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COVID-19後の日本人の食習慣の特徴 2.7万人の全国調査に基づくクラスター分析

日本国民の食習慣の特徴に関する最新の調査結果が報告された。慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの野村周平氏らが、一般社団法人Data for Social Transformation(DST)の協力のもとで行った全国規模でのweb調査の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。クラスター分析により、日本人の食事パターン、および、栄養や健康に関する態度は四つに分類され、クラスター間でウェルビーイングや社会的孤立の程度に差が認められるという。また、冷凍食品の位置付けが過去の報告から変化するなど、COVID-19パンデミック後の現在の日本人の食生活の実態が示されている。

COVID-19後の日本人の食習慣の特徴 2.7万人の全国調査に基づくクラスター分析

日本人の食習慣の実態とその関連因子を探る最新の研究

食生活は、食欲を満たすことはもちろん文化の一部であるとともに、健康の維持に欠かせない。野村氏が日本の推計をリードする世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study)の報告によると、障害調整生存年(disability-adjusted life years;DALYs)で評価される2019年時点の世界の健康損失の7.4%は非健康的な食生活によるもので、日本でも6.6%を占めるとされている。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより人々のライフスタイルが大きく変わり、慢性疾患の蔓延と感染症拡大の相互作用が「シンデミック」と表現されるなど、食習慣等への新たな対策の必要性が指摘されるようになった。

加えて、個人の食習慣はウェルビーイングや社会とのつながりとも関係のあることが知られるようになってきている。ただしそれらの点についての研究の多くは海外で行われたものであり、日本の食習慣や文化についての検討はあまり行われておらず、とくにCOVID-19パンデミック後にはまだほとんど研究報告がない。

以上を背景として野村氏らは、日本人の食習慣に関する最新の調査を行い、ウェルビーイングや社会的つながりなどとの関連についても検討を行った。

3万人近くの成人の食事パターンと栄養や健康に関する態度を調査

調査会社のパネルに登録している約500万人から、年齢・性別・地域が人口構成に一致するように配慮したうえで、20歳以上の成人2万7,905人を対象にアンケート調査を行った。アンケート実施期間は2024年2月1日からの14日間で、年齢・性別・地域ごとの割り当ての上限に達した時点で回答を締め切った。アンケートは主に、ふだんの食事パターン、および、栄養や健康に関する態度という2点に焦点を当て、それら以外に、BMI、職業、既往症、主観的健康観、教育歴、婚姻状況、収入、幸福度や社会とのつながり、ソーシャルメディア(SNS)の使用状況などに関する質問項目が設定されていた。
ふだんの食事パターンの評価:

ふだんの食事パターンは、食事多様性スコア(Dietary Variety Score;DVS)により評価した。DVSは、魚介類、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、根野菜、果物、肉類、卵、牛乳、油脂類、海藻という10種類の食品群について、過去7日間での摂取頻度を問い、「ほぼ毎日」を1点、その他は0点とスコア化する。
栄養や健康に関する態度の評価:

栄養や健康に関する態度は、塩分の摂取減、砂糖の摂取減、人工添加物の摂取減、飽和脂肪の摂取減、カロリー制限、ビタミンの摂取増、食物繊維の摂取増、不飽和脂肪の摂取増という8項目について、「全く重要でない」から「極めて重要」の7段階のリッカートスコアで回答を得た。

日本人を四つのクラスターに分類して比較

極端なBMI(中央値から四分位範囲の1.5倍以上乖離)を報告した751人を除外し、2万7,154人(97.3%)を解析対象とした。平均年齢は53.6±16.61歳、男性51.55%、BMI21.89±3.17で、60.3%が既婚者で45.6%が高等教育を受けており、56.4%が何らかの既往症を有していた。

研究では、食習慣の特徴をいくつかのパターンに分類するクラスター分析が行われた。この分析には、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)やOPTICS(Ordering Points To Identify the Clustering Structure)という、データ解析手法を用いた。その結果、ふだんの食事パターン、および、栄養や健康に関する態度は、それぞれ四つのクラスターに分類された。

ふだんの食事パターンによる四つのクラスター

ふだんの食事パターンのクラスター1は、肉や油脂類を毎日摂取していることで特徴付けられる人たちで、全体の3.1%を占めていた。クラスター2は牛乳を毎日摂取していることが特徴の人たちで全体の6.0%、クラスター3はバランスの良い、多様性の高い食事を維持している人たちで67.2%、クラスター4は特定の食事パターンをもたない、多様性の低い食事をとる人たちで23.7%を占めていた。

クラスター3はクラスター4に比べて年齢が高くて女性が多く、教育歴が長くて既婚者が多く、喫煙率は低い傾向にあった。またクラスター3の人は、ウェルビーイングが高く、社会的孤立が少なく、食事に関しては自炊の頻度とともに冷凍食品の利用頻度も高かった。加えてCOVID-19パンデミックをきっかけに、缶詰や冷凍食品などの保存食品の備蓄を増やしたこと、レシピ提案アプリの使用率が高いことも明らかになった。

栄養や健康に関する態度による四つのクラスター

栄養や健康に関する態度のクラスターAは、8項目の質問に対して最高または最低のリッカートスコアを選択するという、極端な回答を示す傾向のある人たちで、全体の5.5%を占めていた。クラスターBは多くの栄養素を「重要でない」と認識している人たちで全体の9.5%、クラスターCは多くの栄養素が「重要である」と認識している人たちで64.1%、クラスターDは、栄養素の重要性に関して中間的な立場の人たちで21.0%を占めていた。

クラスターCはクラスターDに比べると、上述のクラスター3とクラスター4とを比較した場合と同じような傾向が認められた。実際、クラスター3の70.3%はクラスターCに属し、クラスターCの73.4%がクラスター3に属していた。

個人の特徴を考慮し、栄養介入を含む多面的アプローチが重要

著者らは研究の限界点として、横断研究であり健康アウトカムとの関連を評価していないこと、自己申告に基づく解析であることなどを挙げたうえで、「我々の研究は、健康的な食事に対する社会経済的および社会文化的な障壁に対処するために、栄養教育とともに多面的な介入が重要であることを強調するものと言える。生活習慣病のリスク因子の抑制には、個人の傾向に配慮しカスタマイズされた公衆衛生戦略に基づいて、健康的な食習慣を後押ししていく必要があるだろう」と総括している。

冷凍食品は健康的な食生活の維持に不可欠な時代

ところで、本研究では前述のように、栄養素を重視しバランスの良い食生活を送っているクラスターで、冷凍食品の利用に関する行動が多く認められた。この点について論文の考察では、「この発見は、冷凍食品が生鮮食品に比べて劣るという考え方に一石を投じるものにと言える。冷凍食品の種類や栄養価、味が向上したこと、そして高齢化が進行し、現役世代では忙しい生活を送っていること、さらにCOVID-19パンデミックを経たことで、現在の日本人にとって冷凍食品は、健康的な食習慣を続けるための重要な要素となり得るかもしれない」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Characterizing Healthy Dietary Practices in Japan: Insights from a 2024 Nationwide Survey and Cluster Analysis」。〔Nutrients. 2024 May 8;16(10):1412〕
原文はこちら(MDPI)

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