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アスリートの3〜4割がドーピングに関与している可能性 意図しないドーピングと健康リスクの実態

システマティックレビューに基づき、意図的/非意図的なドーピングの頻度やそれによる健康リスクを定量的に検討した研究報告を紹介する。著者はクロアチアの研究者。エビデンスに基づく栄養戦略を採用することが、そのようなリスクを回避し、かつパフォーマンスを向上させる道だと述べられている。

アスリートの3〜4割がドーピングに関与している可能性 意図しないドーピングと健康リスクの実態

ドーピングのリスクを栄養戦略で回避する

ドーピング規則違反に対する監視や罰則などの活動が、長年続けられている。長年その活動が続けられているということは、いまだドーピング規則違反がなくならないということでもある。ただし、規則違反の一部は意図せずに発生することも知られており、その大半はサプリメントとして流通しているパフォーマンス向上物質(performance-enhancing substances;PES)の中に紛れている禁止物質の摂取による。そのような混入は、製造工程での交差汚染、メーカーの意図的な隠ぺいのいずれでも発生する。

ドーピング規則違反が意図的やそうでないかにかかわらず、アスリートはなんらかの処分の対象とされ、また、健康リスクにもさらされる。疫学研究から、アナボリックステロイドの使用は心血管疾患リスクの高さと一貫した関連が認められている。

一方、適切な栄養戦略は、アスリートがPESを利用する主要な理由であるパフォーマンスの向上につながる。さらに、禁止物質を使用してしまうリスクの回避につながり、それとともに健康リスクの抑制にもつながる。

今回紹介する論文の研究は、このような一連のトピックについてシステマティックレビューを行い、定量的または定性的な検討を加えている。

2015年以降の文献1,320報から60報を抽出

システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)に準拠し、PubMed、Scopus、Web of Science、Cochraneデータベースに2015年から2025年11月に収載された報告を対象として、ドーピングの蔓延、心血管系アウトカム、スポーツ栄養、サプリメント規制に関連するキーワードを用いた検索を実施。査読済み論文、ポジションステートメント、規制に関する文書などを適格とした。

一次検索で1,255報がヒットし、これに規制当局の報告書や政策声明など65件の文書を追加すると、計1,320報となった。重複削除により1,080報となり、スクリーニングにより150報に絞り込み、それらを全文精査の対象とした。最終的に60報を解析対象として抽出し、31報は定量的な解析に利用された。

定量的な解析結果の統合

意図しないドーピングの頻度

定量的な解析が行われている報告を統合すると、エリートアスリートの30~45%が、キャリアの中で、何らかの形でドーピングに関与した可能性があることが示唆された。その主な要因が、サプリメントの汚染、または治療目的での薬剤の使用という、非意図的な経路であった。対照的に、公的なアンチ・ドーピング報告書では、確認された規則違反の約20~25%が非意図的なものと分類されている。

この差異は、自己申告による調査結果と裁定された違反という異なる尺度の違いによるものと考えられる。

パフォーマンス向上物質(PES)曝露の健康リスク

パフォーマンス向上物質(PES)曝露の臨床的影響を定量的に検討した研究から、アナボリックステロイドの使用は、不整脈または心筋梗塞のオッズ比(OR)が最大3.5(95%CI;2.7~4.3)高いことと関連していた。また、2015年以前に報告された高血圧との関連では、OR2.0~3.5と報告されていた。不整脈についてはOR2.5~3.5との報告がみられる。

近年ではオッズ比ではなくハザード比(HR)として示されるようになってきている。例えば不整脈リスクはHR2.26(1.53~3.32)という報告や、心筋梗塞はHR1.46(1.23~1.72)という報告、高血圧はHR1.78(1.40~2.10)と報告され、いずれも有意なリスク増大が示されている。

定性的検討~予防策としての栄養戦略

定性的には、意図しないドーピングの経路、心血管疾患リスクとの関連のメカニズム、規制や倫理面および法的な関連の総括とともに、予防策としての栄養戦略について述べられている。ここではその栄養戦略の部分のみを紹介する。

まず、最適な栄養は運動能力と心血管の健康の要であり、エビデンスに基づく食事介入は禁止物質への依存を減らしながら、持久力および回復力を高めることができる。

適切なタンパク質摂取量は筋タンパク質合成をサポートし、運動後の回復を促進する。適切な炭水化物摂取は、とくに長時間の競技中にグリコーゲンの可用性とVO2maxを最適化することがメタ解析によって裏付けられており、持久力パフォーマンスを8~12%向上させる。

電解質を含む適切な水分補給戦略は、運動中の不整脈を予防し心拍出量を維持する。また、脱水によるパフォーマンスの低下を予防する。ω3サプリメントは、安静時の心拍数を約3bpm低下させる。さらに、適切な食事により心血管疾患の主要なリスク因子である血清脂質に好ましい影響が生じる。

つまり、エビデンスに基づいた栄養戦略は、パフォーマンス向上物質(PES)に代わる安全な選択肢となり、パフォーマンスおよび心血管の健康を向上させる。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Forensic Perspective of Unintentional Doping, Cardiovascular Health, and the Role of Nutrition in Competitive Sports」。〔Nutrients. 2026 Feb 25;18(5):736〕
原文はこちら(MDPI)

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