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高齢者の筋トレ効果を最大化するサプリメントを調査 プロテインとクレアチンが有効か?

高齢者の筋量と筋力に対する筋トレに並行して行う栄養介入の効果を、ネットワークメタ解析で検討した研究結果が報告された。筋力に対してはプロテイン摂取の上乗せが最も効果的であり、筋量に対してはクレアチン摂取の上乗せが最も効果的である可能性が示されたという。

高齢者の筋トレ効果を最大化するサプリメントを調査 プロテインとクレアチンが有効か?

ネットワークメタ解析で、異なる栄養介入の有効性を比較検討

世界的に高齢者人口が増加し、サルコペニア対策が公衆衛生上の重要な課題となっている。これまでの研究から、筋力トレーニングがサルコペニアの予防や改善に有効であることが示されており、それ以外に、プロテイン、クレアチン、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)などのサプリメントの有効性を示唆する報告がみられる。

筋トレと栄養はどちらか一方のみよりも、両者を並行して行ったほうが、有効性が高くなる可能性も示されている。逆に言うと、どちらか一方が不十分な場合、もう片方の介入の効果が十分発揮されないことがある。例えば、タンパク質の摂取量が0.8g/kg/日を下回っていると、筋トレによる筋タンパク質の合成効率が42%低下するというデータがあり、また、タンパク質摂取量が十分であっても機械的な負荷がなければ最大56%のアミノ酸が利用されないというデータがある。

これらを背景に、筋トレと栄養介入を並行して行い相乗効果を検討するという研究が、既に多く行われてきている。しかし、それら個々の研究は単一の栄養素の有効性を検討したものがほとんどであり、異なる栄養素の有効性を比較することはできていない。そこで今回取り上げる論文の著者らは、異なる介入を行っている複数の研究報告を統合して、個々の介入の効果を順位付けする統計学的な手法である、ネットワークメタ解析を施行。筋トレに並行して行う栄養介入として、筋量や筋力の点で優れているサプリメントを探索した。

プロテイン、クレアチン、HMBを筋トレに上乗せしたRCTの報告を抽出

システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠して、PubMed、Web of Science、Embaseという三つの文献データベースに、それぞれのスタートから2025年4月までに収載された論文を対象とした検索を実施。包括基準は、研究参加者が身体・精神・認知機能が健康的と判断される地域在住の60歳以上の成人であり、筋トレと栄養介入を並行して行い、それらのアウトカムを検証済みの一つ以上の筋量・筋力関連指標で評価している無作為化比較試験(RCT)の報告であって、全文にアクセス可能なものとした。介入方法の記述が不完全な報告、データ欠落のある報告、筋量や筋力とは関連のない指標のみを示している報告は除外した。

一次検索で997報がヒットし、重複削除後の718報を、2名の研究者が独立してスクリーニングを行い、69報を全文精査の対象とした。最終的に19件のRCTの結果が適格と判断された。

抽出されたRCTの特徴

19件のRCTの合計参加者数は997人で、栄養介入はプロテイン摂取が11件、クレアチン摂取が5件、HMB摂取が3件だった。アウトカムについては16件の研究が筋力、18件の研究が筋量を評価していた。

全体として、盲検化について言及していない報告が多く存在した。この点を著者らは、「スポーツ栄養関連のRCTでしばしば観察される、この領域固有の限界」と述べている。バイアスリスクが高いと判定された報告はなかったが、中リスクと判定された報告が68.4%を占めていた。

プロテインとクレアチンを優先する統合的なサプリメント戦略に期待

論文では解析結果を、ネットワークメタ解析に基づく累積順位曲線下面積(surface under the cumulative ranking curve;SUCRA)として示すとともに、標準化平均差(standardized mean difference;SMD)および平均差(mean difference;MD)として示している。

SUCRAによる順位付けの結果

ネットワークメタ解析の累積順位曲線下面積(SUCRA)からは、プロテイン、クレアチン、HMBの中で、筋トレに並行して行った場合に筋力アップに最も効果的な栄養介入は、プロテインサプリ(SUCRA98.7%)であることが示された。次いで、クレアチン(SUCRA48.9%)であり、その次はプラセボ(SUCRA43.8%)であって、HMBはプラセボを下回った(SUCRA8.7%)。

一方、筋量に対してはクレアチンが最も有効である可能性が高く(SUCRA99.9%)、次いでプロテイン(SUCRA62.5%)とHMB(SUCRA23.9%)が続き、いずれもプラセボ(SUCRA13.7%)を上回っていた。

SMD、MDによる介入効果の比較

筋力に対する効果を標準化平均差(SMD)または平均差(MD)でみた場合、プロテインは(SMD=0.45〈95%CI;0.20~0.69〉)、クレアチン(MD=2.18〈0.93~3.44〉であり、筋量に対してはプロテイン(MD=0.37〈0.04~0.70〉)という結果が示された。

ペアワイズ比較では、筋力アップという点においてプロテインはHMBよりも優れていて、筋量増加という点においてクレアチンはプロテイとHMBの双方を上回っていた。

著者らは本研究の限界点として、HMB介入の報告が3件のみであり、潜在的な効果が過小評価されている可能性があることなどを挙げたうえで、結論を「本ネットワークメタ解析は、健康な高齢者において、プロテインサプリメントの摂取をレジスタンストレーニングに組み合わせることで、筋力と筋量の双方が有意に改善し、筋力増強においてはクレアチンと同等の有効性を示すことを示した。クレアチンサプリは、筋肉量増加において、プロテインとHMBの両方を上回る優れた有効性を示した。一方、HMBサプリについては、本研究からは有意な効果が認められなかった」とまとめている。

また、将来の展望として、「栄養とレジスタンストレーニングの相乗効果を最大化するために、プロテインとクレアチンを優先する統合的なサプリメント戦略を開発し、投与量、配合、介入期間を詳細に検討する必要がある。今後の研究により、高齢者のサブグループ(例えばサルコペニア該当者)における反応の異質性を明らかにし、長期的な安全性と用量反応関係を確立することで、個別化された運動・栄養レジメンの最適化が求められる」と付言している。

文献情報

原題のタイトルは、「The impact of nutritional intervention and resistance training on muscle strength and mass in healthy older adults—a comparative analysis」。〔Front Nutr. 2025 Aug 18:12:1640858〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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