エクササイズスナックの効果をメタ解析で検討 VO2max、最大パワーが上昇し、コレステロールが低下
ごく短時間の高強度運動を積み重ねることで、効率よく運動の効果を高める、いわゆる「エクササイズスナック」の心血管代謝リスクに対する有効性のシステマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。VO2maxや最大パワーが上昇し、コレステロールの有意な低下が認められるという。
エクササイズスナックは、運動継続のハードル「時間がない」を解決するか?
現在、世界の成人の4人に1人が推奨される身体活動量を満たしていないと報告されており、それが種々の慢性疾患の蔓延と関連していることが指摘されている。保健指導で運動を推奨した際に、介入対象者から「運動をする時間がない」と言われることは少なくなく、短時間で運動効果を高める“タイパ”の良い運動療法が必要とされている。
そのような運動の進め方の一つとして近年、ごく短時間の高強度運動を繰り返す「エクササイズスナック(exercise snacks;ExSn)」といわれる方法が普及してきている。ExSnでは一般的に1~2分、長い場合は10分程度の速歩に代表される有酸素運動、筋力トレーニング、バランス体操などを意図的に行う。これにより時間的な制約を受けることが少なく、運動を継続しやすくなる。ExSnと同様に、日常生活の中で例えば階段を上るなどの身体活動を随時行うという方法も近年提案されることが多いが、両者は運動を計画的に行うか否かという点で区別される。
エクササイズスナックとは
“エクササイズスナック”とは?実はおやつでも飲み屋の事でもないのです(宮の森記念病院)ExSnについてはすでにスコーピングレビューが実施され、有効性が総括されている。ただし、エビデンスレベルの高い研究手法とされるシステマティックレビューはまだ実施されていない。これを背景として今回取り上げる論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析により、ExSnの有効性を検討した。
RCT12件、非RCT2件のデータを統合して解析
PRISMAガイドラインに準拠し、PubMed、Web of Science、Embase、CINAHL、Scopusなど6種類の文献データベースを用いて、それぞれのスタートから2025年5月22日までに収載された論文を対象とする検索を行った。包括条件は、18歳以上の健康な成人を対象として、エクササイズスナック(ExSn)による介入効果を、通常の生活習慣を続ける条件を対照として検証した、無作為化比較試験(RCT)または非無作為化比較試験であり、英語で執筆されている論文。ExSnは、身体活動量の増加と健康の増進を目的とするものであり、一般的には1~2分だが最長10分までと定義した。
一次検索で5,539報がヒットし、重複削除後の3,802報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。72報を全文精査の対象として、最終的に14報(RCTが12件、非RCTが2件)を適格と判断し、このうち13件の研究データをメタ解析の対象とした。
13件の研究の合計参加者数は483人で、介入期間は4~12週間、1回のExSnは2分以内が8件でその他は2分を超えていた。運動の種類としては、スプリントサイクルが5件、階段昇降が6件、筋力トレーニングが3件だった。
エクササイズスナックは、とくに運動習慣のない人の心肺機能などに有益
心肺機能への影響
エクササイズスナック(ExSn)によるVO2maxへの影響は、10件(合計参加者数378人)で検討されていた。メタ解析の結果、ExSnによるVO2maxへの有意な影響は認められなかった(標準化平均差〈SMD〉=0.91〈95%CI;-0.95~2.78〉、p=0.336、I2=87.3%)。ただし、バイアスリスクが高いと判定された1件の研究を除外した356人を対象としてメタ解析を行った結果、ExSnはVO2maxを有意に向上することが示された(SMD=1.43〈0.61〜2.25〉、p<0.001、I2=76.6%)。
ExSnによるピークパワーへの影響のメタ解析には、エビデンスの確実性が中等度以上と判定された5件(119人)のデータが用いられ、ExSnはピークパワーを有意に向上することが示された(SMD=0.68〈0.00~1.36〉、p=0.050、I2=65.7%)。サブグループ解析からは、日常の身体活動が少なく、かつ1回のExSnの持続時間が2分を超える場合においてのみ、ピークパワーを有意に向上させていた。
脂質プロファイルへの影響
ExSnによる総コレステロールへの影響は4件(89人)で検討されており、メタ解析の結果、有意な低下が示された(SMD=-0.65〈-1.18~-0.11〉、p=0.018、I2=28.3%)。また、3件の研究ではLDL-Cへの影響が検討されており、有意な低下が示された(SMD=-0.65〈-1.22~-0.09〉、p=0.023、I2=6.4%)。
HDL-Cやトリグリセライドに関しては、有意な影響は認められなかった。
このほかに、体重や体脂肪率についてもメタ解析が行われたが、ExSnの有意な影響は観察されなかった。
著者らは、メタ解析の対象となった研究間の異質性が高い傾向があること、バイアスリスクの高い研究が含まれていたことなどを限界点として挙げたうえで、「運動不足の成人において、心血管代謝の健康増進を目的としExSnを日常生活に取り入れることの有効性を裏付ける、有望なエビデンスが得られた」と結論づけている。また、今後の研究の方向性として、「ExSnの長期的な効果の検証、および、運動の最適な時間と頻度の探索が求められる」と付け加えている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of Exercise Snacks on Cardiometabolic Health and Body Composition in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Scand J Med Sci Sports. 2025 Aug;35(8):e70114〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)