コンタクトスポーツの運動部への入部後に生じる体重増加が健康リスクに? TG上昇や腸内細菌叢の変化などと関連
大学に入学後にコンタクトスポーツ(選手同士の直接的な接触を伴うスポーツ)の運動部に入部した1年生の体重の変化と、代謝性疾患のリスクマーカーや腸内細菌叢の変化との関連を解析した、名古屋大学総合保健体育科学センター/大学院教育発達科学研究科の田中憲子氏や元大学院生の平野功一郎氏らの研究結果が「Physiological Reports」に掲載された。入部後半年間での体重の増加と、血中のTG値の上昇、および一部の腸内細菌の存在比の変化が有意に相関することなどが報告されている。

体重変化と代謝リスク、腸内細菌叢の変化の関連を、縦断的なデザインで検討
コンタクトスポーツでは一般的に体重が重いほうが有利とされている。そのため、競技を始めたばかりの選手は、体重を増やす体づくりが必要とされる。一方、適正範囲を超える体重の増加は一般的に代謝性疾患のリスクを高める。アスリートの場合は高い運動量がそのリスク上昇を抑制する可能性があるものの、コンタクトスポーツを専門とする選手においてメタボリックシンドロームの有病率が高いことを示した報告もある。
また近年、腸内細菌叢の組成と健康リスクとの関連の研究が進み、アスリートのパフォーマンスを腸内細菌叢の組成と関連づけた研究も報告されている。ただし、コンタクトスポーツを専門とする選手の腸内細菌叢については、一般人よりも多様性が高いという報告がある一方で、反対に一般人の多様性の方が高いという報告もあり、一貫した結果が得られていない。一貫性欠如の一因として、対象者の競技レベルが異なることや、体重を増加させる過程において腸内細菌叢の組成が変化する可能性が考えられる。しかし、体重変化と腸内細菌叢の変化との関連を縦断的デザインで検証したエビデンスは少ない。
これらを背景として田中氏らは、大学に入学後にコンタクトスポーツの運動部に入部し体重増量を始めた1年生の男子学生、および運動習慣のない男子学生を対象として、半年間での体重変化と代謝リスクマーカーや腸内細菌叢の変化の関連を比較検討するという研究を行った。
コンタクトスポーツの運動部に入部した1年生と、運動習慣のない1年生を半年追跡
研究参加者は東海地方の大学の学生から募集された。アスリート群の適格条件は、入学後にコンタクトスポーツの運動部に入部した1年生の男子で、慢性疾患や喫煙習慣および整形外科的な支障がなく、過去2カ月以内に抗菌薬の処方を受けていないこととした。
この条件を満たした22人と、運動習慣のない対照群の学生10人(18.3±0.5歳、BMI 21.0±3.6 kg/m2)が、半年間の追跡調査を受けた。アスリート群の1人は一部の腸内細菌の存在比が平均から3標準偏差以上逸脱していたため解析から除外し、解析対象は21人(18.7±0.7歳、BMI 24.0±2.6 kg/m2)となった。なお、アスリート群の学生はアメリカンフットボール部、ラグビー部のいずれかに所属しており、週に5日、1日3時間以上の練習をしていた。
評価項目は、BMI、生体電気インピーダンス法による女子棒体重や体脂肪率、超音波画像診断法により評価した腹腔厚や上腕前後・大腿前後・腹部の筋厚ならびに皮下脂肪厚の総和、代謝関連リスクマーカー(血液検査値)、糞便検体を用いた腸内細菌の多様性および存在比、簡易型自記式食事歴質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)を用いた栄養素摂取量であった。ベースラインとその6カ月後の計2回、これらの項目を評価した。なお、アスリート群のベースライン測定は、運動部に入部後3カ月以内に実施した。
アスリート群の体重の変化は代謝リスクや腸内細菌叢の変化と関連がある
解析結果について、論文ではアスリート群および対照群ごとに各評価指標の前後比較、群間差、相関の有無などのデータが詳細に示されている。ここでは有意性が示された結果を中心に一部を紹介する。
把握されたデータの群間差、前後比較
体重・体組成の変化:アスリート群ではBMIとともに体脂肪率も有意に上昇
ベースラインにおいて、体重、BMI、ウエスト周囲長、除脂肪体重は対照群よりアスリート群が有意に高値であり、体脂肪率は有意差がなかった。6カ月後には、アスリート群においてこれらの指標はすべて有意に増加した。対照群には有意な変化がなく、体脂肪率も含め、群間に有意差が認められた。アスリート群のうち11人(52.3%)が、6カ月後に肥満(BMI: 25.0 kg/m2以上)に該当した。
代謝関連リスクマーカーの変化:アスリート群ではTGが有意に上昇
評価した空腹時血糖値、HbA1c、TG、総コレステロール(TC)、LDL-C、HDL-Cはすべて、ベースラインにおいては群間に有意差がなかった。また、アスリート群のうち1人(4.8%)のTGが基準値(150mg/dL)を超えていたことを除いて、すべて基準範囲内だった。6カ月後には、アスリート群のTGが有意に上昇し、対照群より有意に高値となった。また、アスリート群のうち3人(14.3%)のTGが基準値を超えていた。
腸内細菌叢の変化:アスリート群では多様性の指標が有意に低下
腸内細菌叢の多様性を表すシャノン指数は、ベースラインにおいては群間に有意差がなかったが、6カ月後にはアスリート群において有意に低下していた。また、アスリート群では2種類の門と1種類の属の存在比に有意な変化が観察された。対照群において存在比の有意な変化が認められたのは1種類の属のみであった。
栄養素摂取量の変化:主要栄養素のエネルギー比率には群間差がなく、半年間で有意な変化なし
エネルギー摂取量は、ベースラインと6カ月後のいずれも対照群よりアスリート群のほうが高値だった。主要栄養素のエネルギー比率は2時点のいずれも群間差が非有意であり、各群内の前後比較でも有意差がなかった。
体重の増加がTG上昇と有意に相関し、体組成の変化が腸内細菌の変化と相関
次に、アスリート群における体重・体組成の変化と、他の評価指標の変化との相関が検討された。
まず、体重の変化はTGの変化と有意な正相関を示した(rs=0.440)。また、筋厚の変化はLDL-Cの変化と有意に負相関していた(rs=-0.461)。ウエスト周囲長の変化と代謝リスクマーカーの変化との関連は非有意だった。
腸内細菌叢の変化との関連では、多様性の指標であるシャノン指数および門レベルの変化とは有意な関連がみられなかったものの、属レベルではいくつかの細菌の存在比の変化が、体重、ウエスト周囲長、筋厚などの変化と有意に相関していた。
栄養素摂取量の変化は、他の評価指標の変化と関連がみられなかった。
コンタクトスポーツの運動部の学生には、入部直後から栄養指導が必要な可能性
上記以外のデータも含めた考察として著者らは、アスリート群で認められた主要なポイントを、以下の3点にまとめている。
(1)ベースラインと比較し6カ月後には、体重、BMI、ウエスト周囲長、体脂肪率、腹腔厚、体重補正後の皮下脂肪厚、TGが有意に上昇したが、除脂肪体重や体重補正後の筋厚には有意な変化がなかった。
(2)ベースラインと比較し6カ月後には、腸内細菌叢の多様性の低下が示唆された。
(3)ベースラインからの体重の変化は、TGおよび一部の腸内細菌の存在比の変化と有意に相関していた。
研究の限界点としては、サンプルサイズが十分ではない可能性、女性アスリートが含まれていないこと、サプリメントの摂取量が正確に評価されていないことなどが挙げられている。そのうえで筆者らは、「コンタクトスポーツの運動部に入部した後の体重増加は、TGや腸内細菌叢の変化と有意に関連していた。このような運動部に入部した新入生には、早期から栄養指導が必要かもしれない」と総括している。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Changes in metabolic risk factors and gut microbiota during weight gain in male first-year college athletes」。〔Physiol Rep. 2026 May;14(9):e70909〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)







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