20代の低体重・過体重は将来のHbA1cに影響を与える可能性 藤田医科大学
20代の体重履歴がその後のHbA1cに影響を与えることが明らかになった。男性と女性では、その影響が異なる可能性があるという。藤田医科大学の研究グループの成果であり、論文が「Nutrients」に掲載されるとともに、同大学からプレスリリースが発行された。

研究の概要:20代の低体重や過体重は後年のHbA1cと関連がある
藤田医科大学の研究グループは、20代の体重履歴がHbA1cの軌跡にどのような影響を与えるかを明らかにした。これまで、日本の若年女性において低体重状態は一般的であり、耐糖能障害(IGT)との関連が指摘されていたが、HbA1cの経時的推移との長期的な関連は明らかでなかった。
本研究では、2003年から2025年にかけて収集された藤田医科大学の健康診断データを解析し、20代の体重履歴がその後の成人期におけるHbA1cの推移と関連しているかどうかを検討した。20代で正常体重だった群(NW20s)、20代で1回以上低体重だった群(UW20s_ever)、20代で1回以上過体重だった群(OW20s_ever)に分類し、性別で層別化した線形混合効果モデルを用いて、HbA1cの推移を、Kaplan–Meier法およびCox回帰分析を用いて、HbA1cが初めて5.6%以上に到達するリスクを評価した。
2,923名が推移分析に含まれ、イベント発生までの解析には、研究開始時にHbA1cが5.6%以上だった170名を除いた2,753名が含まれた。20代の体重履歴は、性別特異的なHbA1cの推移と関連していた。OW20s_everは男女ともHbA1c値が一貫して高く、HbA1cの局所的な傾きは女性では35歳および45歳、男性では25歳で大きい傾向があった。一方で、UW20s_everは女性の25歳および35歳時に限ってNW20sより低いHbA1c値を示した。
補完的なイベント発生までの解析において、OW20s_everは男女ともにHbA1≧5.6%のリスク上昇と関連した。一方、UW20s_everは女性のみリスク低下と関連していた。20代の低体重および過体重歴は単なる鏡像的な曝露ではなく、後年のHbA1c調節に対して性依存的かつ非対称的な関連を有することが示唆された。
研究成果のポイント
- 20代で低体重と言われたことのある人(UW20s_ever)、20代で肥満と言われたことのある人(OW20s_ever)におけるHbA1cの推移、HbA1c≧5.6%のリスク上昇を調べた。
- OW20s_everは男女ともHbA1c値が一貫して高かったが、HbA1cの局所的な傾きは女性では35歳および45歳、男性では25歳で大きかった。
- UW20s_everは女性の25歳および35歳時に限って正常体重群より低いHbA1c値を示した。
- OW20s_everは男女ともにHbA1c≧5.6%のリスク上昇と関連した。一方、UW20s_everは女性のみリスク低下と関連していた。
- 男女で20代の低体重・肥満履歴がHbA1cへ及ぼす影響が異なることが示された。
研究の背景:若いころの体重の推移が将来のHbA1cに及ぼす影響は不明だった
シンデレラ体重という言葉があるように、若い女性の低体重は日本では頻度が高く、社会的な関心が高まっている。一部の学会でも低体重・低栄養症候群としてとりあげられているが、日本における実態は不明。
研究グループではこれまでに、若い低体重女性でビタミン欠乏を伴う頻度が高いことや、低体重女性では体重とは独立してリンパ球数と体脂肪率が関係しているといった、体脂肪の意義を報告してきた。さらに低体重女性の中でもBMI18~19付近の人が一番、腸内細菌の多様性に加え、食事の多様性も良好であることを報告した。そのため、ひとくくりに低体重といってもいくつかのサブグループに分かれるのではないかと考えられる。さらに、低体重の期間がいろいろな健康障害(今回はHbA1c高値)に影響すると考えられる。
これまで、肥満が糖代謝障害の主な原因であることは広く知られており、多くの縦断研究では、体重増加がHbA1c値および耐糖能障害の発症率の上昇と関連していることも報告されている。しかし、若年女性における「低体重」と糖代謝異常リスクとの関連の解釈は、用いる評価指標によって異なる場合がある。例えば、低体重の若年日本人女性に焦点を当てた報告では、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を用いて評価した耐糖能障害(IGT)の頻度が、正常体重女性よりも高いという報告がある。一方、一部の横断的データでは、HbA1cを指標とした場合、低体重の若年女性は正常体重女性と比べてHbA1c値に明確な差は示されていない。
OGTTは一定量のグルコース(成人は75g)を負荷するため、体格の小さい集団では相対的な負荷量が大きくなる可能性がある。さらに、OGTTは短期的な耐糖能を評価するのに対し、HbA1cはより長期間の平均血糖値を反映するため、OGTTに基づくIGTの所見とHbA1cベースの所見との間に乖離が生じることがある。また、これらの知見の多くは横断研究に基づいており、体型の違いが個人内で経時的なHbA1c変化(Trajectory)に与える影響についての検討は十分行われていなかった。
研究手法・研究成果:20代でのBMI高値/低値と後年HbA1cと関連は性別で異なる
本研究では、対象者を20代のBMI履歴に従って、(1)20代を通じて体重が正常範囲内にあった者(NW20s)、(2)20代のうち一度でも低体重であった者(UW20s_ever)、(3)20代のうち一度でも過体重であった者(OW20s_ever)――という三つのグループに分類した。研究グループの最近の知見は、若年成人期の低体重がしばしば正常体重下限近くに集中し、検査年度によって変動することを示唆している。したがって、履歴に基づく分類は、一時点の横断的な定義よりも若年成人の低体重に関する関連表現型をより適切に捉えられる可能性がある。
性別で層別化した後、推定周辺平均(EMMs)および局所傾きを用いてHbA1cの縦断的な推移を評価し、同じ研究枠組み内でKaplan–Meier法およびCox回帰分析を用いてHbA1c≧5.6%の初回発現までの期間も検討した。経過ベースおよび閾値ベースの分析を組み合わせることで、20代の体重履歴が後のHbA1c調節に対し、性依存的かつ非対称な関連を示すかどうかを明らかにすることを目指した。
女性では、UW20s_everに属する者の25歳および35歳時点でのHbA1cが、NW20sより有意に低く、またUW20s_everはHbA1c≧5.6%に対するCoxハザードもより低いことがわかった。対照的に、OW20s_everは女性・男性ともに高いHbA1c値と関連していた。
重要なことは、加齢に伴うパターンは性別で異なっており、男性ではOW20s_everのローカルスロープは主に25歳時点でNW20sより大きかったのに対し、女性ではOW20s_everのローカルスロープが高年齢でも大きいままだった。
結果のまとめを図に示す。
図1

図2

今後の展開:より多くの指標との関連の解析に期待
本研究の結果は、20代における低体重および過体重の履歴が単なる鏡像的な曝露ではなく、むしろ性依存性および非対称的にその後のHbA1c調節と関連していることを示唆している。とくに、20代の過体重の履歴は両性において将来のHbA1c上昇リスクの増加と関連し、低体重の履歴は女性に限ってHbA1c上昇リスクの低下と関連していた。これは、横断研究のみでは捉えられなかった新規の縦断的観点。
今後は、体組成、脂肪分布、月経やその他の生殖関連ホルモン情報を取り入れた大規模研究により、これらの性・年齢に関連した違いの基盤となるメカニズムの解明が必要となる。
プレスリリース
20代の低体重・肥満体重履歴が その後のHbA1cに与える影響を明らかに(藤田医科大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Sex-Dependent and Asymmetric Associations of Bodyweight History in the Twenties with Later HbA1c Trajectories in a Japanese Occupational Cohort」。〔Nutrients. 2026 May 12;18(10):1532〕
原文はこちら(MDPI)







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