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水分補給の習慣や尿浸透圧が、喫煙や飲酒習慣、ウエスト周囲長や疲労などの健康行動・状態と関連

一般成人を対象とする調査から、水分補給の習慣、および、尿浸透圧などで評価した実際の水分補給状態が、喫煙や飲酒などの健康関連行動、および、ウエスト周囲長や日中の疲労などの健康状態と関連していることが報告された。ポーランドで行われた研究であり、要旨を紹介する。

水分補給の習慣や尿浸透圧が、喫煙や飲酒習慣、ウエスト周囲長や疲労などの健康行動・状態と関連

水分の補給状態も重要な健康指標の一つ

一般的な健康関連指標として、ウエスト周囲長や体脂肪率などの体組成、血圧、あるいは加齢に伴う筋力低下を表す握力などが挙げられる。これら以外に、今回取り上げる論文の著者らは「過小評価されている指標」として水分の補給状態を挙げ、体内の水分は、全身の恒常性の維持、浸透圧の調整、栄養素の輸送、神経系と腎臓の機能に不可欠だと解説している。そのような重要性にもかかわらず、他の健康指標に比べて水分補給状態についての研究はあまり行われていない。

このことから著者らは、血圧、ウエスト周囲長、握力などで評価される健康状態、および、BMI、喫煙・飲酒・身体活動習慣、睡眠時間で評価される健康関連行動と、尿比重・浸透圧・pHとの関連を横断的に検討した。

多様な背景をもつ一般住民の水分補給習慣・状態と健康関連行動・状態との関連を調査

この研究の参加者は、ボーランド国内の幅広い多様性をもつ集団から募集された。具体的には、居住地域(都市部、農村部)、社会経済的地位、教育歴などの偏りを避け、17~66歳の450人を募集。このうち、年齢別該当者数が少ないことから18歳未満と40歳以上は解析から除外。また、急性・慢性腎障害、癌、高血圧、過敏性腸症候群の既往、ステロイド、利尿薬等の処方、過去3日以内の下痢・嘔吐・発熱のエピソード、身体の障害、妊娠・授乳中、およびデータ欠落などの該当者を除外し、最終的に337人(女性67.1%)を解析対象とした。

評価項目について

水分補給習慣と水分補給状態

水分の摂取習慣は、食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)を用いて、紅茶、コーヒー、ハーブティー、牛乳、発酵乳飲料、ミネラルウォーター(炭酸入り/炭酸なし)、ジュース(フルーツジュース、野菜ジュース、ミックスジュース)、無炭酸フルーツドリンク、加糖炭酸飲料、コーラ、エナジードリンク、アイソトニックドリンク、ノンアルコールビール、ビール、ワイン、ウォッカ、アルコール飲料などの摂取量を把握した。

水分補給状態は、前述のように尿比重、尿浸透圧、尿pHで評価した。

健康関連行動と健康状態

健康関連行動は、国際標準化身体活動質問票(international physical activity questionnaire;IPAQ)を用いた評価した身体活動量、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI、睡眠時間で評価し、またこれらの結果に基づき健康指数スコア(health index score;HIS)を算出。HISが0~2点は非健康的な生活習慣、3~5点は健康的な生活習慣と判定した。

健康状態は、血圧、ウエスト周囲長、握力、体組成などで評価した。

生活習慣が健康的か非健康的かで水分摂取習慣と水分補給状態が有意に異なる

健康指数スコア(HIS)に基づき、全体の34.1%が非健康的、65.9%が健康的と判定された。この両群を比較すると、年齢、居住地域、経済状態、健康状態に有意差はなかったが、非健康的な群には男性が多かった(44.4 vs 23.1%、p=0.001)。

9種類の飲料の摂取頻度が健康指数スコアに関連

健康指数スコア(HIS)に基づき生活習慣が非健康的とされた群と健康的とされた群の水分補給習慣を比較すると、食物摂取頻度調査票(FFQ)で評価した22種類の飲料のうち9種類の摂取頻度に有意差が認められた。具体的には、健康的な群は、天然発酵飲料、非炭酸ミネラルウォーターの摂取頻度が高く、非健康的な群は、風味付けられた発酵飲料、非炭酸フルーツ飲料、加糖炭酸飲料、お茶、エナジードリンク、ビール、ウォッカの摂取頻度が高かった。

生活習慣の差で尿比重と尿浸透圧にも有意差

次に、生活習慣が非健康的とされた群と健康的とされた群の尿所見を比較すると、生活習慣が非健康的な群は尿比重が高く(1.024 vs 1.019g/mL、p=0.038)、尿浸透圧も高くて(572 vs 516mOsm/kg、p=0.027)、体内の水分量が少ない傾向のある状態が示唆された。pHは両群ともに6.00だった。

日中の疲労、ウエスト周囲長、尿浸透圧は非健康的な生活習慣と独立した関連

続いて、非健康的な生活習慣を目的変数とし、年齢、性別、居住地、教育歴、経済状態を調整した回帰分析を施行。その結果、日中の疲労(オッズ比〈OR〉1.45〈95%CI;1.11~1.78〉)、ウエスト周囲長(OR1.35〈1.15~1.57〉)とともに、尿浸透圧(OR1.87〈1.33~2.37〉)が独立した正の関連因子として抽出された。反対に、非炭酸ミネラルウォーターの摂取頻度が高いことは、独立した負の関連因子として抽出された(OR0.54〈0.21~0.86〉)。

これら一連の結果に基づき著者らは、「健康指数スコア(HIS)と水分補給関連のパラメーターは、成人の健康状態の評価、および、介入において特別なサポートを必要とする集団の特定に補完的な役割を果たす」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association Between Health-Related Behaviors and Health Status and Hydration Status in Polish Adults」。〔Nutrients. 2025 Aug 9;17(16):2597〕
原文はこちら(MDPI)

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