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新型コロナのパンデミック中にスポーツをどのように再開したか 米国ユース選手50万人以上を調査

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生とともに、世界的に組織的なスポーツ活動は一時期ほぼ全く行われなくなった。現在ではかなりパンデミック以前の姿に回復しているが、再開に向けて行動を起こし始めた当初は、極めて慎重に安全性の確保が検討・模索されたと考えられる。この点について、米国の計50万人以上のユースアスリートが所属する、2千近くの高校およびユース団体を対象に行った調査の結果が報告されており、その一部を紹介する。

新型コロナのパンデミック中にスポーツをどのように再開したか 米国ユース選手50万人以上を調査

COVID-19パンデミックからの立ち直りを振り返る

未成年はCOVID-19罹患時の症状が成人に比べて軽い傾向のあることが、報告されている。この論文に引用されているデータによると、COVID-19罹患時の成人の死亡率は1.8%であるのに対して、小児では0.01%だという。小児は重症化リスクが低いとはいえ、スポーツの実践には多くの成人が関与し感染拡大の機会となり得る。パンデミック初期には、小児の重症化リスクが低いことが知られていなかったこともあり、ユースアスリートのスポーツ活動も他の多くの社会活動と同様に、厳格な対策が取られてきた。その後、長期に及んでいる厳格な感染防御措置が、人々のメンタルヘルス状態に悪影響を及ぼしていることの懸念が高まり、実際に小児や若年者の間でもそのような懸念が現実のものとなっていることを示す報告が相次いだ。

この間、COVID-19の治療に関する知見が徐々に蓄積されていき、感染防御措置によるマイナス面を考慮する余地が少しずつ増えていった。スポーツにおいても、感染リスクを考慮したうえで活動を再開するためのガイドラインが、複数の組織によって策定されるようになった。本論文の著者らは、このような流れが本格化する以前において、米国のユースアスリートがどのようにスポーツ活動を再開していったかを調査した。

調査に回答したほぼ100%の高校・団体がリスク軽減措置を実施

この調査は、2020年9~10月に、米国内の高校の運動部の監督、および、ユーススポーツ組織のコーチに回答を依頼して行われた。1,296の高校と584のユーススポーツ組織が回答し、それらには51万9,241人のユースアスリートが含まれていた。

高校からの回答は平均6.6±3.8競技について回答が寄せられ、ユーススポーツ組織は各団体1競技についての回答だった。高校からの回答の生徒数は平均626±66人で、ユーススポーツ組織のアスリート数は平均501±2,450(中央値160、四分位範囲160~332)人だった。

個別の感染リスク軽減措置の実施率は高校のほうが高い傾向

回答のあった高校、ユーススポーツ組織、計1,880件のうち、1,874件(99.7%)が正式な手続きを経たリスク軽減計画を実施していた。

リスク軽減のために用いた手法の種類は、高校が7.1±2.1、ユーススポーツ組織(以下、ユース組織)が6.3±2.4であり、高校のほうが有意に多かった(p<0.001)。より細かくみると、以下のように、いくつかのリスク軽減対策の実施率に有意差が認められ、若干の例外はあるものの高校のほうが実施率の高い傾向にあった。

症状のモニタリングは高校が93%、ユース組織が85%、現場での体温チェックは同順に66%、49%、プレー中のマスク着用は37%、23%、フィールド外でのマスク着用は81%、71%、スタッフの社会的距離の確保は81%、68%、フィールド外のアスリートの社会的距離の確保は83%、68%、消毒の頻度の増加は92%、70%であり、これらはいずれも高校のほうが実施率が有意に高かった(すべてp<0.001)。

反対に、トレーニングの時間帯をずらすという対策の実施率は、高校が41%、ユース組織が66%であり、ユース組織のほうが有意に高く、高校よりもスポーツ活動の実施時間を柔軟に変更できていたことが示された(p<0.001)。

感染防御対策に関する情報の入手経路

感染防御対策に関する情報の入手経路に関しては、スポーツ組織は高校よりも、全国のスポーツ運営団体からの情報に依存していたことがわかった(高校は10%、スポーツ組織は52%.p<0.001)。

一方、高校は地域の保健当局(同順に95%、89%.p<0.001)、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and prevention;CDC.77%、72%.p=0.02)、米国小児科学会(13%、9%.p=0.01)、米国スポーツ医学会(12%、7%.p=0.002)、全米アスレチックトレーナーズ協会(20%、6%.p<0.001)、全米高等学校連盟(72%、15%.p<0.001)の情報に基づいて判断していた割合が有意に高かった。

今後に備え、感染リスク軽減策に関する情報伝達手段の見直しが必要

この調査は、2020年秋という比較的パンデミックの早期の段階で実施された。著者によると、その時点ではスポーツ活動での感染リスク軽減措置に関する統一されたガイダンスはほとんど利用できなかったと、当時の状況を解説している。

示された調査結果に基づき、そのような状況での感染リスク軽減措置について、「米国の高校とユーススポーツ組織は、COVID-19のリスクを軽減するために幅広いリスク軽減措置を用いていたことがわかった。高校は平均してより多くのリスク軽減ツールを実施していた。ただしこの点は、利用可能なリソースと施設、地理的分布、参加者の年齢、または競技の種類の違いによるものである可能性もある。情報源としては、CDCおよび地域の保健当局の利用率が高く、専門的な医療機関からの情報の使用は比較的低かった」とまとめている。

また、「ユーススポーツ組織のアスレチックトレーナーは、各組織がどのようなリスク軽減戦略を採用しているのかを認識して、その実践に関与していく必要がある。専門医療機関は、青少年スポーツ関係者への情報の確実な伝達のために、追加の伝達手段を使用することを検討する必要がある」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「COVID-19 planning in United States Adolescent Sports: A Survey of 1880 Organizations Representing More Than 500 000 Youth Athletes」。〔J Athl Train. 2023 Jan 1;58(1):37-43〕
原文はこちら(National Athletic Trainers' Association)

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