スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

早期介入が健全な食習慣形成の鍵 バレエや体操を習う10〜12歳・女子対象の栄養教育プログラム開発

バレエや体操教室に通う10~12歳の女子生徒を対象とする、栄養教育プログラムを開発し、それによる教育の効果を検証した結果がポーランドから報告された。著者らは、この介入の有用性を述べるとともに、成長後にも審美系競技を続けていく女子については、不適切な食習慣が身についてしまう前の、ごく低年齢の段階での介入が重要と指摘している。

早期介入が健全な食習慣形成の鍵 バレエや体操を習う10〜12歳・女子対象の栄養教育プログラム開発

栄養の重要性を、より早期に理解する機会を提供すべきではないか

審美系競技のアスリート、とくに女子アスリートでは、推奨される栄養素摂取量を満たしていないことがしばしば指摘される。若年期の不適切な食習慣は、時間の経過とともに固定されてしまい、成長後には変更が困難になることも繰り返し指摘されている。ただし、バレエや体操は早期特化が早いにもかかわらず、10代初期という早い段階での栄養教育の実態はあまり調査されておらず、確立された教育プログラムもない。

今回取り上げる論文の研究は以上を背景として、10~12歳の女子を対象とし、栄養関連の知識レベルを調査したうえで教育プログラムを開発・実施し、再度、知識レベルを調査して効果を測定したもの。

4週間の教育で、子どもたちの栄養知識はどのくらい高まるのか

研究の対象は、ポーランドの公立バレエ教室または体操教室に通っている10~12歳の女子生徒。トレーニング時間が週に10時間以上であること、慢性疾患や怪我がないこと、保護者の同意があることを適格基準として、60人が参加した。

初回の栄養知識レベル調査

最初に行った栄養知識レベルの調査には、3セクション、12の質問からなるオリジナルの質問票を用いた。その内容は、ポーランド食品栄養研究所が発行している「健康的な栄養と身体活動のピラミッド」から4問、栄養素の働きに関する質問が4問、アスリートのための栄養に関する質問が4問(詳細は後述)。合計0~12点の範囲にスコア化し、6点以下はレベル「低」、7~9点は「中」、10点以上は「高」と判定した。

このほかに、食事や栄養に関する主な情報源についても質問した。

栄養教育プログラムの開発と実施

この調査の結果に基づき、教育プログラムが作成された。プログラムは3部で構成され、第1部はパンフレットを用いた講義であり、栄養素の主な供給源、身体活動量増加時の重要な栄養素の機能、推奨される摂取量の教育。第2部はグループ形式で、前述の知識レベル調査にも用いられた、ポーランド食品栄養研究所の「健康的な栄養と身体活動のピラミッド」に関するディスカッションや、身体活動を考慮したメニューにアレンジする能力の確認などを行った。第3部は個別教育であり、最初の調査で理解が不足していた点の補強などが行われた。

これらのプログラムは4週間にわたり実施され、生徒は毎週1時間の個人またはグループでの授業に参加した。

介入後の再評価

このプログラムに基づく教育を行った3カ月後に、再度、栄養知識レベルの調査を実施。介入効果が検討された。

以下、論文に示されている諸々の結果の中から、ここでは初回調査における栄養・食事の情報源についてと、教育プログラム実施前後での比較について紹介していく。

初回調査の結果を考慮した栄養教育プログラムで知識レベルが有意に改善

初回調査(栄養教育プログラムを開始前)における栄養・食事の情報源は、家族が80%と多く選択された。その他、インターネット、ラジオ/テレビ、教師/トレーナー、友人(仲間)はいずれも30%代であり、栄養士はそれより少なく、わずか20%だった。雑誌/書籍は最も少なく17%が選択した。

12項目の質問のうち5項目は栄養教育プログラム実施3カ月後にも有意に高スコア

知識レベルを問う12問の質問の内容と、栄養教育プログラムの実施前および実施3カ月後のスコアは以下のとおり(表1)。なお、有意に向上した質問が5項目であり、全体評価の「低」は22人から13人に有意に減少(p=0.025)、「高」は12人から25人へと有意に増加していた(p=0.005)。

表1 知識レベルを問う12問の質問の内容、栄養教育プログラムの実施前および実施3カ月後のスコア
質問正解正解率
教育前
正解率
教育後
有意性
穀物製品(パン、パスタ、米、穀類)が各食事の主なエネルギー源となるべきYES72%73%非有意
果物は1日おきに食べるべきNO65%73%0.025
牛乳や乳製品(ヨーグルト、チーズなど)は1日に数回摂取する必要があるYES52%58%0.046
食事中の植物性脂肪の摂取量は動物性脂肪よりも少なくすべきNO33%40%非有意
野菜と果物は食事における鉄分の主な供給源であるNO25%42%0.002
ナッツは健康に有益な脂肪源であるYES52%63%0.008
脂肪の多い魚は食事中のビタミンDの主な供給源であるYES48%60%0.008
100gの肉に含まれるタンパク質は100gのジャガイモよりも少ないNO63%67%非有意
食事(例:昼食)は運動の直前に食べる必要があるNO87%88%非有意
脂質と炭水化物を含むスナック(例:チョコレートバー)は、トレーニング(ダンスのクラス)中の良いスナックであるNO73%77%非有意
激しいトレーニングや運動の後は、まず失われた水分を補給する必要があるYES90%95%非有意
スポーツ(バレエ)をすると栄養素の必要量が増加するYES87%90%非有意

論文の結論は、「本研究で作成した栄養教育プログラムは、10~12歳のバレエおよび体操クラスの生徒の栄養知識レベルに大きな影響を与えた。また、栄養教育は、生徒への教育に加えて、子どもたちの家族、さらには彼女たちが栄養に関する知識を習得する最も身近な相手である、教師やコーチも対象とする必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Evaluation of the Nutritional Education Program in Increasing Nutrition-Related Knowledge in a Group of Girls Aged 10–12 Years from Ballet School and Artistic Gymnastics Classes」。〔Nutrients. 2025 Apr 26;17(9):1468〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ