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歯列状態がフレイル重症度と関連し、食事の質がその関連を部分的に緩和 米国国民健康栄養調査

米国国民健康栄養調査のデータを解析した結果、高齢者において歯列状態が悪化しているほどフレイルの重症度が高いという関連があり、食事の質の高さがこの関連をわずかに緩和していることが明らかになった。英キングス・カレッジ・ロンドン歯学部および東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野の小宮山貴将氏らの研究によるもので、「Journal of Prosthodontic Research」に論文が掲載された。

歯列状態がフレイル重症度と関連し、食事の質がその関連を部分的に緩和 米国国民健康栄養調査

歯列の状態とフレイルとの関連の実態、その関連に対する食事の影響を調査

人口の高齢化によりフレイルの予防が、世界的な課題となっている。フレイルを促進する因子の一つとして口腔状態の悪化が挙げられ、反対に保護的に働く因子としては、運動や適切な栄養素摂取が挙げられる。これらは相互に影響しあい、例えば適切な栄養素の摂取には口腔状態が良好である必要があり、口腔状態の不良は栄養不良を介してフレイルへの進行や重症化につながると考えられている。

しかし、口腔状態やフレイル重症度、食生活を定量的な指標で同時に評価したうえで、それらの関連性を検討した研究は限られている。これを背景として小宮山氏らは、米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Surveys;NHANES)のデータを用いた解析を行った。

2011~18年のNHANESに参加した60歳以上、約7,000人のデータを横断的に解析

2011~18年に実施された4回のNHANES(同調査は2年サイクルで実施されている)の参加者、計3万9,156人のうち、フレイルリスクを調査するという目的から60歳以上の7,693人を絞り、さらにフレイル重症度および歯列状態に関するデータの欠落者を除外して、6,859人(年齢69.9±6.9歳、男性49.9%)を解析の対象とした。

フレイル重症度の評価

フレイルの重症度の評価には、49項目からなる「フレイル指数(Frailty Index;FI)」を用いた。FIは、認知機能、日常生活動作(ADL)、BMI、心血管代謝疾患、呼吸器疾患、腎機能、がん、抑うつなどを基に0~1の範囲で評価し、高値であるほどフレイル重症度が高いと判定する。本研究の対象の平均は0.24±0.15だった。

歯列状態の評価

歯列状態の評価には、「宮地の咬合三角」という指標を用いた。これは、残存歯数や咬合支持歯数(上下で噛み合う歯の数)などから、歯科治療の難易度を表すもの。A~Dの四つに分類され、Dは歯列状態が最も良くないことを意味する。本研究の対象は、A判定(軽度)が37.1%、B判定が23.6%、C判定が29.7%、D判定(重度)が9.6%だった。

また、宮地の咬合三角とは別に、残存歯数や入れ歯、インプラントなどの人工歯数といった咀嚼に使われている歯の数(機能歯数)も評価。本研究の対象は24.1±5.8本だった。

食事の質の評価

食事の質の評価には、米国農務省が開発した「健康食指数(Healthy Eating Index 2015;HEI-2015)」を用いた。HEI-2015は13種類の食品・栄養素の摂取量を基に、0~100点の範囲で評価し、高値であるほど健康的な食事であると評価する。本研究の対象の平均は58.1±13.5だった。

歯列状態が良くないほどフレイルの重症度が高い

これらの関連性は、調整因子の異なる3種類のモデルにより解析した。

モデル1は、年齢と性別を調整。モデル2は、モデル1に加えて民族、教育歴、婚姻状況、喫煙、収入、身体活動を調整。モデル3はさらにHEI-2015スコアを調整した。論文にはすべての結果が示されているが、ここではモデル2、モデル3の結果を紹介する。モデル2と3の結果を比べることで、歯列状態とフレイル重症度(FI)との関連に、食事の質(HEI-2015スコア)がどのような影響を及ぼしてるかをみることが可能となる。

歯列の状態とフレイル重症度の関係

まず、モデル2の解析結果をみると、歯列の状態(宮地の咬合三角)がA判定の群に比べて、B判定、C判定、D判定の群はいずれもフレイルが重症化しており、β値は同順に1.16(95%CI;1.09~1.23)、1.30(1.22~1.38)、1.27(1.16~1.39)だった(すべてp<0.001)。

また、機能歯数が多いほどフレイル重症度が低いという関連も認められた(β=0.985〈0.981~0.989〉、p<0.001)。さらに、食事の質(HEI-2015スコア)が高いほどフレイル重症度が低いという関連も認められた(β=0.994〈0.992~0.996〉、p<0.001)。

なお、年齢で層別化して解析した場合、より高齢な集団ではβ値は小さくなり、歯列状態とフレイル重症度(FI)との関連が減弱した。例えば80歳以上の層では、歯列の状態のB判定群のフレイル重症度はA判定群と有意差がなく、また機能歯数とFIの関連も非有意だった。

食事の質を調整因子に加えると、歯列状態とフレイル重症度との関連が弱まる

次に、調整因子に食事の質(HEI-2015スコア)を加えたモデル3の解析結果をみると、全体的に、わずかながら、歯列状態とフレイル重症度(FI)との関連が弱まる傾向がみられた。

具体的には、歯列の状態(宮地の咬合三角)がA判定の群を基準とするβ値が、B判定群1.15(1.08~1.22)、C判定群1.27(1.19~1.35)、D判定群1.25(1.14~1.37)であり、機能歯数との関連はβ=0.987(0.983~0.991)だった(すべてp<0.001)。

食事サポートや義歯の使用がフレイル予防と高齢者の健康問題の改善につながる可能性

著者らは本研究が反復横断研究であるNHANESのデータを解析したものであるため因果関係の考察が制限されること、および、フレイルの重症度が高いがために口腔衛生が不良になり歯列状態が悪化するという逆因果関係をみている可能性のあることを留意点として挙げている。

そのうえで研究の結果を、「歯列状態とフレイル指数(FI)で評価したフレイル重症度との間に相関関係が認められ、食事の質の高さがこの相関をわずかに弱めることが示された。また、歯列状態とフレイル重症度との相関は、加齢とともに減弱していた」と総括。縦断的研究での因果関係の検証の必要性を指摘しつつ、「義歯の使用などの機能的な嚙み合わせや健康的な食事を統合的にサポートすることが、高齢者の健康上の問題の改善につながる可能性が示唆される」と述べられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Association between dentition status and frailty: Findings from NHANES 2011-2018」。〔J Prosthodont Res. 2026 Apr 7〕
原文はこちら(J-STAGE)

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