若年の女子アスリートに対する栄養教育介入で栄養知識は有意に向上する スペインでの研究
平均年齢17.6歳の女子アスリートに対して管理栄養士による対面でのグループセッションとして行った栄養教育の結果、栄養に関する知識が有意に向上し、介入から3カ月後も維持されていたとする研究結果がスペインから報告された。著者らは、「資格を有する専門家による教育介入の重要性が裏付けられた」としている。
未成年アスリートが栄養の専門家へアクセス可能な機会は限られている
女性アスリートは生理学的特性が男性と異なることはもちろんのこと、若年者では成長や発達の過程にも性差がある。また、女性アスリートは押しなべて摂取エネルギー量、とくに炭水化物の摂取量が少ないことなど、しばしば指摘される。
これらの栄養上の課題が解決されずに存在している理由の一つとして、栄養の専門家の助言を受けることのできる機会が不足していることが考えられる。その結果、家族やコーチ、アスリート仲間、インターネットなどの、非専門家からの情報に頼らざるを得ないことが少なくない。
このような状況を背景として、今回紹介する論文の著者らは、栄養の専門家による教育介入によって、若年の女性アスリートのスポーツ栄養の知識を高められ、食事摂取量にも好ましい影響が生じるのではないかと仮定し、以下のパイロット研究を行った。なお、栄養素摂取の適切さは、地中海食の遵守の程度で判断した。地中海食に関しては一般住民の健康に対するエビデンスが豊富だが、著者らは、アスリートにとっても回復の促進、炎症の抑制、トレーニング適応のサポートなどの点での有用性が示されているとしている。
スペインのハイパフォーマンスセンターなどのアスリートを対象に教育介入
この研究は、スペインのハイパフォーマンスセンター、およびカタルーニャ州(州都はバルセロナ)にあるスポーツクラブから参加者を募集した。適格条件は、14~24歳の女子アスリートで、所属クラブでのトレーニング歴が1年以上あり、1日1.5時間、週3日以上のトレーニングを行っていることとし、除外条件として摂食障害の既往、食事療法を必要とする疾患の罹患、妊娠とされていた。
当初52人が登録されたが、適格条件の不適合およびデータ欠落等により、解析対象は45人となった。年齢は17.6±2.1(範囲14~23)歳で、19人(42.2%)がハイパフォーマンスセンター、26人(57.8%)がスポーツクラブのアスリートだった。
栄養教育の方法と介入効果などの評価法
栄養教育は、まず60分間の面接を行い、栄養に関する関心の程度や食習慣について聞き取り調査を実施。その後、1回15分、週2回のグループ単位での対面セッションによる栄養教育を3週間にわたり計6回実施した。その内容は、1. 健康と地中海食についての基礎、2. エネルギーと炭水化物の必要量、3. タンパク質と脂質の必要量、4. 微量栄養素、5. 水分補給、6. サプリメントと周期性(periodicity)という6項目。
栄養知識の評価には、精度検証済みのアスリート対象の質問票(Knowledge Questionnaire for Young and Adult Athletes;NUKYA)を用いた。NUKYAは主要栄養素、微量栄養素、水分補給、ピリオダイゼーション(期分け)について、100点満点で評価する。本研究では、介入前、介入終了直後、および介入終了の3カ月後のフォローアップ調査という3時点で評価した。
地中海食の遵守状況には、16項目からなるKidmed indexを用いた。実際の食事・栄養素摂取状況は、介入前とフォローアップ中に計2回、それぞれ3日間(連続でない平日2日と試合日の1日)、写真とモバイルアプリを用いた食事記録をとることで評価した。
これらのほかに、摂食態度テスト(Eating Attitudes Test-26;EAT-26)、体型質問票(Body Shape Questionnaire;BSQ)を使用した。
スポーツ栄養の知識が有意に向上するも、摂取量は変化に乏しく、体組成は変化なし
EAT-26の平均は5.8±7.2であり、2人(4.4%)は20点以上で摂食障害のリスクが検出された。BSQは30.0±12.2で、9人(20.0%)は自身のボディーイメージや体重に強い不満をもっていた。
スポーツ栄養の知識(NUKYA)は、介入前が21.1±16.1、介入直後が43.1±16.3、3カ月後が41.4±16.5であり、介入後の2時点はいずれも介入前よりも有意に高値であり、効果量も1.2と大きかった。また、主要栄養素、微量栄養素、水分補給、ピリオダイゼーションという4領域のスコアの推移を個別に検討しても、いずれも有意な上昇が認められた。
地中海食の遵守状況(Kidmed index)は、介入前が5.8±2.0、フォローアップ時が6.1±1.7とやや上昇していたが、有意でなかった。
栄養素摂取量に関しては、エネルギー量、収容栄養素摂取量には有意な変化がなく、食物繊維と多価不飽和脂肪酸の摂取量は有意に減少していた。微量栄養素に関してはビタミンEの摂取量が有意に減少していた。
このほかに、糖を多く含む食品の摂取量が、21.3±26.5g/日から13.0±9.5g/日へと有意に減少していた。この点に関して著者らは、質の高い炭水化物を摂取するような変化が生じたのではないかと考察している。体組成には有意な変化がみられなかった。
これらの結果に基づき論文の結論は、「栄養教育介入により、アスリートの栄養知識が有意に向上し、また糖質の多い食品の摂取量が有意に減少するという変化が認められた。しかし、食事摂取量と体組成への影響を評価するにはさらなる研究が必要と言える」とまとめられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of a Nutritional Education Intervention on Sports Nutrition Knowledge, Dietary Intake, and Body Composition in Female Athletes: A Pilot Study」。〔Nutrients. 2025 Aug 5;17(15):2560〕
原文はこちら(MDPI)