熱中症と居住地域の格差に関連? 社会経済的指標が低いほど緊急入院リスクが高い
都市部では、社会経済的指標が低い地域の住民ほど、暑さに伴う緊急入院リスクが高いことが明らかになった。東京科学大学と東北大学の研究グループが、全国規模の入院データを解析し、居住地域や社会経済的指標によって緊急入院リスクがどのように異なるか検討した結果であり、「Journal of Epidemiology and Community Health」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにプレスリリースが掲載された。暑さの影響がとくに大きい地域では、救急医療体制の強化を含む対策の必要性が示されたことから、今後、地域の特性に応じた暑さ対策の推進が求められる。

研究の背景:社会経済的弱者は熱ストレスへの耐性が低いか?
暑さはさまざまな健康リスクを引き起こすことが知られている。一方で、暑さによる健康被害の受けやすさは、個人の特性や居住地域によって異なるとされている。
とくに、ヒートアイランド現象の影響により都市部の住民は暑さにさらされやすいと考えられている。また、社会経済的指標が低い地域の住民は、熱ストレスへの耐性が低い可能性があることも懸念されている。
しかし、こうした健康被害の実態については、十分に明らかにされていなかった。
研究の成果:都市部の社会経済的指標が低い地域は暑さに伴う緊急入院リスクが高い
本研究では、日本全国における2011年から2019年までの9年間のデータを用い、6月から9月(年間で気温の高い4カ月)に発生した緊急入院症例を対象として、1日の平均気温と緊急入院との関連を分析した。さらに、暑さによる緊急入院への影響が、居住地域や社会経済的指標によってどのように異なるのかを解析した。
入院データはDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースから抽出し、日平均気温のデータは気象庁のデータを使用した。社会経済的指標としては、国勢調査の世帯・職業・居住に関する項目を基に算出された地理的剥奪指標(Area Deprivation Index:ADI)を採用した。また、居住地域(都市部・郊外・それ以外)は、国勢調査の大都市圏・都市圏の分類に基づいて設定した。
解析の結果、全緊急入院のうち、暑さが要因となる入院の割合は、最も社会経済的指標が高い地域では1.19%(95%信頼区間0.98~1.41)であるのに対し、最も社会経済的指標が低い地域では1.87%(同1.68~2.06)と算出された。このことから、社会経済的指標が低い地域ほど、暑さによる緊急入院への影響が大きいことが明らかになった。
また居住地域(都市・郊外・それ以外)別に比較すると、都市でも郊外でもない地域では1.42%(1.24~1.60)であるのに対し、都市部では2.03%(1.78~2.30)と推定された。これにより、とくに都市部の住民において、暑さによる緊急入院の影響が大きいことが示された。
さらに、社会経済的指標と居住地域の両方を同時に考慮すると、都市部における最も社会経済的指標が低い地域の集団において、暑さによる緊急入院は2.62%(2.26~3.03)と、最も高いことが判明した。
図1 居住地域・社会経済的指標別の暑さに伴う健康被害

社会的インパクトと今後の展開:対象により熱中症警戒アラートの情報がとくに重要
本研究により、暑さによる緊急入院への影響は、都市部において社会経済的指標が低い地域の住民ほど顕著であることが明らかになった。この結果を踏まえ、熱中症警戒アラートに基づいた暑さ対策の重要性を、とくにこうした地域の住民に対して重点的に啓発する必要があると考えられる。また、地域の実態に即した暑さ対策を講じることの重要性が示唆された。
一方、救急医療を担う医療機関では、暑さが引き起こす緊急入院への対応力を強化することが求められる。とりわけ、都市部の社会経済的指標が低い地域の医療機関では、その重要性が一層高いと考えられる。今後、気候変動の影響により暑い日が増えると予想されるなか、暑さに伴う緊急入院の増加に対応できる医療体制の構築が必要であることが示唆された。
プレスリリース
都市部における暑さによる健康被害の格差を解明 社会経済的指標が低い地域の住民ほど、緊急入院リスクが高いことを実証(東京科学大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Heat-related impacts on all-cause emergency hospitalisation differ by area deprivation and urbanicity: a time-stratified case-crossover study in Japan」。〔J Epidemiol Community Health. 2025 Jan 16:jech-2024-222868〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group)
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