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スペイン栄養学会のスポーツにおける栄養戦略に関するコンセンサス 高炭水化物食・低炭水化物食など最新栄養戦略を総括

今回は、スペイン栄養学会が先ごろ「Nutrients」誌に掲載した、スポーツにおける栄養戦略に関する合意文書(コンセンサス ドキュメント)の一部を紹介する。結論として、すべてのアスリートに推奨可能な普遍性のある単一の食事戦略は存在しないと述べるとともに、高炭水化物食、低炭水化物食などの代表的な食事パターンについて、アスリートへの適用可能性と注意点、競技別の栄養戦略などが掲げられている。

スペイン栄養学会のスポーツにおける栄養戦略に関するコンセンサス 高炭水化物食・低炭水化物食など最新栄養戦略を総括

イントロダクション

ソーシャルメディアの普及により内容を簡略化したメッセージが好まれるようになり、栄養の領域でもそのような情報の人気が高まっている。そのようなメッセージはしばしば科学的エビデンスを欠いていることが多く、適切ではない食事・栄養戦略が用いられやすくなる。その結果として必須栄養素の不足、ホルモンバランスの乱れ、身体パフォーマンスの低下、摂食障害のリスク増大といった潜在的な負の影響の懸念が高まっている。

例えば、持久系スポーツのパフォーマンスの最適化に関してエビデンスが多数ある高炭水化物食に変わり、低炭水化物食やケトジェニック食の関心が高まっている。しかしその有効性の報告は一貫性がなく議論の余地が残されている。また断続的断食は体組成や代謝に対する人気の食事パターンとなっているが、スポーツへの適用可能性は不明点が多い。

他方、スポーツ栄養学はより個別化したアプローチが重視されるように進化してきている。競技の種類、競技レベル、シーズンにおけるタイミング、アスリート個々の生理学的および心理学的特性に基づいた戦略が模索されている。さらに、食の選択に対する文化的、倫理的、環境的な配慮も要求される傾向が強くなっている。

このような背景から、アスリートにパフォーマンス向上のための普遍的な栄養戦略を推奨することは困難であり、むしろパフォーマンスや健康に負の影響を及ぼさないアプローチを示すことが求められる。以上の考え方に基づき、スペイン栄養学会は、アスリート、コーチ、栄養士、管理栄養士、医療専門家向けの参考ガイドとして、本レビューを公開した。詳細な解説が加えられているが、本稿では表形式でまとめられている以下の情報のみを紹介する。

スポーツにおける各食事戦略の概要

高炭水化物食

推奨される状況
高い解糖系の需要、迅速な回復の必要性、長時間・高強度のトレーニングセッション。持久系スポーツやチームスポーツで多い。
潜在的メリット
グリコーゲン貯蔵量を最大化し、高強度運動のパフォーマンスと回復をサポートする。
潜在的リスク
エネルギー摂取量増大の調整が適切でない場合、低強度トレーニングには不必要となる。
留意点
セッションごとの負荷にあわせた摂取量とタイミングが重要。

低炭水化物食

推奨される状況
有酸素運動の基礎トレーニング、代謝の柔軟性向上、体脂肪を減少させる段階、超長距離持久力トレーニングの準備段階。
潜在的メリット
脂質酸化と代謝の柔軟性を高める。
潜在的リスク
嫌気性運動パフォーマンスの低下、微量栄養素不足のリスク。
留意点
短期間にとどめる。高強度運動期には避ける。適応状況をモニタリングする。

低炭水化物・高脂肪食

推奨される状況
低炭水化物食と同様だが、脂質摂取量が多く代謝変化がより顕著。
潜在的メリット
脂質酸化への依存度が高まる。特定の状況下では持久力向上につながる可能性がある。
潜在的リスク
高強度運動に対する耐性の低さ、運動継続の難しさ、栄養不良。
留意点
モニタリングによる慎重な評価。

ケトジェニック食

推奨される状況
減量、特定の代謝管理または準備段階。
潜在的メリット
脂質酸化を促進し、体脂肪を減少させ、炎症を軽減する可能性がある。
潜在的リスク
高強度運動パフォーマンスの低下、消化管障害、栄養不良を惹起し得る。
留意点
短期間適用する。バイオマーカーを用いたモニタリングが必要。

断続的断食

推奨される状況
体組成の改善、代謝健康の改善。レクリエーションアスリートまたはオフシーズンに適用。
潜在的メリット
体脂肪の減少、代謝マーカーの改善、インスリン感受性の向上。
潜在的リスク
除脂肪体重の減少、高負荷トレーニングに対する耐性の低下。
留意点
個々の状況に合わせて調整。競技期間中や高強度トレーニング期間中は避ける。

ベジタリアン/ビーガン食

推奨される状況
心血管の健康、倫理面・持続可能性の動機がある場合、体系的な長期計画。
潜在的メリット
パフォーマンスとの両立性が高く、心血管疾患のリスクを低減する。
潜在的リスク
ビタミンB12、鉄分、ω3脂肪酸の不足。エネルギー密度の低さ。継続可能性はさまざま。
留意点
高品質のタンパク質を摂取し、主要栄養素摂取量をモニタリング。必要に応じてサプリメントを使用。

旧石器時代食(パレオダイエット)

推奨される状況
体組成の改善、血糖管理。オフシーズンに適用。
潜在的メリット
栄養価の高い食品。血糖値のコントロールをサポートする。
潜在的リスク
炭水化物摂取量、カルシウム、ビタミンDの不足。
留意点
高強度トレーニング期間中は避ける。個々の状況に合わせて計画を立てる。

炭水化物摂取量の周期的調整(carbohydrate periodization)

推奨される状況
セッション間で炭水化物の利用可能性を調節することにより、代謝適応を促進する。
潜在的メリット
代謝効率と基質利用の柔軟性を向上させる。
潜在的リスク
複雑であり、誤った方法では過度の疲労を引き起こす恐れ。
留意点
特定のセッション(低負荷トレーニング日)で使用し、高負荷トレーニング日と交互に使用する。

スポーツカテゴリーごとの各食事戦略の適用可能性

持久系競技

高炭水化物食
とくに推奨される。グリコーゲンを最大限に活用し、長時間にわたる高強度運動をサポートする。
低炭水化物食
基礎トレーニングや脂肪燃焼促進には有効だが、競技期には適していない。
低炭水化物・高脂肪食
超長距離競技における潜在的なメリット。長時間の競技中に炭水化物への依存度を低減する。
ケトジェニック食
極限の持久力トレーニングや減量期には効果的だが、競技会直前には推奨されない。
断続的断食
低強度フェーズでの使用が可能。エネルギー供給状況をモニタリングする。
ベジタリアン/ビーガン食
適切なエネルギーと栄養素の摂取計画を立てれば適しており、心血管系の健康をサポートする。
旧石器時代食(パレオダイエット)
血糖コントロールと体組成の改善に効果があるが、高強度の運動には炭水化物の摂取量が不十分な場合がある。
炭水化物摂取量の周期的調整(carbohydrate periodization)
代謝適応を促進する強力なエビデンスがあり、幅広いスポーツカテゴリーに適用可能。

パワー系競技

高炭水化物食
高負荷トレーニングの日には有効だが、最大努力時にはそれほど重要ではない。
低炭水化物食
効果は限定的であり、高強度または瞬発的なパワーを阻害する可能性がある。
低炭水化物・高脂肪食
推奨されない。嫌気性代謝とリン酸分解酵素系に悪影響を及ぼす。
ケトジェニック食
パワーが低下するため、推奨されない。
断続的断食
筋力向上効果の低下や回復力の低下のリスク。
ベジタリアン/ビーガン食
筋力トレーニングに適用は可能だが、タンパク質の品質と鉄分・ビタミンB12の摂取量が管理されている必要がある。
旧石器時代食
オフシーズン中は許容可能だが、パワー系トレーニングに必要なグリコーゲン供給量が不足する可能性がある。
炭水化物摂取量の周期的調整
トレーニング刺激を最適化するのに役立つ。極めて高強度のトレーニングを行う日は、高炭水化物摂取とする。

団体競技

高炭水化物食
試合日や、繰り返しスプリントが必要となる過密なスケジュールに推奨される。
低炭水化物食
加速やスプリントは代謝コストが高いため、推奨されない。
低炭水化物・高脂肪食
断続的な高強度負荷のため、フィット感が良くない。
ケトジェニック食
不適切。高強度パフォーマンスを低下させる。
断続的断食
長時間の絶食を伴う午後/夕方のセッションでは、パフォーマンスが低下する可能性がある。
ベジタリアン/ビーガン食
エネルギー摂取量がトレーニングの要求を満たしている場合には適切。
旧石器時代食
炭水化物摂取が制限されるため、シーズン中は推奨されない。
炭水化物摂取量の周期的調整
高負荷と低負荷を交互に行うトレーニングに最適。

スプリント競技

高炭水化物食
反復スプリントパフォーマンスをサポートし、試合前の準備に役立つ。
低炭水化物食
一般的に、スプリント競技には対応していない。
低炭水化物・高脂肪食
スプリントランナーには禁忌。
ケトジェニック食
禁忌。最大パワーとスプリント速度を低下させる。
断続的断食
推奨されない。エネルギー不足は神経筋機能に悪影響を及ぼす。
ベジタリアン/ビーガン食
タンパク質摂取のタイミングを最適化すれば有効。クレアチンやβ-アラニンのサプリメント摂取を推奨。
旧石器時代食
スプリント競技のエネルギー補給には通常不十分。
炭水化物摂取量の周期的調整
スプリントセッション前後のグリコーゲン最適化をサポートする。

体重別階級競技

高炭水化物食
慎重なエネルギー管理が必要であり、期間設定が適切でないと体重が増加する可能性がある。
低炭水化物食
短期的な減量に役立つ可能性があるが、疲労を注意深く観察する。
低炭水化物・高脂肪食
減量期に役立つ可能性があるが、パフォーマンス低下のリスクもある。
ケトジェニック食
短期間の急速な減量を目的とする場合は、専門家の監督下で適用可能。
断続的断食
専門家の監督下であれば、短期間の減量期間に検討される可能性がある。
ベジタリアン/ビーガン食
個別プランニングに適しており、タンパク質摂取に留意する。
旧石器時代食
減量期に有効。カルシウムとビタミンDの摂取量を確保。
炭水化物摂取量の周期的調整
体重目標を維持しながら、柔軟なエネルギー供給を可能にする。

審美系競技

高炭水化物食
摂取量を適切に管理すれば適用可能だが、手法を誤るとエネルギー過剰摂取のリスクがある。
低炭水化物食
トレーニングの質を低下させ、自覚的運動強度を高める可能性がある。
低炭水化物・高脂肪食
高強度、高跳躍、高出力が求められるため、適していない。
ケトジェニック食
疲労感を増大させ、除脂肪体重を減少させる可能性があるため、推奨されない。
断続的断食
エネルギー供給不足およびRED-S(スポーツにおける相対的エネルギー不足)のリスクがあるため、注意が必要。
ベジタリアン/ビーガン食
一般的な選択肢の一つ。鉄分、ビタミンB12、ω3脂肪酸のモニタリングが必要。
旧石器時代食
体脂肪を減らすという目標達成に役立つ可能性があるが、栄養不良のリスクもある。
炭水化物摂取量の周期的調整
エネルギー供給が確保されている場合に適している。

文献情報

原題のタイトルは、「Consensus Document of the Spanish Nutrition Society (SEÑ) on Nutritional Strategies in Sports」。〔Nutrients. 2025 Dec 11;17(24):3862〕
原文はこちら(MDPI)

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