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CO2増加で野菜の収穫は増えるが栄養価が低下する ほうれん草とケールの報告メタ解析

地球温暖化の主要な原因とされている二酸化炭素(CO2)の増加が、ほうれん草とケールの収穫や栄養価にどのような変化をもたらすかを、これまでの研究のデータを統合したメタ解析により検討した結果が報告された。CO2の増加はほうれん草とケールの収穫を増やすこと、その反面で重要な栄養素の含有量を低下させることが示されている。

CO2増加で野菜の収穫は増えるが栄養価が低下する ほうれん草とケールの報告メタ解析

微量栄養素の供給源として重要なほうれん草とケール

気候変動、とくに地球の温暖化が、食料供給に前例のない負荷をかけていることがしばしば報告されている。温暖化のおもな原因の一つはCO2の増加であって、CO2の増加が世界の人々の主要なエネルギー源であり、かつタンパク源とされる畜産物の飼料である穀物や豆類の収量に及ぼす影響については、すでに複数の報告がある。

一方、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素の供給源である野菜類に及ぼす影響は十分研究されていない。野菜類の中でも、ほうれん草は各種ビタミンに加えて鉄、マグネシウムなどの必須ミネラルが豊富であり、アスリートの高い微量栄養素需要を満たすのに適している。ケールもまた各種ビタミンとミネラルが豊富な野菜として知られている。

今回紹介する論文は、これら2種類の野菜の収量、バイオマス、栄養価が、CO2濃度の上昇に伴いどのように変化するかを、既報論文のシステマティックレビューとメタ解析により検討した結果を示したもの。

システマティックレビューとメタ解析でCO2濃度上昇の影響を予測

システマティックレビューには、PubMed、Scopus、ScienceDirect、Web of Science Core Collection、Google Scholarなど、複数の文献データベースを用いた。検索は2024年3月12日までに行った。

包括条件は、ほうれん草とケールに対する高濃度CO2(650~3,000ppmを超える)環境で生育させることの影響を、比較対象条件(CO2濃度が400~450ppm程度)を設けて検討し、査読システムのあるジャーナルに収載されている論文として、報告された時期は制限しなかった。対照条件が設けられていない研究、高濃度CO2曝露以外の負荷(高温や干ばつなど)の影響も同時に評価していて高濃度CO2曝露のみの影響を解析に用いることができない研究、著者に複数回連絡しても全文または解析に必要なデータを入手できなかった研究などは除外した。

一次検索で872報がヒットし、重複削除後の734報をタイトルと要約に基づくスクリーニングにより42報に絞り込み、全文精査によって13件の研究の報告を抽出した。

抽出された研究の特徴

抽出された研究の多くは2000年代に入ってから報告されており、とくに2020年代以降に増加していた。

13件の研究で合計346項目の効果量が検討されており、外れ値を含む項目を除外した339項目をメタ解析の対象とした。多くは米国の報告(134項目/CO2濃度は720~60,000ppm)であり、次いで韓国(112項目/700~1,600ppm)、中国(43項目/700~800ppm)が続き、それらの国では複数のCO2濃度で検討されていた。それに対して、インド(33項目/650ppm)、イタリア(11項目/800ppm)、日本(7項目/800ppm)、カナダ(6項目/1,000ppm)は単一の高濃度CO2で検討していた。

生育期間は14~80日に分布しており、最頻値は28日で170項目が検討されていた。評価されていた項目の多くは収量またはバイオマスであり約4割(39%)を占めた。そのほかに、窒素化合物(18%)、ミネラル(14%)、光合成成分(10%)、植物性化合物(7%)、ビタミン(6%)、炭水化物(5%)が調査されていた。全体として、8割(79%)はケールを調査し、ほうれん草に関する調査は2割(19%)だった。

ほうれん草はCO2濃度上昇に伴い収穫がより大きく増えるが、栄養価がより大きく低下

CO2濃度上昇で収量とバイオマスは増加する

メタ解析の結果、CO2濃度の上昇はほうれん草とケールの成長と収量を増加させることが示された(効果量〈Hedgesのg〉=1.04)。CO2濃度の上昇のバイオマスに対する影響をほうれん草とケールを個別にみると、ほうれん草(g=1.21)のほうがケール(g=0.97)よりやや大きかった。

CO2濃度上昇で栄養素含有量は低下する

メタ解析の結果、CO2濃度の上昇は、ほうれん草(g=-0.76)とケール(g=-0.61)ともに、重要な栄養素の含有量を減少させることがわかった。タンパク質はほうれん草とケールの両方で減少し、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルはほうれん草でより顕著に減少した。

ほうれん草はケールよりもCO2濃度の上昇に伴う成長の加速が大きいものの、栄養素の損失もより大きかった。

CO2上昇が野菜の栄養素を希釈させ、欠乏症等のリスクを押し上げる

著者らは、「このような変化はこれらの野菜を必須ビタミンや必須ミネラルの供給源としている多くの人々に影響を与える可能性がある。CO2濃度の上昇が今後も続くならば、野菜類に含まれる栄養素の希釈が微量栄養素の欠乏や関連疾患リスク上昇などの健康問題につながるだろう」と述べている。また、「明らかになった結果は、気候変動下における食料需要を満たしつつ栄養価を維持するための農業戦略が必要であることを強調するものだ。本研究は、政策立案者、農業従事者、および科学者が、公衆衛生を守る持続可能な食料システムを計画する際に有用なエビデンスである」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Elevated CO2 on Yield and Nutritional Quality of Kale and Spinach: A Meta-Analysis」。〔Biology (Basel). 2026 Jan 15;15(2):152〕
原文はこちら(MDPI)

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