サプリメントとその業界に関するよくある質問と誤解 科学的・法的にはどのように解釈されるか
サプリを使わず食事だけでは栄養素が不足するのか、サプリの効果はRCTでの検証が必要か、サプリメーカーが資金提供した研究は信頼性が低いのか――。サプリメントの製品、およびサプリメント業界に関するこのような疑問、またはよくある誤解を12項目取り上げ、科学的エビデンスや法的根拠に基づき解説したレビュー論文が、国際スポーツ栄養学会の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。一部を抜粋して紹介する。なお、法的な枠組みの解釈については主に米国と欧州の現状に則して解説されており、日本国内では当てはまらない内容もある。
イントロダクション:サプリ関連で意見が対立しやすいトピック・疑問に回答
サプリメントは今日、競技アスリートの間でも広く用いられている。1,392人のアスリートを対象とした観察研究では、2020年の夏季東京オリンピック参加選手の70%、2022年の冬季北京オリンピック・パラリンピック参加選手の50%が、サプリを使用していると報告された。とはいえ、サプリの使用は常に議論の的となっており、規制の必要性、安全性の確保、有効性の確からしさなどについて、支持する立場と批判する立場の意見が存在する。
米国では、1994年に制定された栄養補助食品健康教育法(DSHEA)に基づき、サプリは食品の一部として食品医薬品局(FDA)によって規制されているが、医薬品とは異なり市販前の承認を必要としない。しかし、製造業者は安全性を確保し、表示基準、適正製造基準(GMP)、および有害事象の報告を遵守する必要がある。サプリの批判的立場の者は、現行のこの枠組みは市販後の規制を優先するものであり、消費者保護という点で十分でないと主張する。一方、支持する立場の者は、この枠組みはイノベーションを促進する柔軟性があると強調する。サプリ業界の成長とともに、このように相反する立場から、異なる考え方が主張される機会が増えている。
これを背景として本レビューは、サプリ関連のよくある疑問に対して、根拠に基づき回答を示している。
サプリメーカーが資金提供した研究の結果は、疑問視されることになるのか?
多くの研究は外部からの支援を必要とする。企業資金による研究は、とくに大規模集団を対象とした長期研究において大きく貢献している。しかしながらそのような企業資金による研究は、バイアスのリスクや利益相反の懸念からしばしば批判され、疑問視されることもある。実際、企業資金による研究は、企業資金を受けていない研究と比較して、より好ましい結果を報告するという証拠がいくつか報告されている。その一方で、それとは逆の関係を示した報告もある。
研究資金の確保に関わるプロセスが公開されることが重要と言える。科学的厳密さを重視するために、資金源、利益相反や関係性を示すこと、実験デザインの透明性の確保が不可欠である。
研究契約には、研究者の誠実性、研究デザインのほかに、学問の自由を支え保護するための明確で詳細な事項が含まれるべきだ。研究者が潜在的な利益相反を開示しない場合、研究に関するあらゆる知見に悪影響を及ぶと考えられる。
サプリを使わずに食事だけで必要な栄養素をすべて摂取できるか?
複数の研究から、微量栄養素の不足が幅広い集団に蔓延していることが明らかになっている。カロリー制限、または特定の食品や食品グループの制限は、栄養素摂取不足の可能性をより高める。例えば、DASH、アトキンスなどの4種類の一般的なダイエットプログラム実践者の微量栄養素の充足状況を分析した研究では、27種類の必須微量栄養素が目安量(reference daily intake;RDI)に対して22.22~55.56%不足していたという。
日本食や地中海食は、いずれも健康に良いことが知られているが、それらでさえ、複数の栄養素の推奨量を満たしていない可能性がある。健康とパフォーマンスの最適化を目標とする際に、サプリが役立つと考えられる。
サプリに関してランダム化比較試験(RCT)を実施する必要はあるか?
RCTは、しばしばエビデンスのゴールドスタンダードとみなされるが、RCT実施の必要性は、具体的な主張(訴求しようとする効果)、既存のエビデンス、試験の実施可能性を考慮し、ケースバイケースで判断されるべきである。メーカーは、RCTを実施するか否かにかかわらず、重大な責任を負っている。
なお、米国においては、サプリのRCT実施は普遍的な法的要件ではない。食品医薬品局(FDA)は、特定の形式の研究を義務付けるのではなく、エビデンス全体を考慮するという柔軟なアプローチを行っている。一方、業界の進化に伴い、科学的実証(製品固有のエビデンスの確立)が強化される傾向がある。
上記以外の主なQ&A
食品とサプリは同程度に規制されているか?
サプリは、安全性、製造、表示に関して、食品よりも高いレベルで規制されている。
市販薬と比較して、サプリはどの程度安全か?
医薬品による副作用の報告数は、サプリメントによる副作用の報告数を上回っている。これは、医薬品の使用頻度の高さが一因である。
製薬業界と比較したサプリ業界の規模は?
米国の製薬業界の規模は、サプリ市場の12倍以上に上る。
サプリが安全で禁止物質が含まれていないかどうかを調べるには?
INFORMED CHOICE、INFORMED SPORT、NSFなどの組織が、禁止物質の有無を確認するサービスを提供している。文献情報
原題のタイトルは、「“Common questions and misconceptions about dietary supplements and the industry - What does science and the law really say?“」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2534128〕
原文はこちら(Informa UK)