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10代の男子ラグビー選手の14%が摂食障害リスク状態 プロップやBMI高値の選手はより高リスク

未成年の男子ラグビー選手を対象として、摂食障害のリスク状況を横断的に調査した研究が報告された。英国ラグビー協会傘下の団体に所属している100人超の選手において、14%がリスク状態に該当し、リスクの高さはBMIの高さと関連があること、またポジションがプロップの選手はリスクが高いことなどが明らかにされている。

10代の男子ラグビー選手の14%が摂食障害リスク状態 プロップやBMI高値の選手はより高リスク

男子、コンタクトスポーツ、未成年のアスリートの摂食障害の有病率は?

アスリートは摂食障害のリスクが高いことを示唆する報告が多い。ただし、それらの報告の大半は女性アスリートを対象にしており、とくに審美系や持久系スポーツでよく調査されている。それに対して男性アスリート対象の摂食障害の研究は少なく、ことにラグビーのような強靭な体格の選手が多い競技での知見はより少ない。さらに倫理的配慮から多くの研究は18歳以上のアスリートを対象に行われてきており、より若年の男子ラグビー選手での摂食障害の実態はほとんど研究されていない。

今回取り上げる論文の著者らは、これを背景として、英国内の16~18歳の男子ラグビー選手を対象とするwebによる横断調査を実施した。英国ラグビー協会に連絡をとり、傘下団体所属選手にアンケートの回答協力を依頼し、任意に回答してもらった。摂食障害のリスクの評価には、摂食障害調査票(Eating Disorder Examination Questionnaire;EDE-Q)を用いた。なお、EDE-Qは主として女性のリスク評価に用いられているが、男性での臨床的な摂食障害のリスクを判定するカットオフスコアとして、先行研究に基づき1.68を採用した。

栄養士が配置されているにもかかわらず、4人中1人はそれを知らない

107人から回答があり、内容の不備のある回答を除外し103人を解析対象とした。過半数(57%)が16歳で、30%が17歳であり、18歳は13%だった。BMIは平均26.9、範囲20.8~39.0だった。

「体重を変えたいか」との質問に対し、68%が「少し太りたい」と回答。14%は「かなり太りたい」、11%は「現状のまま」、7%は「少し痩せたい」、1%は「かなり痩せたい」と回答した。

選手が所属しているクラブには栄養士が配置されていた。その存在を認識していたのは76%であり、残りの24%は存在を知らない、または自分からは栄養士にアクセスできないものと考えていた。

選手の14%がEDE-Qスコア1.68以上

EDE-Qのスコアは0.83±0.76だった。

11%は過去4週間に1回以上、自制心を失って食べ過ぎた経験があり、15%は自制心を失って食べ過ぎてしまうことを恐れていた。また37%が食事中に罪悪感を抱き、9%が過去4週間に1回以上、隠れ食いにあたる行動をしていた。39%は、体重や体型をコントロールする手段として、「駆り立てられて/強迫的に」運動をしたことがあると回答した。体重管理のために嘔吐したり、下剤を使用したりしたという報告はなかった。

全体として、14%がEDE-Qスコア1.68以上で、臨床的カットオフ値を上回っていた。

BMIはEDE-Qスコアと関連があり、ポジション別ではプロップの選手が最も高い

EDE-QスコアはBMIと正の関連を示し(β=0.23、p=0.02)、線形回帰分析から、BMIはEDE-Qスコアの変動の5.3%を説明すると計算された(R2=0.053)。

また、ポジションでEDE-Qスコアを比較すると、バックローが最も低く、プロップが最も高くて、この両者の間には有意差が認められた(p<0.001)。これら以外のポジション間では有意差はなかった。

プロップの選手がEDE-Qスコアが高いという結果について著者らは、BMIの高さがEDE-Qスコアの高さと関連していることで説明できる可能性があるとしている。つまり、プロップはフッカーとともにフォワードに位置し、ラグビーにおいて他のポジションと比較してBMIが高い選手が多い。そして、このポジションの重要な役割の一つはスクラムであるため、体重の増加は競技上の優位性をもたらすことが関係し、摂食障害の行動や態度の有病率の高さを説明できるのではないかという。

若年男子ラグビー選手も摂食障害に関する情報とサポートを必要としている

これらの結果を総括し、論文の結論は以下のように述べられている。

「全体として本研究に回答したエリートレベルの若年期男子ラグビー選手において、14%がEDE-Qスコアの臨床カットオフ値を超えていた。EDE-Qはスクリーニングツールであるため摂食障害の診断とは異なるものの、本結果は一般人口と比較してこの集団の摂食障害関連の行動や態度の有病率が高い可能性があることを示唆している。またBMIの高さと特定のポジションが、それらのリスクの高さと関連しており、ポジション固有の考慮が必要な可能性が示唆される。加えて、若年の男子ラグビー選手が、摂食障害に関する情報を入手したりサポートを受けたりする機会が不足していることから、この問題に関する教育と意識向上も必要とされる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Disordered eating within elite male adolescent rugby: a cross-sectional study of the eating habits and attitudes in male academy rugby union players」。〔Phys Sportsmed. 2025 Aug 21:1-8〕
原文はこちら(Informa UK)

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