アスリートの食習慣は8種類に分類でき、栄養状態・体組成と関連 実用的な栄養指導への応用に可能性
トップレベルのアスリートの食習慣は、主成分分析により8パターンに分類できるとこと、その食習慣のパターンと栄養状態や体組成が関連していることが報告された。ポーランドのさまざまな競技アスリートを対象に行われた研究。
アスリートの食習慣のパターンは概念的な定義に基づき分類された研究が多い
これまでの複数の研究から、アスリートはタンパク質を十分に摂っているものの、全粒穀物や果物、乳製品の摂取量が少ない傾向が報告されてきている。日常的な食習慣は体組成に影響を及ぼす可能性があり、それを介して間接的に、または栄養素摂取量の多寡が直接的に、アスリートのパフォーマンスを左右する可能性がある。ただし、アスリートの食習慣と体組成や栄養状態との関連に関する知見は十分でない。
加えて本論文の著者らは、このトピックに関する重要なこととして、これまでの研究で用いられている「食事パターン/プロファイル」といった言葉は、ごく一般的な「食事摂取習慣」、「食事の嗜好」といった意味合いで使われており、統計学的手法を用いて特定の食事パターンを定義したうえでそれらの語句を用いていることは希だとしている。これを背景として著者らは、ポーランドのトップアスリートを対象に食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)を用いて食習慣を把握し主成分分析を行いいくつかのパターンに特徴づけたうえで、体組成や栄養状態との関連性の有無を検討した。
8パターンの食習慣が特定され、体組成や栄養状態と有意な関連
この研究の参加者は、2017~19年に同国の国立スポーツ連盟、地域スポーツ協会、プロスポーツクラブなどを通じて募集された。エントリーした250人から、適格基準(競技スポーツを3年以上行っている/週に5回、1回1時間超のトレーニングを行っている、国内または国際大会に参加している)と除外基準(16歳未満、39歳以上/喫煙者/習慣的飲酒者)に基づき226人を解析対象とした。
解析対象者は年齢22.8±5.48歳、女性38.5%、BMI22.1±2.5、体脂肪率17.3±6.3%であり、行っている競技は個人競技が74.8%を占め、陸上(31.0%)やバレーボール(12.8%)が多かった。
トップアスリートの食習慣は8パターンに分類できる
主成分分析の結果、アスリートの食習慣は、以下の8パターンに分類された。
- 高脂肪(High-fat)
- 精製度の高いパン、ジャガイモ、コールドカット、ウインナー、ソーセージ、チーズ、バターなどの摂取頻度が高いことが特徴のパターン
- 菓子・飲料(Sweets and beverages)
- 加糖飲料、菓子、アルコール飲料、エナジードリンク、スープなどの摂取頻度が高いことが特徴のパターン
- 合理的(Potentially rational)
- 卵、豆類、白米、全粒粉パスタ、マリネ、漬物野菜、フレークなどの摂取頻度が高いことが特徴のパターン
- 野菜と果物(Vegetables and fruits)
- 野菜と果物の摂取量が多いことが特徴のパターン
- 肉と小麦粉(Meat and flour)
- 白身肉と揚げ物の摂取頻度が高いことが特徴のパターン
- 低脂肪(Low-fat)
- 赤身肉 、魚の摂取頻度が高く、ラード、ファストフードの摂取頻度が低いことが特徴のパターン
- 乳製品(Dairy)
- 発酵乳飲料、牛乳などの摂取頻度が高いことが特徴のパターン
- ジュース(Juices)
- 野菜ジュース、果物ジュースなどの摂取頻度が高いことが特徴のパターン
これらのパターンを性別で比較すると、高脂肪(p=0.001)、肉と小麦粉(p=0.014)、低脂肪(p<0.001)は男性で多くみられ、野菜と果物(p=0.001)、乳製品(p=0.033)は女性に多くみられた。
食習慣のパターンと体組成・栄養状態の関連
前記の8種類の食習慣パターンと、体組成および栄養状態との関連を、スピアマンのロー検定により検討した結果、以下のような関連が認められた(有意な関連のある因子とそのρ値)。
- 高脂肪
- BMI(-0.17)、痩身指数(slenderness index〈身長を体重の立方根で除した値〉、0.24)、ヘマトクリット(0.16)、赤血球数(0.16)、血清鉄(0.22)、血清尿素(0.19)、血清尿酸(-0.17)、AST(-0.23)、尿比重(0.17)
- 菓子・飲料
- 血小板数(0.18)、トリグリセライド(0.17)、総コレステロール(0.18)、血清アルブミン(0.17)、血清尿酸(0.19)、AST(-0.17)
- 合理的
- BMI(0.17)、痩身指数(-0.16)、好塩基球(0.18)、血清クロール(-0.25)、尿ケトン(-0.17)
- 野菜と果物
- BMI(-0.14)、上腕筋周囲長(-0.25)、ヘモグロビン(-0.26)、ヘマトクリット(-0.27)、赤血球数(-0.27)、血清カルシウム(-0.19)、血清尿酸(-0.18)、尿比重(-0.23)
- 肉と小麦粉
- 体脂肪率(-0.16)、ヘモグロビン(0.16)、ヘマトクリット(0.18)、赤血球数(0.18)、総コレステロール(0.17)、HDL-C(0.21)、血清フェリチン(0.18)、血清尿酸(0.25)、尿比重(0.22)
- 低脂肪
- BMI(0.15)、ウエストヒップ比(0.22)、体脂肪率(-0.16)、ヘマトクリット(0.18)、赤血球数(0.18)、血清無機リン(0.21)、血清フェリチン(0.23)、血清ビタミンB12(0.25)、血清総蛋白(-0.20)、血清尿素(0.32)、ALT(0.19)、γ-GTP(0.24)、尿比重(0.18)
- 乳製品
- 血清クレアチニン(-0.20)
- ジュース
- BMI(-0.18)、血清クロール(-0.28)、血清マグネシウム(0.20)、血清鉄(0.22)、血清総蛋白(-0.21)、血清尿素(0.17)、血清クレアチニン(-0.20)、血清尿酸(-0.29)
個々のアスリートにあわせた栄養指導・介入に役立つ知見
論文の結論は以下のように総括されている。
本研究では、ポーランドのトップアスリートにおいて8種類の異なる食習慣パターンが特定され、そのうち2パターン(高脂肪、菓子と飲料)は、加工肉、脂肪、糖質製品の過剰摂取により非健康的と考えられる。男女差は顕著で、男性アスリートは高脂肪、肉、小麦粉中心の食事をより頻繁に摂取するのに対し、女性アスリートは野菜や乳製品を多く摂取するパターンが多かった。血清アルブミン、クレアチニン、尿比重の上昇といった指標は、特定の食習慣パターンと関連していた。また水分を多く含む食品の摂取が少ないパターンは、水分不足と関連している可能性が示唆された。これらの知見は、アスリート一人ひとりに合わせた栄養ガイドラインの開発に役立ち、コーチ、スポーツ栄養士、そしてトップスポーツに携わる医療専門家にとって実用的に応用できる可能性がある。
文献情報
原題のタイトルは、「Dietary Patterns and Nutritional Status of Polish Elite Athletes」。〔Nutrients. 2025 Aug 19;17(16):2685〕
原文はこちら(MDPI)