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オーラルフレイルによるウェルビーイングの低下に、低栄養・抑うつ・社会的孤立が関与 板橋健康長寿縦断研究

オーラルフレイルに伴うウェルビーイング(生活の質・幸福感)の低下に、低栄養や抑うつ、社会的孤立が関与していることが報告された。北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野歯科公衆衛生学教室の岩崎正則氏らの研究によるもので、「Journal of Prosthodontic Research」に論文が掲載された。著者らは、オーラルフレイルのスクリーニングに食事栄養状態や社会的サポートに関する評価を組み合わせることで、より積極的な介入が必要な高齢者を早期に特定できる可能性があるとしている。

オーラルフレイルによるウェルビーイングの低下に、低栄養・抑うつ・社会的孤立が関与 板橋健康長寿縦断研究

オーラルフレイルとウェルビーイングの低下の関連をつなぐ因子はなにか?

オーラルフレイルは口腔機能が低下した状態と位置づけられており、低栄養・抑うつ・認知機能低下・身体的フレイルなど様々な健康問題との関連が報告されている。一方、オーラルフレイルとウェルビーイングの低下を結びつける因子やメカニズムについては、これまで十分に検討されてこなかった。

これを背景に岩崎氏らは、「板橋健康長寿縦断研究(板橋LSA)」のデータを用いた検討を実施。板橋LSAは東京都板橋区で進行中の観察コホート研究であり、本研究では2023年に登録された集団のデータを横断的に解析した。

調査項目について

オーラルフレイルの判定には、現在歯数(20本未満)、咀嚼困難、嚥下困難、口腔内の乾燥、構音障害という5項目の評価指標(5-item Oral Frailty Checklist;OF-5)を用い、5項目中2項目が該当する場合をオーラルフレイルとした。身体的フレイルの判定には、日本版Cardiovascular Health Study criteria(J-CHS基準)を用い、スコア3以上を身体的フレイルとした。

栄養状態は簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment–Short Form;MNA-SF)で評価し、スコア11点以下を低栄養とした。

その他、Mini-Mental State Examination(MMSE)23点以下を認知機能障害、5項目の老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale;GDS)2点以上を抑うつ状態、Lubben Social Network Scale(LSNS)12点未満を社会的孤立とした。ウェルビーイングの評価には、Philadelphia Geriatric Center Morale Scale(PGCMS)、Cantril Self-Anchoring Striving Scale(CSASS)という二つの指標を用いた。

交絡因子としては、年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、教育歴、居住形態(独居か否か)、世帯収入、およびチャールソン併存疾患指数を把握した。

70歳以上の地域在住高齢者のオーラルフレイル関連因子と媒介因子を検討

解析対象は、同区内の70歳以上の地域在住高齢者から無作為に抽出され、調査に参加しデータ欠落のない849人(75.8±3.4歳、男性59.2%)とした。この集団におけるオーラルフレイルの該当者率は40.2%、身体的フレイルは6.5%、低栄養は29.3%、抑うつは30.6%、認知機能障害は5.4%、社会的孤立は33.9%だった。

オーラルフレイルは、身体的フレイル、低栄養などと有意に関連

年齢や性別、教育歴など、前述の交絡因子を調整後、オーラルフレイルは、身体的フレイル(オッズ比〈OR〉2.50〈95%CI;1.37~4.56〉)、栄養不良(有病率比〈PR〉1.29〈1.05~1.60〉)、抑うつ(PR1.67〈1.36~2.05〉)、認知機能障害(OR2.40〈1.18~4.85〉)、社会的孤立(PR1.36〈1.13~1.63〉)と有意な関連が認められた。

また、身体的フレイル、栄養不良、抑うつ、社会的孤立はそれぞれ、ウェルビーイングの二つの指標(PGCMS、CSASS)のいずれもが有意に低いという関連があった。認知機能障害についてはPGCMSとは有意な関連がないが、CSASSの有意なスコア低下と関連していた。

オーラルフレイルとウェルビーイング低下をつなぐ経路に、低栄養・抑うつ・社会的孤立

次に、先行研究に基づいて構築した仮説的なパス図(オーラルフレイル→各評価項目→ウェルビーイング)を用い、一般化構造方程式モデリング(GSEM)により各経路の成立を検証した。その結果、PGCMSで評価したウェルビーイングについては、オーラルフレイルは栄養不良(b=-0.27〈-0.54~-0.01〉)および抑うつ(b=-1.35〈-1.96~-0.74〉)を経由する間接的な経路において有意な関連が示された。身体的フレイル、認知機能障害、社会的孤立を経由する経路では有意な関連は認められなかった。
CSASSで評価したウェルビーイングについては、抑うつ(b=-0.66〈-0.96~-0.36〉)および社会的孤立(b=-0.14〈-0.25~-0.03〉)を経由する経路で有意な関連が示された一方、身体的フレイル、栄養不良、認知機能障害を経由する経路では有意な関連は認められなかった。

オーラルフレイルのスクリーニングでは栄養状態の評価も重要

著者らは本研究のいくつかの限界点を挙げている。まず、対象が東京都板橋区在住の高齢者に限られており、農村部や他地域の高齢者への結果の一般化には慎重を要する。また、身体活動や睡眠の質など、今回評価していない要因が結果に影響している可能性(残余交絡)も否定できない。さらに、本研究は一時点のデータを用いた横断研究であるため、オーラルフレイルがウェルビーイングの低下を引き起こすのか、あるいはその逆の方向の関連が生じているのかについては、本研究のデータのみからは判断できない。

これらの限界点を踏まえたうえで著者らは、オーラルフレイルがウェルビーイングの低下と間接的に関連しており、その経路として栄養状態の悪化・抑うつ・社会的孤立が示唆されたとしている。この知見は、口腔の健康が健康的な加齢を支える重要な要素であることを改めて示すものである。また、オーラルフレイルのスクリーニングに栄養支援や社会的サポートの評価を組み合わせることで、より積極的な介入が必要な高齢者を早期に特定できる可能性があると結論づけている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Association between oral frailty and well-being in community-dwelling older adults in Japan」。〔J Prosthodont Res. 2026 May 23〕
原文はこちら(J-STAGE)

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