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海外遠征ランナーは何に困る? 食品入手・現地の食習慣・水分補給とサプリ・心理的要因が課題

スポーツ競技会への参加を目的に海外へ旅立つスポーツツーリストが、現地で直面することの多い栄養に関する課題を、デプスインタビューで調査した結果が報告された。12人のマラソンランナーに対する調査の解析で、四つの課題が特定されたという。ポーランドの研究者の報告。

海外遠征ランナーは何に困る? 食品入手・現地の食習慣・水分補給とサプリ・心理的要因が課題

スポーツツーリストの増加に伴い、食事・栄養関連ではどんな課題が生じているのか?

世界的なスポーツ人口の増加とともに、自国外で開催されるスポーツイベントに参加する、スポーツツーリストも増加している。海外旅行が身近になったことも、この傾向に拍車をかけており、他国での観光と組み合わせて大会参加を計画するアマチュアアスリートも少なくない。マラソンやハーフマラソンなど、伝統的に国外からの参加が多い長距離競技のイベントも例外ではない。

持久系競技では、大会参加前のグリコーゲンローディングが成績を左右する大きな要素と言え、非エリートレベルであっても大会に参加する以上は、事前の食事計画をおろそかにできない。しかし、海外では言葉の壁はもちろん、自国との食習慣・環境の違いがあり、レースのスタート時刻にあわせて、どこでなにをどのように食べるべきかを判断するのは容易ではない。

スポーツツーリズムが急速に拡大しているにもかかわらず、このような栄養面の研究はほとんど行われていない。そこでこの論文の著者らは、デプスインタビューによる定性的な研究を行い、現時点でのこのトピックに関する課題の特定を試みた。なお、デプスインタビューは、特定のテーマを深く掘り下げることで、潜在的な課題の抽出や対応策の検討につなげるインタビュー調査。デリケートな内容にも踏み込むことが可能な、質的研究手法の一つとされている。

ポーランドでのハーフマラソンに参加した12人のスポーツツーリストで調査

インタビューの対象は、ポーランドで定期的に開催されているポズナンハーフマラソンの2025年大会にポーランド国外から参加し、母語がポーランド語でなく、過去2年以上にわたり同様に自国外でのマラソン大会に参加しているスポーツツーリスト12人。性別は女性4人、男性8人で、居住国は英国、ドイツ、ウクライナが各4人。インタビュアーは1人で、12人に対するインタビューにより、新たなトピックが観察されない飽和状態に到達した。

インタビュー内容の解析の結果、スポーツツーリストが直面する栄養課題として、(1)食品の質と入手方法、(2)現地の食習慣への適応とその生理学的影響、(3)適切な水分補給とサプリメント摂取、(4)心理的ストレス、身体的健康状態、栄養素摂取の選択の複合的な課題――という4点が特定された。以下、それぞれについて要旨を紹介する。

(1)食品の質と入手方法

海外での大会参加における栄養面での課題として、最も多く挙げられたのは、高い品質の食事の入手手段が限られていることだった。とくに競技に適した食事を摂ることが困難で、レースコースや宿泊施設付近で入手できる一般的な食事の選択肢では、スポーツのための食事ニーズを十分に満たせないと指摘された。

英国から参加した選手は、「スタート地点の近くで健康的な食事を見つけるのが難しいことがよくある。とくにポーランドでは、料理が脂っこく重いものが多い。また、過去に何度かここのレースに参加したが、開催日はたいてい日曜日で、新鮮な野菜や軽食が手に入らなかった」と話した。この発言は、自国の食の嗜好が他国のアスリートの栄養ニーズといかに食い違っているかを物語っている。

特別な食事制限や食物アレルギーのあるアスリートにとって、食品の品質と入手性に関する課題はさらに複雑になる。ドイツからの参加者は「ビーガンの私は海外のレースで苦労する」と述べ、英国の別の参加者は「私はナッツアレルギーで、ほんのわずかでもアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、細心の注意を払わなければならない」とした。

(2)現地の食習慣への適応とその生理学的影響

異なる食習慣や地元の食材は、しばしば不快感をもたらし、場合によっては健康状態やパフォーマンスの低下につながる。多くのランナーにとって、問題は食べ物そのものではなく、その成分や調理方法に関する知識を有していないことだった。ドイツからの参加者は、「国によって食材や調理法が異なるため、自分が何を食べているのか正確に把握できないことがある。全く知らないスパイスが使われていることがあり、そのために体の感覚や反応に影響が生じることも経験する」と述べている。

また、気候や水、食材の組み合わせ、味付けの濃さといった環境の変化が、深刻な生理的な問題を引き起こすことも報告された。ドイツ出身のランナーは、「国際レースでは胃の調子が悪くなることがよくあるが、これは食べ物、水、あるいは環境全体の変化が原因だと思う。危険な食べ物を避けたとしても、体がいつもとは異なる反応を示す」と語り、ウクライナからの参加者は、「レースの数日前から馴染みのない食べ物を避けるようにしているが、この方法では食品の選択肢が限られてしまい、自分のニーズに満たすことが困難になってくる」と説明した。

(3)適切な水分補給とサプリメント摂取

一部の回答者にとっては、適切な水分補給を維持することと、使い慣れたサプリメントを入手することが、国際レース参加中の大きな課題であった。安全な飲料水を常に入手できるわけではないこと、厳しい気象条件下でのレースでは水分補給戦略がより困難になることなども語られた。

なお、ドイツからの参加者は、これらの問題に言及しなかった。これは、遠征前に水やサプリメントを確保しておくなど、他国の出身者が行っていない準備を採用していたか、あるいはドイツ人の習慣や過去の経験により、ポーランドにおけるこれらの問題はそれほど重要ではなかった可能性もある。

(4)心理的ストレス、身体的健康状態、栄養素摂取の選択の複合的な課題

スポーツツーリストは、アスリートとしての課題のほかに、ツーリストとしての課題にも直面する。これらには、ストレス、疲労、快適さの希求などの精神的・身体的状態も含まれる。

ある英国からの参加者は、「海外でレースをする際、移動は間違いなく自国よりも複雑で、とくに飛行機移動の場合や交通手段の選択肢が限られている場合は、オプションの計画を立てておくことが欠かせない」とし、ウクライナからの参加者は宿泊施設での自炊の難しさを、「宿泊施設に適切なキッチン設備がないのは非常に不便だ。そのため、食材は入手できても食事を準備することができない。結局、外食するか調理済みの食事を購入することになる」と指摘している。

さらに、ストレス、緊張、疲労の影響も、適切な栄養摂取の大きな課題として浮上した。あるドイツ人の参加者は、「競技のストレスで食欲がなくなり、レース前に十分な食事を摂るのが難しくなることがよくある。栄養の重要性はわかっていても、体がいうことを聞かない」と語った。英国人ランナーは、「フライト後の疲労で食べる気力がなくなってしまうことがよくあり、残念だが、それがその後のパフォーマンスに影響してしまう」と述べ、ウクライナからの参加者は、「レースのタイトなスケジュールと、滞在中のほかの観光計画のせいで、落ち着いて食事をしたり休んだりする時間がほとんどないことが少なくない」とした。

なお、ウクライナの参加者は、味の好みや現地の料理への適応の難しさについて言及しなかった。これは、ウクライナの食習慣がポーランドのそれと比較的似ているためと考えられる。

スポーツツーリズムの拡大に対応し、栄養士や食品提供者などの連携強化を

著者らは論文の結論で、「本研究は小規模かつ限定的なサンプルサイズであるため、これらの知見をスポーツツーリスト全体に一般化する際には注意が必要。ただし、国際大会への遠征において、効果的な栄養管理には、快適性、健康、運動パフォーマンスを向上させるために、文化的、生理学的、かつ総合的なアプローチを考慮する必要があることが示唆された。個別化された栄養戦略の実施と、コーチ、栄養士、食品提供者、そしてイベント主催者間の連携強化は、スポーツツーリストにおける栄養課題の軽減と参加者の全体的な満足度の向上に役立つ可能性がある」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Challenges of Active Sports Tourists: A Qualitative Study from the Runners’ Perspective」。〔Nutrients. 2025 Jul 17;17(14):2339〕
原文はこちら(MDPI)

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