における活発なライフスタイルの促進に重点が置かれる」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Parental influence on children’s motor competence for active play: A longitudinal analysis」。〔J Sports Sci. 2025 Sep 1:1-8〕
原文はこちら(Informa UK)

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