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小中高生の熱中症救急搬送の8割がスポーツ活動中に発生 「8月」「午後〜夕方」「屋外」などは要注意

国内で緊急搬送され熱中症と診断された子どもの8割は、スポーツ活動に関連して発症した症例であることが明らかになった。日本救急医学会が毎年、全国規模で行っている疫学調査のデータを二次解析した結果であり、京都大学大学院医学研究科予防医療学分野の岡田遥平氏らの論文が「Clinical and Experimental Emergency Medicine」に掲載された。

小中高生の熱中症救急搬送の8割がスポーツ活動中に発生 「8月」「午後〜夕方」「屋外」などは要注意

子どもは熱中症ハイリスクにもかかわらず、詳細なデータがなかった

熱中症のリスクが高い集団として、屋外労働者、スポーツ選手、高齢者、そして子どもが挙げられる。これらのうち子どもは成人より身長が低いこと、体重あたりの体表面積が大きいことにより、体内での熱産生量や体外からの熱吸収量が大きく、輻射熱(地面の照り返し)を受けやすいことなどが熱中症リスクを押し上げると考えられる。さらに、周囲の成人の指示で行動が規定されやすいこと、幼少期では不調を訴えることができないことも、リスク上昇に関係している可能性がある。

このように子どもの熱中症は成人とはリスク関連因子が異なり、また医療対応や転帰も異なる可能性がある。しかしそれにもかかわらず、子どもの熱中症の特徴に関するデータは不足している。これを背景として岡田氏らは、日本救急医学会「熱中症および低体温症に関する委員会」が行っている「熱中症に関する疫学調査(Heatstroke Study)」のデータを用いて、子どもの熱中症の特徴に関する詳細な検討を行った。

7割は屋外で発生し、8割はスポーツに関連して発生

「Heatstroke Study」は毎年、夏季(7~9月)に、全国の二次・三次医療機関が参加して実施されている観察研究である。参加施設数は例年100施設以上で、2020年と2021年は165施設が参加した。今回の研究では、2017~21年の夏季に救急外来で熱中症と診断されていた3,154人から、18歳未満の146人を抽出して解析した。

年齢は中央値15歳で、男子に多い

146人のうち男子が60%を占めていた。

年齢は中央値15歳(四分位範囲13~16歳)であり、高校生(15~17歳)が41%と最多で、次いで中学生(12~14歳)が38%、小学生(6~11歳)が16%、乳児や未就学児(0~5歳)が4.8%だった。

8割がスポーツ活動中、7割が屋外で発生

発生の時期は8月が47%と最多で、次いで7月が42%だった。時間帯については、午後(12~18時)が半数以上(52%)で、次いで夕方(18~24時)が22%を占めていた。

発生場所は屋外が70%であり、80%はスポーツ活動に関連して発生していた。なお、消防庁が毎年発表している熱中症による救急搬送状況の統計では、発生場所の最多は「住居」であり、今回の研究により、救急対応を要する子どもの熱中症の発生場所が、成人を含めた全体的な傾向とは大きく異なることが示された。

関連情報
総務省消防庁「過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧」

6割強は救急車で搬送され、62%が重症度Ⅲ度

全体の62%は救急車で救急外来に搬送されていた。体温は中央値37.2℃(四分位範囲36.7~38.0℃)で、多く(73%)は腋窩で測定されていた。

熱中症の重症度は62%がIII度(日本救急医学会のガイドラインで入院が推奨される状態)と判定されていた。また、36%に急性腎障害、25%に肝障害、39%に意識障害(グラスゴー・コーマ・スケールが14点以下またはけいれん発作)が認められたほか、ヘモグロビンやヘマトクリット、尿素窒素(BUN)、血清ナトリウムの上昇などの脱水を示す所見が多く認められた。

16%がICU入室、2人が死亡

救急外来での初療後に、75%は一般病棟に入院し、16%がICUに入室、7.5%は入院せずに帰宅していた。救急外来での死亡が2人(1.4%)記録されており、いずれも乳幼児だった。

入院期間は中央値2日(四分位範囲2~3日)で、生存退院した患者は全員、modified Rankin Scale(mRS)が3(生活の一部に介助が必要な中等度の障害)未満であり、機能的転帰不良は認められなかった。

著者らは本研究の限界点として、研究参加施設以外の医療機関を受診した患者や、救急外来受診前に死亡した症例のデータが不明であること、調査期間が7~9月であり、5~6月など熱中症が発生し得る他の月のデータが収集されていないことなどを挙げている。

そのうえで、「救急外来に搬送された熱中症の子どもの大半は中学生か高校生であり、8月の午後の発症、屋外スポーツ活動に関連した発症が多いことが明らかになった。入院を要した患者の多くは、意識レベルの低下、脱水、急性腎障害を呈していた。これらの知見は、今後の子どもの熱中症に対する予防策や医学的対応の検討に役立つのではないか」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Characteristics of pediatric patients with heat-related illness transferred to emergency departments: descriptive analysis from Japan」。〔Clin Exp Emerg Med. 2025 Apr 30〕
原文はこちら(The Korean Society of Emergency Medicine)

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