2023年のドーピング検査数は過去最高、違反疑いは2年連続増加 WADAがレポート公表
世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)は6月19日、2023年の検査数レポートを発表した。採取された総サンプル数は前年から12.5%増加し、COVID-19パンデミック以前も含めて過去最高となった。おもな内容は以下のとおり。
サンプル数が過去最高に
2023年に分析・報告されたサンプル総数 (尿、乾燥血液スポット〈dried blood spot;DBS〉など)は、2022年の25万6,770件から28万8,865件となり12.5%増加した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックのために急減した2020年よりも前も含めて、過去最高値となった。
2018年以降のサンプル数の推移は以下のとおり。2018年26万3,519件、19年27万8,047件(COVID-19パンデミック前の最高値)、2020年14万9,758件、21年24万1,430件、22年25万6,769件、23年28万8,865件(過去最高値)。
なお、日本の2023年の総サンプル数は1万355件と報告されている。
違反が疑われる分析結果(AAF)の割合(%AAF)が上昇
アンチ・ドーピング規則違反が疑われる分析結果(adverse analytical finding;AAF)の割合(%AAF)は0.80%であり、前年の0.77%から3.5%増加した。2021年に0.65%だったことから、2年続々の上昇となった。
2018年以降の%AAFの推移は以下のとおり。2018年1.05%、19年0.97%、20年0.67%、21年0.65%、22年0.77%、23年0.80%。
なお、日本の2023年の%AAFは0.26%と報告されている。
成長ホルモン放出因子(GHRF)のAAFが増加
成長ホルモン放出因子(growth hormone-releasing factor;GHRF)のAAFの総数が増加し、かつ、サンプル数に占めるAAFの割合(%AAF)が上昇した。GHRFのAAFの総数は2021年に7件(%AAFは0.011%)まで低下していたが、それ以降2年連続の上昇となった。
2018年以降のGHRFのAAF件数(%AAF)の推移は以下のとおり。2018年21件(0.034%)、19年26件(0.039%)、20年13件(0.028%)、21年7件(0.011%)、22年14件(0.025%)、23年16件(0.027%)。
エリスロポエチン受容体拮抗薬(ERA)のAAFが増加
エリスロポエチン受容体拮抗薬(erythropoietin-receptor antagonist;ERA)の尿・血液サンプルのAAFの総数が増加し、かつ%AAFが上昇した。ERAのAAFの総数は2020年に32件(%AAFは0.059%)まで低下していたが、それ以降、増加傾向にある。
2018年以降のERAのAAF件数(%AAF)の推移は以下のとおり。2018年77件(0.146%)、19年92件(0.165%)、20年32件(0.085%)、21年66件(0.118%)、22年73件(0.131%)、23年117件(0.186%)。
WADA事務局長のOlivier Niggli氏は、「2023年度の年次サンプル数レポートは、世界中のWADAが認定・承認した検査機関によって分析・報告された、すべてのドーピング検査検体の概要の全体像を示している。今年も、アンチ・ドーピング検査の総数は、その他の注目すべき指標とともに、前年比で大幅に増加しパンデミック以前も含めて最高水準となった。これは、アンチ・ドーピング・コミュニティーの決意とクリーンなスポーツへの取り組みの証である。このレポートの発表は、世界中のアンチ・ドーピング機関(Anti-Doping Organization;ADO)とWADA認定検査機関の努力を称賛するものと言える。このレポートは関係者にとって重要なツールであり、そのデータと知見は、ADOが効果的なアンチ・ドーピング・プログラムを維持するための重要なリソースとなる」と述べている。
なお、本レポートには例年同様、ドーピング規則違反が疑われる分析結果(AAF)が最終的に、アンチ・ドーピング規則違反(anti-doping rule violations;ADRV)と判定されたかどうかまでは記載されていない。ADRVの判定には、調査、不服申し立ての審査などの手続きのため、調査に長期間を要することがある。ADRVレポートの最新版はまもなく発行される予定で、2024年の検査数レポートは2025年末までに公開される予定という。
関連情報
世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)
WADA publishes 2023 Testing Figures Report