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格闘技選手の急速減量が免疫系に及ぼす影響、感染症や回復遅延につながる可能性 系統的レビューに基づく推奨

格闘技選手の急速な減量が免疫系に及ぼす影響をシステマティックレビューに基づき総括した論文を紹介する。韓国の研究者によるもので、具体的な推奨項目も示されている。

格闘技選手の急速減量が免疫系に及ぼす影響、感染症や回復遅延につながる可能性 系統的レビューに基づく推奨

免疫機能を維持しパフォーマンスを最適化するアプローチの模索

格闘技選手の多くが、試合における優位性を得るために急速な減量(rapid weight loss;RWL)を行う。このRWLは免疫学的に大きなストレスを与え、自然免疫と獲得免疫の双方の機能を低下させる可能性が報告されている。とくに、体重の減少幅と減少速度が重要な決定要因と考えられている。一方で段階的な体重管理、栄養の最適化、バイオマーカーのモニタリングなど、エビデンスに基づいた戦略により、免疫抑制が軽減される可能性もある。今回紹介する論文の研究は、格闘技特有の減量プロトコルにおけるギャップを明らかにし、免疫機能を維持しつつパフォーマンスを最適化するための統合的なアプローチを提案している。

著者は、システマティックレビューとメタ解析の報告に関するガイドライン(PRISMA)に準拠し、PubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarという四つの文献データベースを用いて、2000年1月~2025年9月に収載された論文を対象とする検索を行った。検索キーワードは、急速な減量、減量、格闘技、テコンドー、柔道、レスリング、免疫応答、サイトカイン、ナチュラルキラー(natural killer;NK)細胞、分泌型免疫グロブリンA(secretory immunoglobulin A;sIgA)、炎症などを用いた。

包括基準は、現役の格闘技(テコンドー、柔道、レスリング、ボクシングなど)の選手を対象として、RWLプロトコルへの曝露(通常は7日以内の期間で体重の3%以上の減少で定義)による免疫機能パラメーター(直接的に数値化される測定値としての免疫細胞数、サイトカインプロファイル、粘膜免疫マーカー、および関連する生体分子指標から推測される指標)への影響を検討し、査読システムのあるジャーナルに掲載された英語で執筆されている論文。除外基準は、減量期間が長期(4週間以上)の研究、非アスリート集団を対象とした研究、査読を受けていない文献など。

一次検索で278報がヒット。重複等を削除後の187報を2名の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施し91報に絞り込み、全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。

抽出された研究報告の特徴

最終的に日本からの3報を含む10報が適格と判断された。それらの研究の対象選手は、テコンドーが5件、柔道が4件、総合格闘技が1件であり、8件は男性選手、2件(いずれもテコンドー)は女性選手を対象に行われていた。

論文では10報の報告に基づき、急速な減量(RWL)による免疫能低下のメカニズムが総括されている。具体的には、厳格な摂取エネルギー制限や脱水および集中的なトレーニングによって、視床下部-下垂体-副腎(hypothalamic–pituitary–adrenal;HPA)軸が活性化され、コルチゾール上昇に伴い自然免疫と獲得免疫が抑制されること、それに伴う変化として、リンパ球増殖、NK細胞の細胞傷害性低下、好中球の貪食能低下、sIgA分泌低下、IL-6、TNF-α、CRPの上昇などの急性期反応が生じること、そして試合後にも免疫抑制状態が持続し上気道感染症のリスクが高まり回復が遅れることなどが解説されている。

このようなメカニズムの解説に続き、考察において「実践的な意味合いとエビデンスに基づいた戦略」として以下のようにまとめられている。

実践的な意味合いとエビデンスに基づいた戦略

統合的アプローチの第一の柱は、減量プロセスの期間設定と言える。急激で厳しい摂取制限に頼るのではなく、アスリートは少なくとも2週間かけて徐々に体重を減らす構造化された計画を採用すべき。

第二の柱は栄養の最適化である。減量期間中は、総エネルギー摂取量を10kcal/kg/日以上に維持することが推奨される。タンパク質の摂取量は、免疫グロブリンの合成をサポートし、体タンパク質の異化を抑制するために、理想的には1.4~2.0g/kg/日を維持する必要がある。さらに炭水化物を5~7g/kg/日確保することで、好中球とNK細胞の機能を維持できる。ω3脂肪酸(EPA/DHA 3g/日)とビタミンD3(2,000IU/日)のサプリメントは、抗炎症性サイトカインの発現を促進し、制御性T細胞を増やす可能性がある。そのほかに、ビタミンC、ビタミンE、セレン、亜鉛などの微量栄養素に関する一定のエビデンスがみられる。

水分補給戦略は、体重管理のさまざまな段階に合わせて慎重に周期化する必要がある。競技前のテーパリング中は、十分な水分(例えば26mL/kg)と適切なナトリウム(約3.2g/L)を摂取することが、血漿量の維持と腎臓クリアランスのサポートに役立つ可能性がある。

また、バイオマーカーのモニタリングにより、データに連動して個別化した介入戦略が可能になる。唾液コルチゾール、sIgA、IL-6、CRP、CD4/CD8比、制御性T細胞などの評価により、有害な傾向を早期に検出可能。それらの測定結果が閾値から外れた場合は、免疫学的回復力と最適なパフォーマンスを確保するために、減量の一時停止、カロリー摂取量の増加、高強度トレーニングの延期などの調整を検討する必要がある。

統合的な推奨事項

減量戦略

週あたりの減量ペースを総体重の1%未満にするべき。この段階的なアプローチにより、代謝と免疫系の適応が可能になり、急速な減量でよく見られる異化ストレス(HPA軸の活性化)を最小限に抑えることができる。

競技直前の72時間で体重を5%以上減らすことを目指すことは、免疫学的リスクを著しく高める。リンパ球機能とsIgAレベルの著しい低下が確認されている。そのようなRWLプロトコルは厳格に避けるべき。

栄養摂取戦略

栄養介入においては、免疫細胞にエネルギーを供給し、腸管バリア機能を維持するために、十分な基質供給を確保することを最優先事項としなければならない。

エネルギー制限中であっても、グリコーゲン貯蔵量を保護し、コルチゾールの過剰な上昇を防ぐために、最小限の炭水化物(5g/kg/日)を維持する必要がある。また、計量後48時間は免疫回復にとって重要。グリコーゲンと免疫細胞の回復を促進するために、計量直後に炭水化物ローディング(例えば8~10g/kg/日)を開始する。

除脂肪体重の減少を防ぎ、免疫細胞の合成に必要なアミノ酸(BCAAなど)を供給するためには、タンパク質を一定量(1.4~2.0g/kg/日)摂取することが不可欠。さらに、ビタミンC、E、亜鉛など、免疫機能に重要な微量栄養素にも注意を払う必要があり、食事からの摂取が不十分な場合はサプリメントで補う。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Rapid Weight Loss on the Immune System in Combat Sports Athletes: A Systematic Review」。〔Int J Mol Sci. 2026 Jan 3;27(1):508〕
原文はこちら(MDPI)

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