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新型コロナ流行後、若年層の神経性やせ症が増加 生活様式の激変が影響か? 東邦大学

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行と神経性やせ症の若年患者の日本における関係性の傾向を、大規模診療データを用いて検討した結果、COVID-19流行後に患者数が増加に転じていることが明らかになった。東邦大学の研究グループの研究成果であり、「Medicina(Lithuania)」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

新型コロナ流行後、若年層の神経性やせ症が増加 生活様式の激変が影響か? 東邦大学

研究のポイント:日本も欧米諸国同様の変化が生じていた

COVID-19の流行後、欧米諸国から若年者の神経性やせ症の患者数が増加していることが報告された。しかし、日本を含むアジア地域においては明らかになっていなかった。

今回の研究により、COVID-19の流行前の期間では、神経性やせ症の若年患者数は経時的に減少傾向だったが、流行後の期間では増加傾向にあることが明らかになった。とくに男性や低年齢群での増加率が高いこともわかった。

欧米諸国も同様の結果であり、社会や文化的な差異を超えた、COVID-19の流行およびCOVID-19流行後の生活様式の変化という、各国に共通する状況が神経性やせ症の発症に強く関連したと考えられる。また、本人の心理状態や家族および友人との関係性などが発症に関わるリスク要因として示唆された。

本研究の結果を踏まえ、今後、世界的な感染症の流行や甚大な災害時などの有事の際には、リスク要因に応じた介入を行い、重大な社会的損失を伴う神経性やせ症の発症を予防していくことが望まれる。

発表内容:男子、低年齢でより強い影響

神経性やせ症は思春期から好発する精神疾患で、その症状は長期的な治療を要する場合が多く、経済的な面も含めて個人だけでなく社会に大きな影響を与える。そのため、発症を予防し早期に介入していくことが必要であり、発症に関連する要因を明らかにすることが喫緊の課題となっている。

2020年からCOVID-19が世界的に流行する中で、米国、カナダ、オーストラリアおよび欧州諸国から、COVID-19の流行後より若年の神経性やせ症の患者数が経時的に増加していることが報告された。しかし、日本を含めたアジア諸国においては、神経性やせ症の若年患者数が経時的にどのように変化したかについては明らかになっていなかった。そこで本研究グループは、大規模診療情報データを用い、日本でのCOVID-19の流行前後における神経性やせ症の若年患者の状況を明らかにすることを目的として研究を行った。

本研究では、リアルワールドデータ株式会社から提供を受けた大規模診療データベースを用いた。同データベースに登録されたわが国の医療機関の小児科、精神科および心療内科において、神経性やせ症と新規に診断された7~19歳の患者を対象とした。日本では2020年3~5月の臨時休校以降、子どもの生活様式が大幅に変化していることから、2020年3月以前をCOVID-19の流行前、同年5月以降を流行後と定義し分割時系列解析を行い、COVID-19流行前後に神経性やせ症と診断された若年患者数の経時的な変化を比較した。

その結果、COVID-19の流行前に神経性やせ症と診断された7~19歳の患者数は41人(1.08人/月)で、流行後に診断された患者数は34人(1.48人/月)だった。男女別では、男性の流行前が1人(0.03人/月)で流行後が5人(0.22人/月)であるのに対して、女性では流行前は40人(1.05人/月)で流行後が29人(1.26人/月)と、男性の増加率の方が高いことがわかった。また、年齢別ではCOVID-19流行後に神経性やせ症と診断された7~14歳の患者数が15~19歳の患者数よりも多く、7~14歳の1カ月あたりの患者数は流行前では0.74人/月であったのに対し、流行後は1.13人/月で約1.5倍の増加を認めた。

分割時系列解析では、COVID-19の流行前の期間では神経性やせ症と診断された患者数は経時的に減少傾向だったが、流行後の期間では増加傾向を認めた(図1)。図1では月別の神経性やせ症と診断された患者数を示し(〇印)、2020年3月の縦の一点鎖線は臨時休校開始の時期を示している。実線は患者数の経時的な変化を示しているが、2020年3月以降、その実線の傾きはCOVID-19が起こらなかったと仮定したときの推計値(破線)よりも急になっている。

図1 神経性やせ症と診断された若年患者数の経時的変化

神経性やせ症と診断された若年患者数の経時的変化

一点鎖線は2020年3月の臨時休校開始の時期を示している。
(出典:東邦大学)

欧米諸国と同様にアジア地域に位置する日本においてもCOVID-19の流行後に若年者の神経性やせ症の患者数が増加していることから、これらの国々に共通するCOVID-19の流行そのものと、流行後の生活様式の変化が患者数増加に関与していると考えられる。また、欧米諸国と日本での結果が同様であったことから、これら国々の違いに基づく社会文化的な要因よりも、当人や家族および友人に関連するリスク要因(完璧主義や不安といった心理状態、および家族や友人らとの関係性の希薄化など)が、COVID-19流行後の神経性やせ症の発症により関与している可能性が考えられる。

将来、世界的な感染症が流行した場合や甚大な災害等が生じた場合、COVID-19流行時と同様に生活様式が急激に変わり、そのような有事の際に、上記のリスク要因を考慮した介入を早期から行うことで、若年者の神経性やせ症の発症予防につながり得ると考えられる。

プレスリリース

日本においても神経性やせ症の若年患者がCOVID-19流行後に増加に転じたことを実証(東邦大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Association of COVID-19 Pandemic with Newly Diagnosed Anorexia Nervosa Among Children and Adolescents in Japan」。〔Medicina. 2025 Mar 3;61(3):445〕
原文はこちら(MDPI)

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