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思春期アスリートの栄養最適化に向けた実践的戦略 エネルギー要件、栄養素、サプリメントなどの推奨事項

思春期アスリートのパフォーマンスのための栄養戦略について、エビデンスを総括したレビュー論文が発表された。著者はニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の研究者。エネルギー要件、栄養素摂取量、サプリメント等について執筆されており、ここではそれらの項目の一部について、要旨部分のみを紹介する。

思春期アスリートの栄養最適化に向けた実践的戦略 エネルギー要件、栄養素、サプリメントなどの推奨事項

イントロダクション

思春期のアスリートは、成長・発達、スポーツパフォーマンスの向上という要求に同時に対応するため、ほかの世代にはない特有の栄養上の課題に直面する。思春期は食習慣や身体イメージの形成期でもあり、若いアスリートは、親、仲間、コーチなど外部からの影響を受けやすく、摂食障害のリスクが高まる。一方でこの時期に栄養を最適化する習慣が身に付けば、アスリートとして成人期を迎え、かつエリートレベルやプロレベルでの競技参加へとつながっていく可能性も芽生える。

本レビューにおいて「思春期アスリート」とは、12~18歳の女子と14~18歳の男子であり、週に5~6日、1日60分以上、体系的な身体トレーニングを行う者を指す。通常、この段階のアスリートは、学校やクラブ、または地域のスポーツプログラムにおける競技パフォーマンス向上を目的とした団体に所属している。

スポーツ栄養への関心が高まっているにもかかわらず、この世代に対する既存のガイドラインのほとんどは、成人集団を対象とする研究から得られた知見に基づいている。このようなギャップは、この世代を対象とする研究には倫理的に考慮すべき事項が多いことも一因とされる。思春期アスリートの独特かつ個別的な栄養ニーズに対応する質の高い研究が、強く求められている。

エネルギー、主要・微量栄養素、水分補給の推奨

エネルギー

至適量は45kcal/kg除脂肪体重(FFM)/日であり、30kcal/kg FFM/日未満は利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)リスク。

炭水化物

6~10g/kg/日(トレーニング強度に基づく目標)。運動後は1.0~1.2g/kgを2時間ごとに4~6時間。

タンパク質

1.4~2.0g/kg/日。3~4時間ごとの食事で20~40g、運動後には0.25~0.30g/kg。

脂質

総摂取エネルギー量の20~35%。飽和脂肪10%未満でトランス脂肪は避ける。

水分

2.0~2.4L/日をベースラインとする。運動中は20分ごとに約90~240mL。運動後には、体重減少幅1ポンド(約450g)あたり約480~600mL。

11mg/日(男子)、15mg/日(女子)。フェリチン30µg/L以上。持久力の低下や疲労がみられるアスリートにはスクリーニングが必要。

カルシウム

1,300mg/日(14~18歳)。食事や間食として摂取し、乳製品や強化植物性食品が推奨される。

ビタミンD

600~800IU/日(15~20μg)。血清25(OH)D30ng/mL以上。サプリメントが必要な場合がある。

エルゴジェニックエイド、サプリメント

プロテインサプリメント

食物全体の摂取が不十分な場合にのみ使用する。使用する場合は、第三者機関による検査を受けた製品を選択する。

クレアチン

監督下で体系的なトレーニングを受けているアスリートには考慮される可能性がある。

オメガ3(EPA/DHA)

回復をサポートし、炎症を軽減し、脳の健康を守る可能性がある。

ビタミンD

日光曝露が少ない地域で、食事からの摂取源が限られている場合、必要となる場合がある。血清レベルをモニタリングする。

欠乏している場合、60~120mg/日。朝の摂取ではビタミンCと一緒に摂取し、コーヒーや食事と一緒に摂取しない。

エナジードリンク

カフェインを過剰摂取することになり、睡眠障害、心血管への影響のリスクがあり、推奨されない。

結語

医療従事者、コーチ、家族、管理栄養士の学際的な連携を通じて提供される栄養教育は、思春期アスリートに対して、情報に基づいた食事の選択を行うための知識とツールを提示するために不可欠である。

10代のアスリートは、自然食品を優先し、摂取量をトレーニングの要求に合わせて調整して、時間的制約や社会的影響などの障壁に対処することで、パフォーマンスの最適化、健康的な発達のサポート、そして競技場内に限らず競技から離れた場面においても、健康促進につながる生涯にわたる習慣を確立することが可能となる。

文献情報

原題のタイトルは、「Optimizing Performance Nutrition for Adolescent Athletes: A Review of Dietary Needs, Risks, and Practical Strategies」。〔Nutrients. 2025 Aug 28;17(17):2792〕
原文はこちら(MDPI)

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