炭水化物の質が高いほどスポーツが楽しく感じる? モチベーションの持続や燃え尽きリスク抑制の可能性
ふだん摂取している炭水化物食品の“質”の高さが、身体活動を楽しいと感じる強さと正相関し、燃え尽き症候群の程度とは逆相関するという研究結果が報告された。トルコで行われた、アスリート対象横断研究の報告。
炭水化物の質はスポーツを行う楽しみや燃え尽きリスクにも影響を及ぼすのか?
筋グリコーゲンの枯渇や低血糖防止のために、スポーツでは炭水化物の適切な摂取が重要であり、そのことによってパフォーマンスの向上も期待できる。パフォーマンスが向上すれば、スポーツを行うことの楽しさが高まり、バーンアウト(燃え尽き状態)になるようなリスクが低下すると考えられる。ただし、ひと口に炭水化物食品といっても、食物繊維の多寡、グリセミック・インデックス(GI)の高低、個体か液体かなどによって品質が異なる。
今回紹介する論文の著者らは、アスリートがふだん摂取している炭水化物食品の質の高さが、スポーツの楽しみや燃え尽きのリスクに関連している可能性を想定し、以下の検討を行った。
炭水化物の質、スポーツの楽しみ、燃え尽きリスクの評価方法について
この研究の解析対象は、トルコ国内の19~35歳のアスリート139人。1回60分以上のトレーニングを週3回以上行っていることを適格条件とし、それ以下の場合は除外された。男性が82.7%で、行っている競技はバレーボール54.7%、サッカー25.9%など。スポーツを行う目的はキャリアを伸ばすためが73.3%、健康のためが14.3%などだった。
食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)の回答に基づき、ふだん摂取している炭水化物食品について、食物繊維含有量、GI値、全粒穀物が占める割合、固形食品が占める割合という四つの項目を、それぞれ1~5点でスコア化し(GI値は高値であるほど低スコアと判定)、合計4~20点の範囲となる「炭水化物の質指数(Carbohydrate Quality Index;CQI)」を算出。CQIはスコアが高いほど、摂取している炭水化物の質が高いことを表す。
スポーツを行うことを楽しいと捉えているか否かは、身体活動の楽しさ尺度(Physical Activity Enjoyment Scale;PACES)で評価した。PACESは8項目の質問からなり、1~7点で回答を得て、合計8~56点にスコア化する。スコアが高いほど身体活動を楽しいと感じていることを表す。
燃え尽き症候群のリスクについては、アスリートバーンアウト質問票(Athlete Burnout Questionnaire;ABQ)で評価した。ABQは13項目の質問からなり、合計15~65点にスコア化する。スコアが高いほど燃え尽き状態に近いことを表す。
炭水化物の質はスポーツの楽しみと正相関、燃え尽きレベルと逆相関
解析の結果、性別、行っている競技、および、スポーツの目的は、スポーツの楽しさ(PACES)や燃え尽きレベル(ABQ)と関連が認められなかった。
一方、炭水化物の質指数(CQI)の五分位で5群に分けた場合、第1五分位群(質の低い下位20%)はPACESが37.1±8.27、第5五分位群(質の高い上位20%)は同44.2±5.50であり、ふだん摂取している炭水化物食品の質が高いアスリートはスポーツを行うことを楽しいと感じていることがわかった。
同様の手法でCQIと燃え尽きレベル(ABQ)との関連を検討すると、第1五分位群はABQが27.0±8.87、第5五分位群は21.2±6.02であり、ふだん摂取している炭水化物食品の質が高いアスリートは燃え尽きレベルが低い傾向があったが、五分位群での比較では有意でなかった(p=0.093)。
CQIはPACESと正相関し、ABQとは逆相関
次に、炭水化物の質指数(CQI)と他の指標との相関を検討。
すると、スポーツの楽しさ(PACES)とは正相関し(r=0.290、p=0.001)、燃え尽きレベル(ABQ)とは逆相関することがわかった(r=-0.205、p=0.016)。
なお、そのほかには、全粒穀物の摂取量(r=0.676、p<0.001)、固形の炭水化物の摂取量(r=0.758、<0.001)、および、年齢(r=0.208、p=0.14)、BMI(r=0.197、p=0.020)と正相関し、精製穀物の摂取量(r=-0.417、<0.001)、液体の炭水化物の摂取量(r=-0.297、<0.001)、GI値(r=-0.665、<0.001)とは逆相関していた。
ABQスコアはCQIの独立した関連因子
続いて、炭水化物の質指数(CQI)を従属変数とする回帰分析を行うと、単変量解析でABQスコア(β=-0.207、p=0.014)、PACES(β=0.277、p=0.001)が有意な関連が認められ、多変量解析でもABQスコアは独立した関連因子として特定された(β=-1.126、p=0.004)。なお、PACESスコアについては、多変量解析の結果が論文に示されていない。また、研究の主題からは従属変数をCQIではなくABQやPACESとした解析の結果が気になるが、その点も触れられていない。
論文の結論として著者らは、「本研究が横断研究であるために因果関係は不明」と限界点を挙げたうえで、「アスリートは摂取している炭水化物の質が高いことで、身体活動の楽しみが増し、燃え尽き症候群のリスクが軽減される可能性のあることが示された。因果関係の検証のため、縦断研究やランダム化比較試験の実施が望まれる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Evaluation of the association of carbohydrate quality on enjoyment of physical activity and burnout in athletes」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025 Apr 21;17(1):87〕
原文はこちら(Springer Nature)