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ラグビー選手の負傷の半数強はタックル関連、下位チームは負傷発生率が高い JRLO発足後4シーズンの解析

国内の男子社会人ラグビー最高位リーグである、「ジャパンラグビーリーグワン(JRLO)」の4シーズンの公式戦すべてで発生した選手の負傷状況を、詳細に解析した結果が報告された。負傷発生率は1,000時間あたり64.0件であり、54%はタックルに関連して発生していること、最終順位の下位チームの負傷発生率は上位チームより有意に高いことなどが明らかにされている。JRLOメディカルコントロール部会が行っている負傷モニタリングプログラムのデータを帝京平成大学人文社会学部の大垣亮氏らが解析した結果であり、「Journal of Science and Medicine in Sport」に論文が掲載された。

ラグビー選手の負傷の半数強はタックル関連、下位チームは負傷発生率が高い JRLO発足後4シーズンの解析

2022年1月のJRLOスタート以来、4シーズン全試合の負傷を解析

ラグビーは負傷のリスクが高い競技であり、負傷による負担が大きいチームほど競技成績が低い傾向にあることも報告されている。このため、多くの国の競技統括団体がラグビー選手の負傷モニタリングを行い、対策に役立てている。国内では、JRLOの前身であるジャパンラグビートップリーグの時代から、負傷を縦断的に記録する取り組みが行われてきた。この取り組みを引き継ぎ、JRLOは2022年のスタート時点から、試合中に発生し競技からの離脱に至ったすべての負傷を記録して、安全性向上のためのデータを蓄積してきている。
大垣氏らはそのデータを用いて、国内エリートラグビー選手の負傷発生率、負傷の重症度や負担、発生機転などを解析した。またJRLOではディビジョンによって医療管理体制に差があることや、競技レベルも負傷の発生状況に影響を及ぼす可能性があることから、ディビジョン別の検討、および最終順位の上位チームと下位チームでの比較も行われた。

4シーズン、714試合、96チーム、1,440人で、競技からの離脱に至った負傷は1,827件

解析対象は、2022年、2022/23年、2023/24年、2024/25年の4シーズンに行われた714試合で、延べ96チーム、延べ1,440人が含まれた。

負傷発生率:ディビジョン2や3はディビジョン1より負傷発生率が高い

負傷の発生件数は全体で1,827件であり、1,000時間あたりの発生率は64.0件(95%CI:61.1~67.0)であった。重症度(平均離脱日数)は35日(95%CI:32~38)であり、負傷による負担(発生率×重症度)は1,000時間あたり2,235日(95%CI:2,135~2,340)であった。

負傷発生率をディビジョン別にみると、競技レベルが最も高いディビジョン1は1,000時間あたり59.6件(95%CI:55.9~63.5)、ディビジョン2は同66.8件(95%CI:61.0~73.2)、ディビジョン3は73.2件(95%CI:66.4~80.7)であり、ディビジョン3はディビジョン1に比べて負傷発生率が有意に高いことが示された。重症度はディビジョン間で同程度だったが、負傷による負担はディビジョン3(2,807日)がディビジョン1(2,007日)より大きかった。

負傷部位および診断:脳振盪とハムストリング損傷が好発、負担は膝が最大

負傷部位は頭部・顔面が多く(1,000時間あたり18.2件、負傷全体の28.5%)、2位は膝(同8.7件、13.6%)であり、この傾向はすべてのディビジョンで観察された。診断名別にみると脳振盪が最も多く(1,000時間あたり12.0件、全体の18.8%)、2位はハムストリング損傷(同6.4件、10.0%)で、この傾向はディビジョン1と2でも同様であった。なお、ディビジョン1における脳振盪の発生率はディビジョン3より有意に高く(発生率比〈IRR〉1.84〈95%CI:1.32~2.57〉)、ディビジョン3における足首の捻挫の発生率はディビジョン1よりも有意に高かった(IRR 1.89〈95%CI:1.28~2.80〉)。ディビジョン3で脳振盪が少なかった点について著者らは、ディビジョン1・2で導入されている頭部外傷評価(HIA)やセンサー内蔵マウスガード(iMG)がディビジョン3では未導入であり、真にリスクが低いのではなく、検出されにくかった可能性があると考察している。

負傷による負担(発生率×重症度)でみると、部位別では膝が1,000時間あたり592日と最も大きく、診断別では膝前十字靱帯損傷(253日)、脳振盪(253日)、ハムストリング損傷(246日)が上位であった。

負傷発生機転:タックルを「される」よりも「する」際の負傷が多い

負傷の機転として最も多いのは、「タックルをする」であり(1,000時間あたり19.0件、負傷全体の29.7%)、次いで「タックルをされる」であった(同15.5件、24.3%)。両者の差は全体(IRR 1.22〈1.08~1.38〉)およびディビジョン1(IRR 1.34〈1.13~1.59〉)で有意であり、ディビジョン2・3でも数値上は同様の傾向がみられた。

タックル以外では、ラック(5.6件、8.7%)、スプリント(5.2件、8.1%)、選手同士の衝突(4.9件、7.7%)などが比較的多くみられた。

下位チームは上位チームよりも負傷発生率が高く、下位チーム同士の試合で特に高い

次に、各ディビジョン内のシーズン最終順位の上位半数と下位半数のチームを比較した。その結果、下位チームの選手の負傷発生率は、上位チームよりも有意に高いことが明らかになった(IRR 1.37〈95%CI:1.25~1.51〉)。

また、上位チーム同士の試合と比べて、上位チームと下位チームの試合(IRR 1.21〈1.08~1.36〉)や下位チーム同士の試合(IRR 1.63〈95%CI:1.42~1.87〉)は負傷発生率が有意に高いことも明らかになった。上位チームと下位チームの試合を基準とし、下位チーム同士の試合を比較しても、負傷発生率に有意差が認められた(IRR 1.35〈95%CI:1.20~1.51〉)。

これらの点について著者らは、「パフォーマンスの差が負傷リスクに関与していることが示唆され、体力、戦術的アプローチ、試合強度などの差が、下位チームの負傷しやすさにつながっている可能性がある」との考察を加えている。

下位ディビジョンへの医療サポートの強化と、脳振盪や膝の負傷の予防戦略の確立を

論文には本研究で明らかになったポイントが以下のようにまとめられている。

  • ジャパンラグビー リーグワン(JRLO)は、公式戦における負傷データを収集するための包括的なシステムを構築している。JRLOで観察された負傷発生率は、他のエリート国際ラグビー大会で報告されているものと同程度であった。
  • 本研究は、アジアのエリートラグビー選手を対象とした初の大規模な疫学研究であり、ディビジョン別のリスクプロファイルを明らかにした。
  • 下位ディビジョンの試合で負傷の発生率が高く、負担も大きかった。これを考慮すると、これらのディビジョンのチームに提供される医療サポートを強化することが重要である。
  • あらゆる競技レベルにおいて、脳振盪や膝の負傷の予防を目的とした戦略が優先的に実施されるべきである。

一方、研究の限界点として、試合からの離脱に至らなかった負傷は解析対象とされていないこと、公式戦以外(練習中など)の負傷は含まれていないこと、各チームの医療スタッフが診断・記録しており、HIAやiMGの有無などディビジョン間の医療体制の差が脳振盪の検出に影響した可能性があること、男性選手のみのデータでありエリートラグビー選手の負傷に関する性差は依然として不明なことなどを挙げている。そのうえで論文は、「ディビジョンによる負傷状況の差異、および同一ディビジョン内の順位に関連したリスク因子は、それぞれに応じた予防戦略や、下位ディビジョンへの医療サポートの強化の必要性を示すものである。また、脳振盪、膝の負傷、タックル技術を対象とした介入の必要性が浮き彫りになった」と結論付けている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Incidence, severity, and burden of injury in the Japanese elite men's Rugby Union league」。〔J Sci Med Sport. 2026 Aug 12:S1440-2440(26)00524-4. doi: 10.1016/j.jsams.2026.08.203〕
原文はこちら(Elsevier)

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