オーラルフレイルの高齢者は「10%超の体重減少」リスクを高める 咀嚼困難が最も強い関連
オーラルフレイル※1を有する高齢者は、そうでない高齢者と比べ、10%を超える体重減少を起こすリスクが高いことが示された。東京科学大学大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野の相田潤氏らが、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)のデータを解析した結果であり、JAGESのサイトにプレスリリースが掲載された。

※1 オーラルフレイル:口の機能の健常な状態(いわゆる「健口」)と「口腔の機能低下」との間にある状態。
研究の概要:高齢者の体重減少にオーラルフレイルが関連
高齢者の体重減少はフレイルや要介護状態のリスクとなる。一方、口腔の健康は、よく食べることを通じて体重に影響すると考えられる。
日本全国の65歳以上の高齢者3,305人のデータを用いて6年間の追跡調査を行った。追跡期間中に8.9%が体重減少(臨床的に意味のある10%を超える減少)を経験した。オーラルフレイルを有する高齢者は、そうでない高齢者と比べて10%を超える体重減少を起こすリスクが高いことが示された。さらに、オーラルフレイルを構成する「現在歯数が20本未満」「咀嚼困難」「嚥下困難」「口腔乾燥」「発音困難」という五つの要素のうち、咀嚼困難が最も強い予測因子であることが確認され、また現在歯数が咀嚼困難に関係するなど、五つの要素が互いに関連していることも明らかになった。
これらの結果から、口腔機能を維持することが栄養不良の予防や高齢社会における健康寿命の延伸につながる可能性が示唆された。
図1 オーラルフレイルと 10%以上の体重減少との関係(n=3,305)

研究の背景:オーラルフレイルは高齢者の体重に、どのように影響するか
栄養不良による体重減少は、高齢者によく見られる深刻な健康問題であり、フレイル・障害・要介護・死亡のリスクを高める。複数の口腔機能が低下する状態である「オーラルフレイル」は、栄養状態の維持に影響を与える重要な要因とされている。しかしこれまで、自立して生活する高齢者において、オーラルフレイルが長期的な体重減少にどのようにかかわるのか、またその構成要素同士がどのように関連しているのかについては、十分に明らかにされていなかった。
対象と方法:全国3,305人の高齢者を6年間追跡
本研究では、日本全国の65歳以上の自立した高齢者を対象に、日本老年学的評価研究(JAGES)の2016~22年のデータを用いて、6年間の追跡調査を行った。解析対象者数は3,305人で、平均年齢は72.0歳(標準偏差4.9)※2、女性が47.4%だった。
※2 標準偏差:データの散らばりの度合いを示す値。
結果:オーラルフレイル該当者は10%超の体重減少を来しやすい
追跡期間中に8.9%の参加者が、臨床的に意味のある10%を超える体重減少を経験していた。
また、オーラルフレイルを有する高齢者は、そうでない高齢者と比べて体重減少を起こすリスクが高いことが示された(標準化係数※3〈SC〉=0.09、95%信頼区間※4〈95%CI〉=0.01~0.16)。さらに、オーラルフレイルを構成する五つの要素――「現在歯数が20本未満」「咀嚼困難」「嚥下困難」「口腔乾燥」「発音困難」――のうち、咀嚼困難が最も強い予測因子であることが確認された(因子負荷量※5=0.45、95%CI=0.35~0.55)。また、現在歯数が咀嚼困難に関係するなど、五つの構成要素が互いに関連していることも明らかになった。
※3 標準化係数:説明変数と目的変数を標準化した後に得られる回帰係数。
※4 95%信頼区間:100回調査をしたら95回の結果が収まる範囲を示す。
※5 因子負荷量:因子が測定変数に影響を与えている程度を表す値。
本研究の意義:高齢者の栄養不良を防ぐためにもオーラルフレイル対策が必要
以上の結果を基に著者らは、「オーラルフレイルが体重減少リスクを高めることを示した。とくに咀嚼困難が最も強い予測因子だった」と結論づけている。
また、「これらの結果から、オーラルフレイルは歯や口の問題にとどまらず、高齢者の栄養や全身の健康に大きく関わる要因であることが示され、オーラルフレイルの予防や治療が栄養不良と体重減少を防ぎ、健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆される。日本のような急速に高齢化が進む社会にとって重要な知見だと考えられる」と述べている。
プレスリリース
オーラルフレイルが高齢者の体重減少リスクを高める~オーラルフレイルの構成要素のうち咀嚼困難が最も強い関連~
文献情報
原題のタイトルは、「Oral Frailty as a Predictor for Weight Loss in Older Japanese: A Cohort Study」。〔J Dent Res. 2026 Jan;105(1):87-94〕
原文はこちら(IADR/AADOCR)








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