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筋トレに加えてビタミンC・Eを摂取することで、サルコペニアの高齢女性の筋肉量と筋力が大きく改善

サルコペニアに対する栄養介について入新たなエビデンスが報告された。高齢女性に対して、筋トレのみによる介入に比し、ビタミンCとEのサプリメント摂取を上乗せすることで、筋肉量や筋肉の改善幅が大きくなり、これに抗酸化・抗炎症作用が関与していることが示唆されるという、中国で行われたRCTの結果。

サルコペニアの高齢女性には、筋トレに加えてビタミンC・Eを摂取で筋肉量と筋力が大きく改善

サルコペニアに対して抗酸化・抗炎症を目的としたサプリでの栄養介入は有効か

サルコペニアは筋量や筋力の低下を特徴とし、QOLの低下、および、フレイル、転倒、骨折のリスク上昇、さらには死亡リスクの上昇とも関連することが知られている。サルコペニアの治療の中心は筋力トレーニングとされている。筋トレは強い負荷をかけるほど、高い効果を期待できると考えられるが、一方で高強度の筋トレにより酸化ストレスや炎症が亢進し、そのことが体タンパク質の異化につながる可能性も指摘されている。

一方、食事性のビタミンCやEは、フリーラジカルの除去や脂質酸化を阻害することが示唆されている。ただし、食事としてではなくサプリメントとしてそれらを摂取した場合の効果については依然として議論があり、またサルコペニアの改善に資するものか否かも明らかになっていない。今回取り上げる論文の研究では、この点に焦点をあて、二重盲検プラセボ対照試験による検討を行っている。

高齢サルコペニア女性対象に、筋トレ±ビタミンC・Eで12週間介入

研究参加者はポスターやチラシ、ソーシャルメディアを通じて地域の一般住民から募集された60~75歳の、サルコペニアに該当する女性。サルコペニアはアジア・サルコペニアワーキンググループの基準に基づき判定した。体系的な筋トレを行っている女性、管理されていない高血圧、重度の心血管疾患、過去3カ月以内の外科手術、急性の筋骨格系疾患、運動機能に影響のある神経疾患、運動禁忌、介入効果に影響を及ぼし得る薬剤処方やサプリメント利用などの該当者は除外した。

介入方法と評価項目

上記の基準を満たす60人を無作為に2群(各群30人)に分け、両群に筋トレ介入を行い、かつ1群にはビタミンCとEのサプリによる介入を上乗せし、他の1群にはそれらのプラセボによる介入を行った。介入期間は12週間だった。

筋トレは、介入効果の判定に関与していない理学療法士の監督下で、20人未満の小グループごとに週3回、1回50分の弾性バンドを利用した抵抗運動として行われた。サプリ介入はビタミンCを1日あたり1,000mg(500mgを2回)とビタミンEを335mgとし、プラセボは外観から区別できない状態の乳糖とした。

評価項目は、DXA法で測定した筋肉量(上肢・体幹・下肢の除脂肪体重、骨格筋量指数〈skeletal muscle mass index;SMI〉)、筋力(握力、膝伸展筋力)、身体能力(椅子立ち上がりテスト、6m歩行速度など)、および、酸化ストレスや炎症レベルのマーカーとして、還元型グルタチオン(GSH)、酸化型グルタチオン(GSSG)、その両者の比(GSH/GSSG比)、マロンジアルデヒド、IL-6、TNF-αなどの変化とした。

ベースラインにおいて、年齢、BMI、身体活動量(IPAQスコア)、および、3日間(平日2日と週末1日)の食事記録に基づく摂取エネルギー量やタンパク質摂取量に有意差はなく、またビタミンC・Eの摂取量も有意差がなかった。

ビタミンC・Eで筋量・筋量が大きく上昇し、抗酸化・抗炎症作用の関与が示唆される

サプリ群で筋肉量や筋力がより大きく上昇

12週間後、サプリ群とプラセボ群の両群において、筋肉量、筋力、および身体能力が有意に改善していた(p<0.05)。そして、改善の幅に以下のような有意差が認められた。

上肢の除脂肪体重の変化は、サプリ群、プラセボ群の順に、0.96 vs 0.59kg(p=003,効果量〈d〉=0.74)であり、同様に骨格筋量指数(SMI)の変化は0.71 vs 0.42(p=0.004,d=0.71)、握力の変化は3.66 vs 1.16kg(p=0.047,d=0.51)、膝伸展筋力の変化は2.28 vs. 1.02kg(p<0.001,d=0.89)だった。

身体能力の経時的変化には、群間に有意差は認められなかった。

サプリ群では血液パラメータの多くが改善

血液パラメータに関しては、サプリ群で抗酸化・抗炎症効果を示唆する変化が認められた。

例えば還元型グルタチオン(GSH)はサプリ群でのみ上昇し、2群間に変動幅に有意差があった(p<0.001,d=1.52)。酸化型グルタチオン(GSSG)については反対に、プラセボ群でのみ上昇し、2群間に変動幅に有意差があった(p<0.001,d=0.96)。結果としてGSH/GSSG比の変動にも有意差が認められた(p<0.001,d=1.52)。

マロンジアルデヒドの減少幅もサプリ群のほうが有意に大きかった(p<0.001,d=1.65)。IL-6やTNF-α値の低下にも有意差が認められた。

これらの結果に基づき著者らは、「12週間の筋トレと組み合わせたビタミンCおよびEのサプリ摂取は、筋トレ+プラセボと比較して、筋肉量と筋力に対する優れた変化をもたらした。そのメカニズムの基盤は、酸化ストレスと炎症の抑制に関連している可能性がある」と結論付けている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of vitamins C and E supplementation combined with 12-week resistance training in older women with sarcopenia: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial」。〔Medicine (Baltimore). 2025 Aug 22;104(34):e43976.〕
原文はこちら(Wolters Kluwer Health)

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