高カロリー時間制限食と筋力トレーニング併用による効果は? 筋肥大・筋力・脂肪量への影響を比較試験で解析
1日の中である時間帯のみ摂取量を気にせずに飲食し、その他の時間帯はカロリーのあるものを一切絶つという、「時間制限食」と呼ばれる食事スタイルが、減量や代謝改善を目指す人の間で人気となっている。では、ふだん筋力トレーニングを行っている人がこのような食事スタイルを採用した場合、トレーニング効果が変化するのだろうか。この疑問について、摂取カロリーを+10%とする条件下での無作為化比較試験で検討した結果が報告された。
高カロリーの16:8時間制限食の筋トレ効果への影響を検証
断続的断食の一つのパターンである時間制限食(time-restricted eating;TRE)については、体重管理、体組成、代謝、免疫能への影響や効果という視点で多くの研究が行われてきており、減量に関しては一定程度のエビデンスが蓄積されてきている。その一方、筋トレで筋量を増やすということは減量とは正反対に近い作用を期待するということであり、従来の研究における時間制限食(TRE)の効果とは相いれない。
実際、これまでの研究の大半は、総摂取エネルギー量を変更せずに減量効果を得られるかという検討、または、総摂取エネルギー量を減らし、かつTREとすることで、単に総摂取エネルギー量を減らすよりも減量効果が拡大するかという視点で検討されてきている。それに対して今回の研究は、筋トレを継続しつつ、総摂取エネルギー量を増やしたうえでTREを行った場合に、筋肉関連指標にどのような影響が生じるのかが検討された。
習慣的に筋トレを行っている17人を無作為に2群に分け8週間介入
研究参加者は、過去1年間に週3回以上の筋トレを行っていて、1RM(one repetition maximum〈1回だけ施行可能な最大負荷量〉)が、男性はバックススクワットが体重の1.5倍、ベンチプレスが1.0倍、女性は同順に1.0倍、0.55倍という基準をクリアした17人。除外条件として、ビーガンやケトン産生食、地中海食などの特別の食事スタイル、体脂肪率35%以上、パフォーマンス向上薬の使用歴などが設定されていた。
無作為に2群に分け、1群を1日に8時間のみ摂食可とする「TRE」群、他の1群を任意の時間に摂食可とする対照群とした。この割り付けの情報は、トレーニング指導やパフォーマンス測定を行う研究者にはマスクされた。また、後述の栄養サポートに当たる栄養士は、栄養指導のみを行い、データ解析を含むその他の過程には関与しなかった。
TRE群(男性6人、女性4人)は、午前中に筋トレを行い、筋トレ終了から1時間以上経過した後の8時間を、摂取可能な時間帯とした。対照群(男性7人、女性3人)も午前中に筋トレを行ったが、食事は任意の時間に摂取した。
両群ともに筋トレ終了後、0.35g/kgのホエイプロテインを摂取した。その摂取量は常に0.35g/kgとなるように、体重変化にあわせて週単位で調整された。
食事の摂取エネルギー量は、必要とされるエネルギー量の1.1倍(10%過剰)とし、これも週単位で体重の変化にあわせて調整された。栄養素バランスは、脂質を25%エネルギー、タンパク質を2.2g/kgとし、残りを炭水化物で満たすように調整した。この食事介入のため、週ごとに栄養士によるリモートサポートが行われた。
筋トレは週4回行われ、適切な負荷量を自動で設定するプログラム(autoregulatory progressive resistance exercise;APRE)を用いて、ワークセットの反復回数が規定回数から2回以上超過した場合は負荷量を2.5%増やし、規定回数に届かなかった場合は10%減らした。
時間制限食(TRE)群の筋力への介入効果は一部の指標を除き対照群とほぼ同等
8週間の介入期間中、TRE群の1日の摂食時間は中央値7.9(四分位範囲0.1)時間に遵守されていた。対照群は同13.2(0.6)時間だった。摂取エネルギー量は、TRE群3,090±643kcal/日、対照群3,115±629kcal/日で有意差がなく(p=0.94)、炭水化物、脂質、タンパク質の摂取量も有意差がなかった。
筋トレの実施状況:TRE群では総運動量が有意に少ない
筋トレ参加日数は、TRE群59±2日、対照群59±4日で有意差がなく(p=0.59)、自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)も有意差がなかった。
その一方、総トレーニング量は、TRE群は6,960±287回であり、対照群の7,334±289回より有意に少なかった(p=0.02、効果量〈d〉=1.3〈大〉)。ただし、週あたりの総負荷量は、TRE群438±112kg、対照群441±138kg(p=0.97)で有意差がなかった
筋力への影響:TRE群ではスクワット1RMの上昇幅が少ない傾向
上半身および下半身の最大筋力(1RM)と筋持久力(muscular endurance;ME)は、両群ともに介入期間中に有意に上昇した。ただし、上昇幅を比較すると、TRE群のスクワット1RMは対照群に比較して4.0±1.9kg少なく、有意水準未満の差が認められた(p=0.058)。
ベンチプレスの1RM、ME、レッグプレスのME、レッグエクステンションの1RMには有意差がみられなかった。
体組成への影響:対照群では除脂肪量とともに脂肪量が増加
除脂肪量は、TRE群では介入後に2.67kg増加し、対照群では1.82kg、ともに有意に増加していた。ベースライン値を調整すると、介入期間中の変化幅は有意差がなかった(p=0.46)。
一方、脂肪量の変化については、ベースライン値を調整後、TRE群のほうが1.4±0.6kg少なく、有意差が認められた(p=0.047)。それに伴い、介入後の体脂肪率もTRE群のほうが1.6±0.7%低値だった(p=0.04)。
TREをより長期間継続した場合の筋量・筋力への影響は現時点で不明
このほかに、気分状態や睡眠への影響も調査されたが、それらについては群間差はみられなかった。
著者らは本研究を、「脂肪量の減少が目的ではなく、筋肥大とパフォーマンスの向上を目的として、高カロリー状態を維持した時間制限食による介入の初のエビデンス」だとしている。結論は以下のようにまとめられている。
「十分な筋トレの実践者が漸増レジスタンス運動を行い、十分なタンパク質を含む高カロリーの食事を摂取している場合、16:8TREアプローチは、筋量、筋力、筋持久力を向上させ得る。ただし、総トレーニング量、下半身の1RM、脂肪量の変化については有意差が認められ、実践に際しては留意が求められる。トレーニング量の減少は、より長い介入(つまり、本研究の介入期間である8週間よりも長い期間)においては、筋量や筋力へ影響が生じる可能性があり、この潜在的な懸念の証明または否定のため、さらなる研究が必要。TREと対照条件には、それぞれ利点と欠点があるようだ。TREは、筋肉の発達を促すというよりも、脂肪減少に重点を置くダイエットに適している可能性がある。ただし、個人の目標、ライフスタイル、嗜好などの、より広い文脈で適応を考慮するべきだろう」。
文献情報
原題のタイトルは、「Hypercaloric 16:8 time-restricted eating during 8 weeks of resistance exercise in well-trained men and women」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2492184.〕
原文はこちら(Informa UK)