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日本人男性の心血管疾患リスクの最適な指標はBMIよりも「腹囲身長比」 16万人を13年間追跡した大規模研究

日本人男性の心血管疾患リスクの最適な指標は「腹囲身長比」であり、BMIよりも予測能が優れることを示すデータが報告された。京都府立医科大学などの研究グループの成果であり、「The American Journal of Clinical Nutrition」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。最適なカットオフ値は0.494であって、欧米のガイドラインが推奨する「腹囲長を身長の半分未満に保つ」という基準(0.5)とほぼ一致しているという。

日本人男性の心血管疾患リスクの最適な指標はBMIよりも「腹囲身長比」 16万人を13年間追跡した大規模研究

研究成果のポイント

  • 肥満は世界的に重要な公衆衛生上の課題。とくに肥満の中でも内臓脂肪の蓄積による中心性肥満が、さまざまな代謝疾患の発症に関連していることが報告されている。日本では主にBMIを用いて肥満が判定されているが、BMIでは内臓脂肪を判定することが困難であり、肥満の重大な合併症である心血管疾患の発症を予測する指標としてのBMI使用には議論がある。
  • 本研究は、日本人約16万人の大規模データを13年間追跡し、心血管疾患の発症と5種類の体格指標との関連を比較検証した、東アジアで初の長期大規模研究。日本人男性において、心血管疾患の将来的な発症リスクを最も正確に予測する指標は、「腹囲身長比」、および、体型の丸み(roundness)を評価する「body roundness index(BRI)」であることを明らかにした。
  • 腹囲身長比とBRIは同等の高い予測精度を持つが、腹囲身長比は「腹囲長÷身長」と誰もが簡単に計算出来ることから、日々の健康管理でとくに使用が推奨される。腹囲身長比の最適なカットオフ値(検査や測定結果の陽性・陰性を識別する値)は0.494であり、これは近年の欧米のガイドラインが推奨する「腹囲長を身長の半分未満に保つ」という基準(0.5)とほぼ一致している。
  • 本研究で、「腹囲を身長の半分未満に保つ」というシンプルな健康目標が、日本人男性にも科学的に有効であることが証明された。

図1 研究の概要図

(出典:京都府立医科大学)

研究内容の詳細

研究の背景や問題点:肥満に伴うCVDリスクを予測する日本人に最適な指標は何?

心血管疾患(CVD)は依然として世界における主要な死因。その大きな原因の一つが肥満、とくに内臓脂肪の蓄積だが、これまで世界標準の肥満指標であったBMIでは、この内臓脂肪を正確に評価することができないという課題があった。そこで、腹囲長を身長で割り算出する腹囲身長比や、近年では体形の丸み度を反映するBRI(Body Roundness Index)等の体格指標が開発され、その有用性が世界中で検証されている。

しかし、これらの新しい指標が、従来のBMIなどと比べて、日本人の長期的な心血管疾患リスクをどれほど正確に予測可能なのかは、これまで大規模な研究がなく、明らかにされていなかった。そこで本研究では、この課題を解決するため、大規模な日本人集団のデータを基に、五つの異なる体格指標が13年間にわたり、心血管疾患の発症にどのように関連するのか直接比較・検証した。

研究内容・成果の要点:日本人男性のCVDリスク予測能が高い指標は腹囲身長比

2008~21年に、パナソニック健康保険組合が実施した健康診断の受診者16万656人(平均年齢44.5±8.3歳)を対象とした。上記期間内の健康診断を通して、身体測定、血液検査、問診結果を縦断的に収集し、BMI、腹囲、ABSI(A Body Shape Index)、BRI、腹囲身長比という五つの体格指標の心血管疾患発症予測能を比較した。

13年間の追跡期間中、男性では4,027人(3.4%)、女性では372人(0.9%)がMACE(非致死性脳卒中、非致死性冠動脈疾患、心血管死によって構成される主要心血管イベント)を発症した。多変量解析の結果、男性では五つすべての体格指標がMACE発症と有意に関連していたが、女性ではいずれの指標も有意な関連を示さなかった。

男性における各指標の予測精度を比較したところ、腹囲身長比とBRIが、BMI、腹囲、ABSIよりも有意に高い予測能を持つことが明らかになった(AUC値が腹囲身長比とBRIはともに0.608)。また、将来のMACE発症を予測するための最適なカットオフ値は、腹囲身長比が0.494、BRIは3.250であることが示された。

今後の展開と社会へのアピールポイント:腹囲÷身長は簡単に計算可能

本研究は、約16万人という大規模な日本人集団を13年間にわたり追跡した東アジアでは初の長期的な研究であり、各体格指標を日本人の心血管疾患の発症に対して検討した重要な研究。長年、肥満の指標として世界標準であったBMIは、心血管疾患との関連が深い内臓脂肪の蓄積を正確に反映することができないという限界があった。

本研究の最大のポイントは、日本人男性において、従来のBMIよりも腹囲身長比やBRIのほうが、将来の心血管疾患リスクをより正確に予測可能であることを科学的に証明した点にある。この二つの指標は同等の高い予測精度を持つが、BRIは複雑な計算を要するのに対し、腹囲身長比は「腹囲長÷身長」という簡単な計算式で誰でも算出可能という大きな利点がある。そのため本研究では、日常の臨床現場や個人の健康管理で用いる最も実用的な指標として、腹囲身長比の使用を推奨する。

近年、英国のガイドラインなどでは「腹囲長を身長の半分未満(腹囲身長比0.5未満)に保つ」ことが健康目標として推奨されている。本研究で特定された日本人男性の最適なカットオフ値である0.494は、この国際的な基準とほぼ一致しており、その科学的妥当性を日本人の大規模データで初めて裏付ける強力なエビデンスと言える。

腹囲身長比は「腹囲長÷身長」という簡単な計算で算出でき、この指標を今後の健康診断や個人の健康管理に活用することで、これまで見過ごされていたかもしれない高リスク者をより早期に発見し、食事や運動といった予防策につなげることが可能になる。これにより、将来の心筋梗塞や脳卒中の発症を減らし、国民の健康寿命の延伸に大きく貢献することが期待される。

プレスリリース

【論文掲載】日本人男性の将来の心血管疾患リスク、最適な指標は「腹囲身長比」~「腹囲÷身長」が従来のBMIより優れた予測精度、疾患の早期予防に期待~(京都府立医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Anthropometric indices for predicting incident cardiovascular disease: a 13-year follow-up study in a Japanese population」。〔Am J Clin Nutr. 2025 Oct;122(4):954-961〕
原文はこちら(Elsevier)

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