スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

ふくらはぎ周囲長の変化から四肢筋量の増減を把握 サルコペニア改善の指標として期待

ふくらはぎ周囲長の変化から四肢筋量の増減を把握 サルコペニア改善の指標として期待

コストをかけず非侵襲にいつでも測定可能な「ふくらはぎ周囲長」の経時的な変化を把握することで、四肢骨格筋量の減少や増加を捉えられることが明らかになった。公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏、早稲田大学スポーツ科学学術院の谷澤薫平氏らの研究グループの研究によるもので、「Clinical Nutrition ESPEN」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが掲載された。著者らは本研究の成果を、このトピックに関する縦断的な研究として世界初の知見としたうえで、「ウエスト周囲長がメタボリックシンドローム改善の指標となるように、加齢等による筋肉量減少(サルコペニア)を改善しようとする際には、ふくらはぎ周囲長が指標となり得るのではないか」と述べている。

図1 研究結果の概要

ふくらはぎ周囲長の変化から四肢筋量の増減を把握 サルコペニア改善の指標として期待

(出典:明治安田厚生事業団)

いつでも測れる「ふくらはぎ周囲長」と、四肢骨格筋量の関係を縦断的に検討

ふくらはぎ周囲長が骨格筋量と相関することに関しては、既に複数の横断研究のエビデンスがあり、サルコペニアのスクリーニングにも用いられている。ただし、縦断研究のエビデンスはこれまでなく、骨格筋量の減少または増加を、ふくらはぎ周囲長の変化で把握できるのか否かは明らかでなかった。

骨格筋量の測定には専用の機器が必要でコストや手間もかかるため、測定機会は限られている。一方、ふくらはぎ周囲長は、簡便、非侵襲、低コスト、かつ自分自身でも測定可能。仮に、骨格筋量の変動をふくらはぎ周囲長で把握できるのであれば、サルコペニアのスクリーニングだけでなく、その後の介入効果の判定にも、ふくらはぎ周囲長を広く利用可能となる。さらに、日常生活において自分自身で測定することで、筋量維持・増進のための運動・食習慣に役立てられる可能性もある。

これらを背景として著者らは、早稲田大学の卒業生とその配偶者を対象として、運動や食事などの生活習慣が健康に及ぼす影響を長期間観察している「Waseda Alumni's Sports, Exercise, Daily Activity, Sedentariness and Health Study;WASEDA'S Health Study(早稲田大学校友を対象とした健康づくり研究)」のデータを用いて、縦断的な解析を行った。

ふくらはぎ周囲長の変化は、四肢骨格筋量(ASM)の変化と相関するか?

WASEDA'S Health Studyの参加者の中から、2015年3月~2024年9月に、ふくらはぎ周囲長と二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)による四肢筋量の測定が2回実施されていた、40~87歳の日本人成人227人(平均年齢は男性55±10歳、女性51±7歳)を解析対象とした。

左右のふくらはぎの周囲長を測定し、その平均を算出。平均8.0±0.4年の追跡で、ふくらはぎ周囲長の変化は、-0.1±1.2cmだった。一方、同期間の四肢骨格筋量(appendicular skeletal muscle mass;ASM)の変化は、-0.7±1.0kgだった。

ふくらはぎ周囲長とASMの変化は、性別・年齢・肥満の有無にかかわらず正相関

解析の結果、ふくらはぎ周囲長の変化量は、性別を問わず、ASMの変化量と正相関することが明らかになった(男性・女性ともにr=0.71)。得られたこの結果を基にした計算から、ふくらはぎ周囲長1.0cmの減少は、男性ではASM1.4kgの減少に相当し、女性では0.9kgの減少に相当すると考えられた。

なお、この相関をASMの部位別に検討した場合、ふくらはぎ周囲長の変化は上肢のASM(相関係数は男性0.51、女性0.38)に比べて、下肢のASM(同順に0.71、0.75)との相関のほうがより強く認められた。

図2 ふくらはぎ周囲長の変化と四肢筋量の変化の関係性(男女別)

ふくらはぎ周囲長の変化から四肢筋量の増減を把握 サルコペニア改善の指標として期待

(出典:明治安田厚生事業団)

年齢や肥満の有無でのサブグループ解析

次に、年齢で層別化した解析を実施。すると、60歳未満ではr=0.70、60歳以上ではr=0.67であり、年齢にかかわらず、両者の変化量は正相関することが確認された。

続いて肥満(DXA法による体脂肪率が男性は25%以上、女性は30%以上で定義)の有無で層別化した解析を行った結果、肥満群はr=0.72、非肥満群はr=0.69であって、やはりいずれの群でも両者の正相関が認められた。

ふくらはぎ周囲長をモニタリングしサルコペニアの「発見」と「改善」に役立てる

著者らは本研究が単一コホートでの解析結果であることなどを限界点として挙げている。そのうえで、「本研究はふくらはぎ周囲長の変化と筋量の変化の関係性を縦断的に解析した世界初の研究であり、年齢や肥満の有無にかかわらず、ふくらはぎ周囲長の変化と四肢筋量の変化との間には正の相関関係があることが示された。すなわち、ふくらはぎ周囲長の変化をモニタリングすることによって、誰もが容易に筋量の変化を推定できる可能性が示唆された」と述べている。

また、「ふくらはぎ周囲長の測定という手軽な手法で筋量変化を把握できれば、早期に筋量の衰えに気づくことができる。さらに、筋量の衰えを予防・改善するための筋力トレーニングなどの効果を、ふくらはぎ周囲長の変化から把握することができる」とし、ふくらはぎ周囲長を活用した新たな公衆衛生戦略の可能性を強調。さらに、「ウエスト周囲長が大きくなってきたら肥満を気にするのと同じように、ふくらはぎ周囲長が小さくなってきたら筋量減少を気にするということが、社会の共通認識として定着する日も近いのではないか」と期待を表している。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship between longitudinal changes in calf circumference and skeletal muscle mass」。〔Clin Nutr ESPEN. 2025 May 28:68:447-450〕
原文はこちら(Elsevier)

関連情報

公益財団法人明治安田厚生事業団/プレスリリース

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ