超加工食品の摂取がフレイルリスクに関連 イタリアで16年以上の追跡期間を通してリスクが継続
超加工食品の摂取量の多さとフレイルリスクの高さとの間に有意な関連があり、この関連は一時点のみでなく、16年以上追跡しても有意性が維持されていたとする研究結果が報告された。著者らは、超加工食品の摂取が全身性炎症を惹起するといった経路で、フレイルにつながるのではないかと考察するとともに、ガイドライン策定の必要性、および超加工食品の定義付けの必要性にも言及している。

安価で美味なことの多いが炎症惹起性のある超加工食品は、フレイルのリスクも高める?
加齢による諸機能の低下のうち、可逆性のある段階はフレイルとされ、その早期介入により要介護状態への進展を抑制可能とされている。フレイルには運動不足や社会参加の欠如など、さまざまなリスク因子があり、その中でも食習慣は重要な修正可能な因子として位置付けられている。健康的な食習慣がフレイルリスクの低さと関連していることを示した観察研究は少なくない。この関連の機序として最も妥当な解釈の一つは、健康的な食生活とされる植物性食品は抗酸化作用や抗炎症作用を有しており、全身の慢性炎症を抑制することなどの影響が考えられる。
一方で、工業的に高度な加工を経て作られる超加工食品(ultra-processed foods;UPF)は、人々の嗜好にあわせて食べやすいように製品化され、かつ一般的に安価で流通しており、消費量が増大してきている。超加工食品は脂質含有量が高いがこと多く、またエネルギー密度も高いことから、肥満や2型糖尿病などの心血管代謝疾患のリスクを押し上げることが知られている。さらに横断研究からは、超加工食品の摂取がフレイルリスクと関連のあることも示されてきている。ただし、フレイルリスクに関して縦断的デザインで関連を明らかにした研究はなく、因果関係のエビデンスは限られている。
今回取り上げる論文の研究では、研究登録時のデータを用いた横断的解析に加え、経時的な変化も考慮した解析がなされており、超加工食品とフレイルリスクの関連の存在を支持する、より強力な知見と言える。
約千人の高齢者を16年間追跡し、超加工食品の摂取量とフレイルリスクの関連を検討
この研究は、イタリアで実施された、高齢者の歩行能力に影響を及ぼすリスク因子を前向きに検討した研究(InCHIANTI研究)の一環として行われた。解析対象は年齢65歳以上の高齢者938人(74±6.6歳、女性55.2%)で、摂取エネルギー量が極端な人(600kcal/日以下または4,000kcal/日以上)は除外されている。
超加工食品の摂取量は、ベースライン時に行った食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire;FFQ)を用いた調査結果とNOVA食品分類に基づいて推定した。またフレイルリスクについては、フレイル指数(frailty index;FI)を利用して評価した。なお、フレイル指数(FI)は、意図しない体重減少、座位行動、握力、歩行速度などから算出され、スコア範囲は0~1で、値が大きいほど高リスクであることを意味する。
横断的解析だけでなく、経時的な変化を考慮した解析でも、有意な関連が示される
InCHIANTI研究の参加者には、3年ごとに採血や採尿、FIの評価を含む詳細な検査が行われ追跡された。今回の研究では、そのベースラインデータを用いた横断的検討と、追跡中のフレイル指数(FI)の変化とベースラインでの超加工食品摂取量との関連を解析するという経時的な視点での検討が行われた。
ベースラインの横断的解析:超加工食品の摂取量が多いほどフレイルリスクが高い
ベースラインの超加工食品摂取量の四分位数に基づき、全体を4群に分類して比較すると、BMIと喫煙状況には有意差がなかったが、摂取量が多いほど高齢で男性が多く、また摂取エネルギー量が多くて教育歴が短いという有意差が認められた。フレイル指数(FI)は、全体平均が0.133で、第1四分位群(超加工食品の摂取量が少ない下位25%)は0.108、第2四分位群は0.140、第3四分位群0.138、第4四分位群(超加工食品の摂取量が多い上位25%)は0.146であり、群間に有意差がみられた。
社会人口学的因子や健康関連因子を調整後にも、FIの群間差は有意だった。具体的には第1四分位群を基準として、第2四分位群は0.022高値であり(p=0.004)、第3四分位群は0.014(p=0.071)、第4四分位群は0.026高値であって(p=0.001)、第3四分位群を除いて有意差がみられた。
経時的な解析:ベースラインの超加工食品摂取量は16年後のフレイルリスクとも関連
次に、ベースライン時点の超加工食品摂取量と、16.14年(中央値)後のフレイル指数(FI)との関連を検討。その結果、ベースラインデータの横断的解析と同様に、超加工食品の摂取量が多い群ほど、社会人口学的因子や健康関連因子を調整後にも、FIが有意に高いという関連が確認された。
具体的には第1四分位群を基準として、第2四分位群は0.015高く(p=0.045)、第3四分位群は0.010(p=0.197)、第4四分位群は0.022高値であって(p=0.006)、第3四分位群を除いて有意差がみられた。なお、超加工食品の摂取量と追跡期間の交互作用は有意でなかったことから、FIスコアの変化の幅は超加工食品の摂取量に基づく4群間で差がないと考えられた。
超加工食品に関するガイドライン策定と、超加工食品の定義の確立が急がれる
まとめると、横断的および経時的な変化を考慮した解析によって、超加工食品の摂取量が高齢者のフレイルリスクの増大に寄与する可能性が示唆された。
著者らは、「本研究結果は、超加工食品の摂取量を減らし、より栄養価の高い食品の選択を促す公衆衛生戦略の重要性を強調している。ただし、現時点で超加工食品の標準化された定義がないため、食品の誤分類が発生する可能性があることに注意を要する。また、食品の加工技術は、食品の安全性と食用性を確保するために必要なものであり、すべての加工食品を排除しようとするべきではない」と結論。また、「高齢者向けのより明確な栄養ガイドラインを策定するとともに、超加工食品の摂取による広範な健康への影響に関する研究を進めるために不可欠な、一貫性のある実用的な超加工食品の定義づけが喫緊の課題と言える」と付言している。
文献情報
原題のタイトルは、「Association Between Ultra-Processed Food Consumption Frequency and Frailty: Findings from the InCHIANTI Study of Aging」。〔Geriatrics (Basel). 2025 Sep 11;10(5):123〕
原文はこちら(MDPI)







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