女性アスリートは非アスリート女性よりも摂食障害リスクが低い ノルウェーの横断研究
女性を対象に摂食障害関連行動の有無を調査し、アスリートと非アスリートで比較した結果、アスリートのほうがそれを有する割合が低かったという論文がノルウェーから報告された。著者らは、身体活動が摂食障害に対して保護的に働くとする考え方を支持する結果だとしている。
女性アスリートの摂食障害のリスクをさまざまな対象と比較
これまでの一般人口対象研究では、女性は男性よりも摂食障害(eating disorder;ED)や乱れた食事関連行動(disordered eating behaviour;DED)のリスクが高いことが報告されている。またアスリート対象研究からも、女性アスリートは男性アスリートよりもそれらのリスクが高いことが報告されている。その一方で、習慣的な身体活動は自尊心の向上につながり、メンタルヘルスに対して保護的に働くと理解されており、女性アスリートにおけるEDやDEDのリスクを抑制する可能性も考えられる。ただし、これらの関係は、一般女性における身体活動習慣の有無、アスリートにおいては競技レベルの違いによって変化することも想定される。
これらを背景として今回取り上げる論文の研究では、女性アスリートは摂食障害のハイリスク集団であると位置づけるのではなく、比較対象等によってそのリスクは異なるのではないかとの考え方に基づき、さまざまな競技レベにある女性アスリートのDEDを有する割合を、スポーツは行っているが競技レベルではない女性、および運動習慣のない女性との比較が行われた。
ノルウェーの女性を対象にオンラインで横断調査
この研究は、ノルウェー在住の17~40歳の女性を対象に、食行動に関するオンライン横断アンケート調査として実施された。参加者の募集にはソーシャルメディアが用いられたほか、アスリートの回答数を確保するため、同国のスポーツ団体を通じて協力を呼び掛けた。回答はすべて任意で匿名だった。
アンケートの内容は、摂食障害調査票(Eating Disorder Examination Questionnaire;EDE-Q)、および、現在の身体的・精神的健康の主観的な状態に関する質問などで構成されていた。前者のEDE-Qについては2.5点をカットオフ値とし、それを超える場合は摂食障害(ED)のリスクを有する状態と判定した。後者については、7段階のリッカートスケール(極めて悪いが0点、極めて良いが6点)で評価を得た。
回答者の特徴
594人が回答し、妊娠中または妊娠の予定があると回答した29人を除外して、565人を解析対象とした。
このうち、競技会に参加しているアスリートが189人(33.5%)で、レベルは地域レベル(レクリエーションレベル)が72人(アスリート群の38.1%)、国内大会レベルが94人(49.7%)、国際大会レベルが23人(12.2%)だった。行っている競技は、体重管理が重要とされる競技が95人(50.3%)で、その内訳は審美系が5人、持久系が75人、体重別階級のある競技が15人、体重管理がそれほど重視されない競技(球技、短距離、技術系)が94人(49.7%)だった。
非アスリートの一般女性は376人(66.5%)で、そのうち265人(70.5%)は週に2.5時間以上の運動習慣があり、111人(29.5%)は運動習慣がない女性だった。
全体の年齢層は、17~20歳が27.6%、21~25歳が30.8%、26~30歳が27.4%、31~35歳が12.4%、36歳以上が1.8%であり、BMIは全体平均が24.2±4.8、アスリート群のレクリエーションレベルが24.1±3.9、国内レベルが23.3±3.3、国際レベルが22.7±2.3、非アスリート群の運動習慣あり群が24.0±4.9、運動習慣なし群が25.8±6.2だった。
また、自己評価による身体的健康レベルは平均3.6±1.3であり、運動習慣を有する非アスリート群(3.0±1.1)は他の群より有意に低かった。自己評価による精神的健康レベルは平均3.3±1.4であり、レクリエーションレベルのアスリート群が最も高く(3.8±1.3)、最も低いのは運動習慣を有する非アスリート群(3.0±1.4)だった。
アスリートは全体的に摂食障害のリスクが低い
参加者全体でEDE-Qスコアが2.5を超えていた割合は39.3%であり、約4割に摂食障害(ED)のリスクが認められた。各群のその割合をみると、運動習慣のある非アスリート群が45.3%と最も高く、次いで運動習慣のない非アスリート群が44.1%であり、国際レベルのアスリート39.1%、国内レベルのアスリート29.8と続いた。摂食障害リスクを有する割合が最も低かったのは、レクリエーションレベルのアスリートの22.2%だった。
アスリート間での参加競技による比較
アスリートを、体重管理が重要とされる競技とそうでない競技に分けて比較すると、EDE-Qの総合スコアには有意差はなかった。しかしEDE-Qの下位尺度のいくつかに有意差が認められた。具体的には抑制(p=0.046、効果量〈d〉=0.30)、および摂食へのこだわり(p=0.025、d=0.34)は、体重管理が重要とされる競技のアスリートでスコアが高かった。
本研究で明らかになった重要な点として著者らは、まず、ノルウェーの女性の間で乱れた食事関連行動(DED)を有する割合が約4割と、高率にみられたことを挙げている。また、アスリートと非アスリートでの比較では、前者、とくにレクリエーションレベルのアスリートはその割合が低いことが明らかになった。このことは、「身体活動が女性リスクを抑制するとする既存のエビデンスを支持するものである」としている。
文献情報
原題のタイトルは、「Lower Prevalence of Disordered Eating Behaviours Among Norwegian Female Athletes Compared to Non-Athletes: A Cross-Sectional Survey Using the Eating Disorder Examination Questionnaire」。〔Eur J Sport Sci. 2025 Sep;25(9):e70043〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)