スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2026 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

口腔衛生がスポーツパフォーマンス向上につながる可能性 学際的なオーバービュー

今回は、英国歯科医師会発行ジャーナル「British Dental Journal」に掲載された、口腔衛生とスポーツパフォーマンスに関する総説を紹介する。口の中の状態とパフォーマンスとの関連を検討したこれまでの研究をオーバービューするとともに、両者の関連のメカニズムを考察した内容。著者らは、たとえ無症状のアスリートであっても口腔衛生が重要であると述べている。

口腔衛生がスポーツパフォーマンス向上につながる可能性 学際的なオーバービュー

イントロダクション:口腔衛生はアスリートのパフォーマンスに関する修正可能な因子

スポーツのパフォーマンスは、身体的能力、テクニカルな要素、戦術眼、心理的スキル、および環境要因などの影響を受ける。これらのうち、パフォーマンスの最大化に必要とされる割合は競技によって異なるが、競技レベルが高まるほど、より多くの領域からのサポートの必要性が高まる。

現在、トップクラスのエリートアスリートの多くは、コーチ、スポーツドクター、理学療法士、スポーツ栄養士、心理学者などからなる学際的なチームのサポートを受けており、そのチームの一員として近年ではスポーツ歯科医も重要な役割を担うようになりつつある。

スポーツパフォーマンスの評価において、陸上や水泳などのタイムを競う競技は評価が容易であり、審美系競技や団体競技における個人のパフォーマンスの評価は困難であるという違いはあるが、いずれにおいても口腔衛生がパフォーマンスと関連していることが一貫して示されてきている。口腔衛生は、アスリートのパフォーマンスを向上し得る修正可能な因子の一つである。

これまでのエビデンス

システマティックレビューとメタ解析

計396人のアスリートを対象とした最近のシステマティックレビューとメタ解析では、歯周病と自己申告によるスポーツパフォーマンスの低下との間に、中程度の強さの関連が示された。パフォーマンス指標は研究によって異なるものの、歯周病はパフォーマンス低下と有意に関連していると結論づけられている。

別のレビューでは、アスリートと非アスリートの集団を対象に、口腔衛生と客観的なパフォーマンステストとの関係を評価している。対象とした11研究はいずれも質が高いものであった。これらのうち10件は口腔衛生とパフォーマンス指標(体力、バランス能力、心肺機能、認知機能)との間に統計的に有意な関連があると報告していた。体力は主に不正咬合、歯周病、根尖性歯周炎と関連していた。ただし、歯内の疾患のみでは関連がないという結果だった。

有酸素運動、無酸素運動、神経筋機能との関連

複数の研究が、口腔衛生不良がスポーツパフォーマンスのさまざまな側面に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。

例えばドイツのユースまたはシニア代表チームのメンバーにおいて、歯周炎の兆候がある選手はエルゴメーターで評価したVO2maxが低いこと(歯周病スクリーニングインデックス〈PSI〉3をカットオフ値として55.9±6.7 vs 59.3±7.0mL/分/kg、p=0.03)、最大パワーにも有意差があることが確認された。

同様に、トルコのアスリート(競技レベルは報告されていない)のう蝕、欠損、プラーク指数などが、敏捷性やスピードの点で有意な関連があることが報告されている。

口腔衛生は食事摂取量や自己申告によるパフォーマンスなどにも影響を与える

複数の横断研究から、口腔衛生状態と日常生活や自己申告によるパフォーマンスとの関連が示されている。それらへの影響として評価されたものには、疼痛、食事摂取や飲水の支障、生活の質への影響などが含まれている。ただしこれらの研究は横断研究であり主観的な評価に基づくといった方法論的な限界があり、エビデンスの強さは高いとは言えない。

考えられるメカニズム

炎症が回復に影響を与え、パフォーマンスを低下させる可能性

歯周病は慢性炎症である。重度の歯周病患者はC反応性タンパク質(CRP)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の血清レベルが高く、白血球、インターロイキン-6(IL-6)、IL-8、IL-1などのサイトカインレベルが高い。

このような全身性の慢性炎症は筋肉の生理機能と修復を阻害し、筋疲労を増大させ持久力に影響を与える可能性がある。また、ミトコンドリア機能を阻害することも示されている。これらの結果として、回復の遅延、パフォーマンスの低下が生じ得る。

栄養不良

栄養状態の最適化は回復力とパフォーマンス向上に重要な戦略であり、口腔衛生状態の不良、例えば食事中の疼痛や不快感などは、栄養状態に悪影響を及ぼす可能性がある。虫歯、歯周病、または口内炎のあるアスリートは、特定の食品(ナッツ類、生野菜、すっぱい果物など)を避けたり、栄養価の低い加工食品を選んだりする傾向のあることが知られている。

心理的要因

パフォーマンスを発揮するためには、自信が不可欠。しかし、口の中にトラブル(歯茎からの出血、歯の欠損、口臭など)があると、自信が低下してしまう可能性がある。他方で不安や抑うつなどが口腔衛生状態の悪化と関連のあることも報告されており、虫歯や歯周病などによる慢性的な痛みが不安を増大させたり、気分や意思決定能力を低下させたりする可能性もある。

現在の研究上の課題と今後の方向性

アスリートの健康、パフォーマンス、幸福のための重要な要素として、今後は口腔衛生への意識向上により重点を置くべきである。これには、アスリートに対する口腔衛生スクリーニングプロトコルの策定、効果的な予防戦略の検討、そしてより広範なアスリートの健康増進イニシアチブへの口腔衛生教育の組み込みが含まれる。

これらを総合的に推進することで、エビデンスに基づいたアプローチが促進され、結果としてスポーツパフォーマンスのさらなる向上につながる可能性がある。

文献情報

原典論文のタイトルは、「The influence of oral health on sports performance: an interdisciplinary perspective」。〔Br Dent J. 2026 Feb;240(4):277-283〕
原文はこちら(Springer Nature)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2026後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ