食行動の変化は認知症のサインかもしれない 前頭側頭型認知症の全病型で高頻度の異常を確認 東北大学
「食」の変化が認知症のサインとして現れる可能性のあることが報告された。東北大学の研究によるもので、論文が「Journal of Neuropsychology」に掲載されるとともに、同大学からプレスリリースが発行された。前頭側頭型認知症のいずれの病型でも、発症からおおむね5年以内に、半数以上の症例で食行動変化が生じているという。

発表のポイント:過食などの変化を把握することが、円滑な診断や支援に繋がる
- 前頭側頭型認知症※1の症状における食行動変化※2は、従来知られていた「行動障害型前頭側頭型認知症(以下、行動障害型)」※3だけではなく、言語障害型である「進行性非流暢性失語」※4「意味性認知症」※5でも高頻度で出現することを明らかにした。
- 前頭側頭型認知症のいずれの病型でも、発症からおおむね5年以内に半数以上の症例で食行動変化が生じることが判明した。
- 食行動変化のうち過食タイプは「行動障害型」で出現しやすいこともわかった。こうした傾向を把握することで、より円滑な診断補助や介護者支援に繋がることが期待される。
※1 前頭側頭型認知症:大脳皮質の前頭葉および側頭葉を主体に萎縮と機能低下が進行する脳疾患。行動や情動の変化を主体とする「行動障害型前頭側頭型認知症」と、言語の障害が生じる「進行性非流暢性失語」「意味性認知症」の三つに分類される。
※2 食行動変化:食事の内容や行動習慣に現れる変化のこと。食欲が増加あるいは低下したり、特定の食べ物を過剰に好むようになったり、食事の時間や食べる順序にこだわりが見られる、といったものが含まれる。
※3 行動障害型前頭側頭型認知症:社会性の異常や人格的変化のほか、異常行動や食行動変化が目立ってくるタイプ。言語的な異常は比較的軽度なことが多い。
※4 進行性非流暢性失語:発話がたどたどしくなる、文法的に単純化した文が多くなるなど、「しゃべる」機能の障害が主体となる病型。前頭側頭型認知症の中でも左前頭葉の障害が主体の群と考えられている。
※5 意味性認知症:物の名前が出にくくなる、言葉や物の意味が分からなくなるなど、「意味」の障害が主体となる病型。左側頭葉の障害が主体の群と考えられている。
研究の概要:東北大学病院高次脳機能障害科のデータベースを解析
前頭側頭型認知症では、過食やこだわりなどの「食行動変化」が出現することがあり、これまで「行動障害型」の特徴とされてきた。一方で、言語障害型における行動面の変化については十分な検討がなされておらず、発症初期から出現するかどうかは明らかでなかった。
今回、東北大学の研究チームは、同大学病院高次脳機能障害科のデータベースから、前頭側頭型認知症58例の食行動変化を分析した。その結果、食行動変化は「行動障害型」だけでなく「言語障害型」でも高頻度で出現する症状であり、いずれの病型でも発症からおおむね5年以内に半数以上の症例で食行動変化が生じることがわかった。また、過食傾向は行動障害型で多いこともわかった。この知見は診断や介護者支援に役立つ可能性がある。
研究の詳細:前頭側頭型認知症58例のすべての病型で食行動が変化
研究の背景と経緯:言語障害が目立つ病型でも、食行動の変化は生じるのか?
認知症の一種である「前頭側頭型認知症」では、前頭葉や側頭葉で脳萎縮と機能低下が進行していく。この疾患は、主体となる症状によってさらに3病型に分類される。
行動や情動の異常が目立つ病型として「行動障害型」があり、言語障害が目立つ病型としては、発話と文法の障害が中心となる「進行性非流暢性失語」と、語彙と理解の障害が中心となる「意味性認知症」の2病型がある。言語障害型は近年では「原発性進行性失語」※6という症候群としても位置付けられている。
これまで、食べ過ぎや食のこだわりといった「食行動変化」は、主に行動障害型の特徴として知られてきた。しかし、言語障害が目立つ2病型の行動面の変化を調べた研究は少なく、こうした症状が初期から見られるのかどうかは、明確なデータがなかった。
※6 原発性進行性失語:神経変性疾患(異常タンパクの蓄積を伴いながら神経細胞が徐々に脱落していく疾患の総称)の中でも、失語症が初発症状かつ中心的な症状であるような一群を指す。近年では、原発性進行性失語がさまざまな認知症疾患と共通した病態機序を持つことも判明している。
研究の内容:前頭側頭型認知症と診断された人の食行動変化を分析
過去に東北大学病院高次脳機能障害科で診断がついた症例のデータベースから、前頭側頭型認知症58例の食行動変化を分析した(図1)。その結果、行動障害型前頭側頭型認知症は14例、進行性非流暢性失語は30例、意味性認知症は14例だった。
食行動変化は行動障害型で85.7%、言語障害型の2病型である進行性非流暢性失語で63.3%、意味性認知症で57.1%と、いずれの病型でも非常に頻度の高い症候であることがわかった。時系列の分析では、すべての病型で発症から2~3年の時期に食行動変化が出現し、5年以内には約半数の患者に認められるようになることがわかった。内訳の分析では、食欲の減少や嗜好性の変化には病型ごとの差がみられなかった一方で、過食の傾向は行動障害型でとくに多いことがわかった。
図1 前頭側頭型認知症の食行動変化

今後の展開:食行動変化は生活習慣病の悪化にも繋がりうる
前頭側頭型認知症における食行動変化は、従来から注目されていた行動障害型だけでなく、言語障害型でも出現しやすいことが明らかになった。食行動変化は、患者の生活習慣病の悪化などにも繋がりうるため、ときには医学的管理の上で重要な課題となる。今後こうした患者の臨床では、病初期の段階から食行動変化についてスクリーニングすることで、より円滑な診断補助や介護者への助言などの支援に繋がることが期待される。
プレスリリース
「食」の変化が認知症のサイン? -前頭側頭型認知症の行動障害型だけでなく言語障害型でも高頻度に出現-(東北大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Eating behaviour profiles across the frontotemporal dementia spectrum」。〔J Neuropsychol. 2026 Mar 30〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)







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