100mスプリントの反復において、シトルリンマレート摂取が反復スプリントパフォーマンスをサポートする可能性
100mスプリントを繰り返し行うという状況で、シトルリンマレート摂取が反復スプリントパフォーマンスをサポートする可能性を示唆するデータが報告された。久留米大学人間健康学部スポーツ医科学科の山中亮氏らが行った、無作為化二重盲検クロスオーバー試験の結果であり、2回目の走行タイムや主観的運動強度に対プラセボで有意差が観察されたという。結果の詳細が「Sports」に掲載された。

シトルリンマレート(CM)のスプリント競技における可能性を探る
シトルリンマレート(citrulline malate;CM)は、摂取後に体内でL-アルギニンとなり一酸化窒素(nitric oxide;NO)産生を増やして血管を拡張し、組織への酸素供給を増やすように働く。また、アンモニアのクリアランスを高めることも示唆されている。これらの作用メカニズムから、エルゴジェニックエイドとしてのシトルリンマレート(CM)の影響は、これまで主として有酸素運動またはレジスタンストレーニングにおいて検討されてきており、パフォーマンス向上や主観的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)低下の報告がある。ただし、エビデンスはまだ確立されておらず、とくにスプリント競技における知見はより少ない。
これを背景として山中氏らは、トレーニングを行っているスプリンターが、100mスプリントを同じ日に2回試行する際にCMを急性摂取することが、2回目の試行のパフォーマンスや血中乳酸濃度、主観的運動強度(RPE)に影響を与え得るかを対プラセボで検討した。
男子学生スプリンター11人に二重盲検クロスオーバー法で検討
この研究の対象は、100m走を専門とする男子大学生11人。主な特徴は、年齢20.5±1.2歳、競技歴8.3±1.5年、自己ベスト記録11.22±0.47秒、World Athletics(世界陸上競技連盟)ポイント870.5±117.7であり、全員がTier 3(日々ハードなトレーニングを行っている競技レベルのスプリンター)に該当し、週に6日トレーニングを行っていた。
試験デザインは、全参加者に2回(100mトライアルとしては計4回)の試行を行うクロスオーバー法であり、全天候型屋外トラックにおいて、シトルリンマレート(CM)摂取条件、プラセボ摂取条件ともに、同じ時間帯、同じレーン、同じ環境(降水なしで気温30°C前後、湿度50%台)で実施。試行の順序はバランスに配慮したうえで無作為化した。
テスト当日は、50分間の標準化されたウォーミングアップ、20分間の休憩後、1回目のトライアルを実施。10分間の休憩後にサプリメントを350mLの水とともに10分間かけて摂取。再度、50分間の標準化されたウォーミングアップと20分間の休憩後に、2回目のトライアルを実施した。トライアル間隔は80~90分であり、2回目のトライアルはサプリメントの摂取70~80分後だった。なお、先行研究から、CMは摂取後約60分で血中濃度がピークになると報告されている。
サプリメントのCMはシトルリンとリンゴ酸を2:1で含み、プラセボはセルロースを用いた。用量はいずれも8gであり、外観や味から区別がつかない状態にすることで研究参加者と測定者に対して盲検化した。なお、両条件ともに試行の24時間前から激しい運動を禁止し、試行前夜と試行当日の朝は同じ食事を摂り、就床・起床時刻も変えないように指示した。
シトルリンマレート(CM)摂取で100mのタイム向上、主観的運動強度(RPE)低下
評価項目は、100m走行の風速補正タイム、血中乳酸濃度、および主観的運動強度(RPE)だった。
CM条件では2回目の100m走行のタイムが向上
100m走の風速補正タイムは、1回目のトライアルには条件間に有意差がなかった。しかし、サプリメントを摂取後の2回目のトライアルではCM条件がプラセボ条件よりも有意に短くなっていた(p=0.049)。ただし、効果量(Cohenのd)は小さかった(d=-0.16)。
1回目から2回目のタイム短縮幅は、CM条件のほうが有意に大きかった(p=0.008、d=1.29、条件×時間の効果量〈η2p〉=0.517)。なお、1回目の記録と2回目の記録を比較すると、プラセボ条件では0.029±0.096秒短縮していたが有意ではなく、一方、CM条件では2回目のほうが0.173±0.125秒、有意に短縮していた(p=0.001、d=0.38)。
副次的に評価した、風速補正しない実測値については、プラセボ条件も2回目の記録が1回目よりも有意に短縮していた(p=0.002、d=0.24)。ただし、主解析の結果と同様に、CM条件の短縮幅(p<0.001、d=0.39)はプラセボ条件より有意に大きかった(p=0.041、d=0.49)。
CM条件では2回目の走行直後の血中乳酸濃度が有意に上昇
血中乳酸濃度は、各トライアルの直前と、終了後の1分目から1分ごとに測定し、連続して数値の低下が観察されるまで、指先穿刺により採血し測定した。各トライアルの試行前の血中乳酸濃度は、1回目、2回目ともに条件間に有意差がなかった。
血中乳酸濃度の時間変化をみると、プラセボ条件では有意な変化は観察されなかったが、CM条件では2回目のトライアル直後に、有意に高値となっていた(p=0.001、d=0.92)。血中乳酸濃度の変動幅を条件間で比較すると、プラセボ条件(0.04±1.36mmol/L)よりもCM条件(1.41±0.73mmol/L)のほうが有意に大きかった(p=0.010、d=1.23)。
ただし著者らは血中乳酸濃度の変動について、「生理学的意義が現時点では明らかでないため、値が上昇したことの意義は不明である」と考察を加えている。
2回目の走行直前の主観的運動強度(RPE)は、CMのほうがプラセボより低値
RPEは2回目のトライアルの直前において、プラセボ条件が12.8±1.5であるのに対してCM条件は11.5±1.2であり、有意差が観察された(p=0.004、d=1.03)。その他のタイミングでは条件間に有意差がなかった。
この結果から、CMがアンモニア代謝に影響を及ぼし、RPEを抑制した可能性が考えられるが、本研究ではアンモニアの変化を確認していない。
さらなる研究が必要だが、CMの急性摂取が反復スプリント能力をサポートする可能性
著者らは本研究で明らかになった重要なポイントを、シトルリンマレート(CM)条件では、(1)2回目のスプリントパフォーマンスの向上、(2)2回目のスプリント直後の血中乳酸濃度の上昇、および(3)2回目のスプリント直前の主観的運動強度(RPE)の低下――が認められたという3点にまとめている。
ただし、プラセボ条件でも2回目のトライアルタイムが短縮したことから、初回のトライアルと再度のウォーミングアップが記録向上に寄与した可能性があり、「慎重な解釈が必要」と付け加えている。また、CMのエルゴジェニック効果はNO産生刺激を介するものと考えられるが、本研究ではそれらを評価していないことを限界点として挙げている。
CM条件において2回目のスプリント直後の血中乳酸濃度がプラセボ条件よりも高かったことについては、「乳酸反応の変化に関する生理学的意義は依然として明らかでない点が多い。解糖系の刺激がパフォーマンスに寄与した可能性もあるが、嫌気性代謝の負荷を増大させた可能性も示唆され、回復にとって必ずしも有利とはいえない」と述べている。
一方、「本研究における注目すべき点」として、CM条件ではプラセボ条件と比較して2回目のスプリント直前のRPEが有意に低かったことを挙げ、先行研究からも同様の影響が報告されていることから、「CMがアンモニアのクリアランスを促進することなどによって疲労の抑制につながるのではないか」といった考察を加えている。ただしこの点についても、「本研究ではアンモニアを測定しておらず、推測の域を出ない」としている。
論文の結論は、「得られた結果は、急性CMサプリメント摂取が反復スプリントパフォーマンスをわずかにサポートする可能性を示唆している。しかし、効果量が小さいこと、サンプルサイズが小さいこと、および試行順序や環境要因の影響の可能性を考慮すると、結果の解釈には注意が必要であり、さらなる研究が必要」とまとめられている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Effects of Acute Citrulline Malate Supplementation on Repeated 100 m Sprint Performance in Trained Sprinters: A Randomized Crossover Study」。〔Sports (Basel). 2026 Apr 7;14(4):143〕
原文はこちら(MDPI)







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