夏と冬で違う? 部活動の練習前後の食欲と空腹感の変化を国内大学女子バスケ選手で検討
女子大学生バスケットボール選手を対象に、夏季と冬季の2回にわたり、部活動の練習(以後、トレーニング)前後の食欲と空腹感などを調査した結果が報告された。夏季は冬季に比べて食欲と空腹感の相関が弱く、夕食の時間帯であるにもかかわらずアイスクリームなどの食事とは言えない食品への欲求が高まることなどが示されている。公立小松大学保健医療学部看護学科の髙木祐介氏らの研究によるもので、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に論文が掲載された。

アスリートの食欲や空腹感の季節差を探る
運動によるトレーニング後には、消耗したエネルギーや水分の補給、筋タンパク質・筋グリコーゲンの合成のための食事が欠かせない。しかし、トレーニングによる疲労のために空腹であっても食欲が生じないというアスリートも少なくない。
とくに、学生アスリートは、学業やアルバイトなどのため、トレーニング終了後にゆっくり食事を摂る時間がないことは多い。学生アスリートのトレーニング後の食欲を調査した先行研究からは、トレーニング終了の15分後から、時間経過とともに食欲が増大してくることが報告されており、しっかり食事を摂るためには十分な時間を確保する必要のあることが示唆されている。
ただし、これまでのところ、食欲と並び摂取量に影響を及ぼし得るもう一つの因子とされる空腹感については、十分に検討されていない。さらに、食欲がより低下しやすいと考えられる夏季において、冬季と比べて食欲と空腹感にどの程度の差は生じるのかを定量的に評価した報告もみられない。
これらを背景として髙木氏らは、女子学生アスリートを対象に、夏季と冬季の2回、トレーニング前後の食欲と空腹感、さらに、「いま食べたいと思うものとその理由」の変化を調査した。
調査対象と手法について
研究参加者は、単一大学の女子バスケットボール部員16人。喫煙歴や慢性疾患を有する学生は含まれていない。
夏季の調査は7月中の1日、冬季の調査は2月中の1日で、ともにバスケットボールのトレーニング日に実施した。トレーニングは両日ともに放課後の17~20時頃に行われた。当日の朝食と昼食の時間帯は一致させた。また、前日の睡眠時間は有意差がなかった。
食欲等の評価は、当日の昼食直後、トレーニング開始直前、トレーニング終了直後、終了15分後、同30分後という5時点で行った。評価には、100mmのビジュアルアナログスケール(visual analog scale;VAS)を用いた。
夏季の調査日の環境は、室内温度が34.6~39.3℃、湿度42.2~48.3%であり、16人の平均年齢は19.8±1.3歳だった。冬季の調査日の環境は同順に5.2~8.4℃、37.4~43.3%で、一部の学生の引退により参加者は10人に減少し、平均年齢は18.6±0.5歳だった。
トレーニング後の食欲の変化は夏季と冬季で差は少ないが、空腹感の変化は異なる
食欲・空腹感の変化とトレーニング後に食べたいもの
夏季の変化
夏季の食欲のVASの中央値は、トレーニング前が33、トレーニング終了直後が26、終了15分後が42、同30分後が60と推移し、トレーニング終了直後との比較で終了15分後と同30分後は有意に高値となった。
空腹感については同順に、34、55、66、67と推移し、トレーニング前との比較でトレーニング終了15分後と同30分後は有意に高値となった。トレーニング終了直後との比較では有意差がなかった。
食欲と空腹感との間に、中程度の有意な正の相関が認められた(r=0.50)。
夏季のトレーニング後には、食べたいものとして、アイスクリーム、冷たいジュース、冷たい麺類などが多く挙げられた。その理由としては、「暑いので冷たいものが食べたい」が多く、ほかには「空腹だが脂っこいものは食べられない」、「食べたくない」という理由がみられた。
冬季の変化
冬季の食欲は、トレーニング前が25、トレーニング終了直後も25、終了15分後が46、同30分後が73と推移した。トレーニング終了15分後の値はトレーニング終了直後より有意に高かった。また、トレーニング終了30分後の値は、トレーニング前、トレーニング終了直後、およびトレーニング終了15分後よりも有意に高かった。
空腹感については同順に、20、41、71、83と推移した。トレーニング終了15分後の値はトレーニング前、およびトレーニング終了直後よりも有意に高かった。また、トレーニング終了30分後の値は、トレーニング前、トレーニング終了直後、およびトレーニング終了15分後よりも有意に高かった。
食欲と空腹感との間に、有意な強い正の相関が認められた(r=0.88)。
冬季のトレーニング後に食べたいものとしては、ラーメン、カレーライスなどが多く挙げられた。その理由は、「強い空腹」、「寒いから」、「美味しい」などだった。
調査結果からの考察
夏季は冬季ほどトレーニング後の空腹感が増大しない
上記のように、季節にかかわらず、トレーニング終了の15分後に、トレーニング終了時点よりも食欲が上昇するという変化が観察された。一方、空腹感については、冬季は食欲と同様の変化が観察されたが、夏季の場合、トレーニング終了から15分以上経過しても顕著な増大がみられなかった。また、空腹感と食欲の相関が、夏季は冬季よりも弱かった。これらの相違から、季節特有の環境要因(暑さと寒さ)が空腹感に影響を与えることが示唆された。
このほか著者らは、夏季のトレーニング後の空腹感が冬季ほど上昇しなかった理由について、暑さのほかに、「トレーニング後の水分摂取量の増加によるものと考えられる。本研究では水分摂取量を測定していないため詳細な検討はできないが、夏季の水分摂取量が冬季よりも多かったことは明らかである」としている。さらに、「トレーニング後に摂取するスポーツドリンクの量が冬季よりも多くなり、血糖値がより上昇しやすくなることも、空腹感を抑制した可能性がある」と考察している。
夏季のトレーニング後に食べたものは「食事」とは言えない食品
トレーニング後に食べたものは、冷たい飲料が多く挙げられたが、冬季においては時間の経過とともに、食品が増える傾向が認められた。例えば、ラーメン、カレーライス、丼もの、白米などが挙げられた。
それに対して夏季のトレーニング後には、アイスクリームやゼリーなど、夕食に相当する食品とは言えないものが多くを占めていた。
研究の限界点と大学生対象研究のハードル
論文の結論は、「大学の運動部に所属する女子学生を対象とする調査の結果、トレーニング後の食欲は夏季・冬季のいずれも時間経過とともに有意に増大したが、空腹感は冬季のみ有意に増大していた。また、トレーニング後に食べたいものは、季節特有の環境要因(暑さや寒さ)に強く影響されていた」とまとめられている。
一方、研究の限界点として、学生の負担を考慮したため、水分摂取量や実際に摂取した食事、また、体温や血糖値、エネルギー消費量、睡眠時間・質など、食欲および空腹感の潜在的な関連因子を評価していないことを挙げ、今後の研究では、研究参加者に大きな負担をかけずにこれらを把握し得る方法を検討したいと述べている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Changes in Appetite, Hunger, and Desired Food Intake of the University Students Belonging to an Athletic Club before and after Practices in Summer and Winter」。〔J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2026;72(2):182-188〕
原文はこちら(J-STAGE)







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