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「早食い」はメンタルヘルス悪化と関連があり、運動不足や睡眠の質低下にも関連 12~24歳対象横断研究

12~24歳という思春期および若年成人において、早食いという食習慣がメンタルヘルスの悪化と関連のあることが報告された。また、身体活動の習慣がないことも早食いに関連しているという。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科発達育成歯科学分野の藤田優子氏、タケシマデンタルオフィス(沖縄県)の竹島朋宏氏の研究によるもので、「Nutrients」に論文が掲載された。

「早食い」はメンタルヘルス悪化と関連があり、運動不足や睡眠の質低下にも関連 12~24歳対象横断研究

早食いは身体疾患だけでなく、メンタルヘルスにも関連がある?

近年、早食いが肥満や2型糖尿病などの身体疾患のリスクの高さと関連していることが注目され、保健指導においても摂食速度に関するアドバイスの重要性が増している。また、過食あるいは感情的摂食などの食行動の乱れが、メンタルヘルス状態の悪化と関連していることも知られている。ただ、早食いも食行動の乱れの一つとして捉えることもできるが、早食いとメンタルヘルスとの関連については、これまでのところ十分に検討されていない。

摂食速度は若年期までに身に付き、それ以降は変化が乏しいと報告されている。仮に、早食いがメンタルヘルスと関連しているとしたら、その影響は生涯にわたる可能性もある。これらを背景として藤田氏らは、国内の思春期および若年成人を対象とする横断研究を実施し、その関連の有無を検討した。

思春期・若年成人を対象に、客観的に評価した早食いとGHQ-12スコアとの関連を検討

この研究の参加者は、九州歯科大学附属病院の2023年5月~2024年3月の受診者のうち、咀嚼の妨げとなる口腔疾患等がなく、全身状態が良好な12~24歳の初診患者から募集した。事前の統計学的検討に基づき、このトピックの分析に必要なサンプルサイズとして計算された106人から、研究参加の同意を得た。すべて学校や大学の生徒・学生だった。

グミの咀嚼を利用して早食いか否かを客観的に判定

従来の研究の大半は、「人と比較して食べる速度が速いですか?」といった質問に対する回答に基づき、早食いか否かを判定している。しかし、このような自己申告は信頼性が十分でない可能性がある。そこで本研究では、以下の手法により客観的に摂食速度を評価した。

その手法とは、グルコースを含むグミゼリーを咀嚼してもらい、嚥下したいと思った時点でグミと唾液を排出させ、唾液中のグルコース濃度を測定するというもの。その濃度が低いほど、よく噛まずに飲み込もうとしている(嚥下の閾値が低い)ことを意味する。本研究では、グルコース濃度が参加者全体の下位20%以下に該当する23人を「早食い」と判定した。なお、この測定値は標準化された指標ではなく探索的な評価法であることを、著者らは留意点として挙げている。

この唾液中のグルコース濃度以外の口腔機能関連指標として、DMFT指数(健康でない歯の本数〈虫歯や何らかの処置がされている歯、抜けた歯の本数〉)、咬合力、咀嚼回数、咀嚼時間などを評価した。

メンタルヘルスはGHQ-12で判定

メンタルヘルス状態は、12項目からなる一般健康質問票(12-item General Health Questionnaire;GHQ-12)で評価し、0~3点を良好、4~12点は不良と判定。本研究参加者のうち17人(16%)がメンタルヘルス不良に該当した。

これらのほかに、BMI、朝食欠食習慣、間食摂取習慣、身体活動習慣、睡眠の質などを自己申告に基づき把握した。

メンタルヘルス不良と運動不足が早食いと独立して関連

早食いと判定された群(23人)と非早食い群(83人)で比較すると、平均年齢、性別の分布、BMIカテゴリーの分布、朝食欠食習慣のある割合については有意差がなかった。しかし、GHQ-12に基づくメンタルヘルス不良の該当者の割合が、前者は39.1%、後者は9.6%であり、早食い群のほうが有意に高かった(p=0.002)。そのほかにも、1日1回以上間食する割合(p=0.002)や、1日30分以上汗をかく運動の頻度(p=0.013)、睡眠の質(p=0.021)についても有意差が認められ、いずれも早食い群においてそれらの習慣が良くないという結果だった。

口腔機能関連指標では、DMFT指数と咀嚼速度(1回の咀嚼にかける時間)は有意差がなかったが、咀嚼回数、咀嚼時間、咀嚼能力はいずれも早食い群が有意に低値だった。なお、唾液中のグルコース濃度は、早食い群が81.78±18.10mg/dL、非早食い群が154.60±31.65mg/dLで、やはり前者が有意に低値だった。

次に、早食いであることを従属変数、GHQ-12スコアと身体活動習慣を独立変数とする多変量二項ロジスティック回帰分析を実施。その結果、メンタルヘルス不良(調整オッズ比〈aOR〉8.470〈95%CI;2.437~32.934〉)、および、身体活動習慣がないこと(aOR5.604〈1.562~22.675〉)は、いずれも早食いと独立した関連のあることが明らかになった。

早食いもメンタルヘルスにとって重要な関連因子である可能性

著者らは本研究の限界点として、横断研究であり因果関係の考察が制限されること、研究参加者が生徒・学生のみであり、就労者を含む一般人口に外挿できるとは限らないことなどを挙げている。

そのうえで、「メンタルヘルス状態が悪化している若年者は、グミをしっかり噛まずに飲み込むことが多いと考えられる。また、早食いは身体活動の不足と独立した関連があり、睡眠の質の低下との関連も示唆された。早食いは摂食障害ほど深刻な問題ではないというのが一般的な捉え方ではあるが、心身の健康と重要な関連があると言える」と考察。結論として、「思春期や若年成人のメンタルヘルスのスクリーニング項目に、摂食速度も含めるべきではないか」と提言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Speed Eating Is Associated with Poor Mental Health Among Adolescents and Young Adults: A Cross-Sectional Study」。〔Nutrients. 2025 Aug 29;17(17):2822〕
原文はこちら(MDPI)

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