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赤血球中の葉酸値が筋肉量と相関、サルコペニア予防の目安は512ng/mLか? 米国民健康栄養調査の横断解析

体内の葉酸の貯蔵量の指標ともいえる赤血球中の葉酸値が、筋肉量(ASMI)と正相関することが、米国国民健康栄養調査のデータ解析から示された。512ng/mL以上ではこの相関が有意でなくなることから、著者らは「サルコペニア予防には赤血球葉酸値を512ng/mLを下回らないように維持することが役立つ可能性があるのではないか」と述べている。

赤血球中の葉酸値が筋肉量と相関、サルコペニア予防の目安は512ng/mLか? 米国民健康栄養調査の横断解析

体内の葉酸レベルの三つの指標と四肢骨格筋量指数(ASMI)の関連を検討

ビタミンB群に含まれる葉酸は、骨格筋機能にとっても重要な栄養素であるとされており、複数の研究で葉酸摂取量と筋力との関連が報告されている。ただし、体内の葉酸レベルと筋肉量との関連はいまだ明らかにされていない。

体内の葉酸レベルの評価指標として、「血清総葉酸値」や血清中の葉酸の活性型である「5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-Methyl-tetrahydrofolate;5-MTHF)」、および、赤血球中の葉酸レベルである「赤血球葉酸値」などがある。血清総葉酸値や5-MTHFは食事摂取の影響を受けて変動するのに対して(半減期は3時間)、赤血球葉酸値は赤血球寿命が120日であることから、過去約2カ月の葉酸摂取状況を反映する指標として位置付けられている。

この論文の著者らは、米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを用いて、これら三つの指標と四肢骨格筋量指数(appendicular skeletal muscle mass index;ASMI)の関連を横断的に解析した。

米国国民健康栄養調査のデータを横断的に解析

2011~18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者の中で、癌罹患者、妊婦、およびデータ欠落者を除外した1万3,850人を解析対象とした。なお、論文中には解析対象者の年齢を絞り込んだ(例えば未成年者を除外した)という記載は見当たらず、後述するように、低筋量(low muscle mass;LMM)群の平均年齢が21.437±14.759歳と若く、これは筋量のピークに達していない未成年の参加者が多く含まれていることを意味する。年齢層別のサブグループ解析の結果も示されているが、この点はサルコペニアという加齢変化と葉酸レベルとの関連を検討するうえでの限界点として指摘できるかもしれない。

さて、論文の紹介に戻ると、解析対象者を欧州サルコペニアワーキンググループ2(European Working Group on Sarcopenia in Older People 2;EWGSOP2)のサルコペニア判定基準(ASMIが男性は7未満、女性は5.5未満)に基づき分類すると、3,016人(21.8%)が低筋量(LMM)に分類された。

正常筋量(normal muscle mass;NMM)群と比較して低筋量(LMM)群は、前述のように若年であり(34.898±13.737 vs 21.437±14.759歳、p<0.00001)、男性が多いほか(47.398 vs 51.216%、p=0.00085)、総コレステロール、トリグリセライド、LDL-C、HbA1c、AST、クレアチニン、尿酸、白血球数が有意に低値だった。一方、喫煙率、アルブミン、HDL-C、ビタミンDは有意に高値だった。

低筋量(LMM)群は血清総葉酸値と5-MTHFは有意に高いが赤血球葉酸値は有意に低い

葉酸関連の三つの指標のうち、血清総葉酸値と5-MTHFについては低筋量(LMM)群のほうが有意に高く、葉酸摂取量の長期的な指標である赤血球葉酸値についてはLMM群のほうが有意に低いという結果だった。詳細は以下のとおり。

正常筋量(NMM)群、LMM群の順に、血清総葉酸値は17.882±13.233、22.098±10.690ng/mL、5-MTHFは37.756±28.466、46.584±21.322nmol/L(いずれもp<0.00001)、赤血球葉酸値は496.107±192.645、484.228±182.134ng/mL(p=0.00664)。

赤血球中葉酸値512ng/mL以上がサルコペニア予防の潜在的な効果につながる可能性

次に、四肢骨格筋量指数(ASMI)と葉酸関連指標との関係性を多重線形回帰分析で検討。その結果、交絡因子未調整の粗モデル、および、年齢、性別、人種を調整したモデルでは、血清総葉酸値と5-MTHFはASMIと負の有意な関連が示され、赤血球葉酸値は正の有意な関連が示された。

ただし、調整因子に、喫煙、運動習慣、総コレステロール、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、HbA1c、インスリン、AST、クレアチニン、尿酸、白血球数、アルブミン、ビタミンDなどを加えると、血清総葉酸値と5-MTHFに関してはASMIとの関連が非有意となった。その一方、赤血球葉酸値に関しては引き続き有意な正の関連が維持されていた(β=0.0003、p=0.002098)。

サブグループ解析では20~39歳、男性でのみ有意な関連

続いて、赤血球葉酸値とASMIとの関連について、年齢・性別で層別化したサブグループ解析が行われた。交絡因子を調整後、年齢については20歳以上40歳未満でのみ有意な関連が認められ(β=0.0007、p=0.000003)、20歳未満や40歳以上は有意な関連がなかった。性別では男性のみ有意な関連が認められ(β=0.0007、p=0.000020)、女性では非有意だった。

赤血球葉酸値とASMIとの関連が非線形の関連であったため変曲点を検討すると、赤血球葉酸値が512ng/mL未満の場合は赤血球葉酸値が高値であるほどASMIが高く、赤血球葉酸値が512ng/mLを超えるとその関連がみられなくなった。なお、年齢20歳以上40歳未満の集団での変曲点は468ng/mL、男性のみでは574ng/mLだった。

葉酸サプリ摂取の有用性は、前向き研究で検証される必要がある

これらの結果を基に論文の結論は以下のようにまとめられている。

本研究では、赤血球中葉酸値と筋肉量の間に正の相関関係が認められ、変曲点は512ng/mLだった。この結果は、葉酸欠乏が筋肉量減少と関連している可能性を示唆している。しかしながら、これはあくまで相関関係を示すものであり、因果関係を示唆するものではない。因果関係の確認には前向き研究が必要とされる。赤血球中葉酸値を512ng/mL以上に維持することが、サルコペニアの予防と治療に潜在的な効果をもたらす可能性があるものの、葉酸サプリメントに関する具体的な推奨は、確固とした前向きなエビデンスが得られるまで待つ必要がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between body folate status and muscle mass: a cross-sectional study of the National Health and Nutrition Examination Survey 2011–2018」。〔J Health Popul Nutr. 2025 Jul 12;44(1):250〕
原文はこちら(Springer Nature)

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