糖質や脂質を有効活用! ミトコンドリア機能を高めて持久力UP!
負荷が強い運動では、エネルギー源として糖質が多く使われる1)。体内の糖質の大半はグリコーゲンであり、アスリート、とくに持久力系スポーツのアスリートは、食事の摂り方を工夫してグリコーゲンをできるだけ多く蓄える戦略が競技後半のパフォーマンス低下抑制に役立つ。
しかし、体内のグリコーゲンが蓄えているエネルギー量は、一般成人で2,000kcal程度、アスリートでも2,500kcalほどとされる。一方で、例えばフルマラソンでは約2,500kcalを消費すると言われており、グリコーゲンを精一杯蓄えていても不足してしまう。そこで、もう一つの主要なエネルギー源である脂質の出番となる。
今回は、その脂質をエネルギー源として上手に活用する秘訣を、東京大学大学院総合文化研究科・寺田新准教授に解説いただいた。
糖質や脂質はミトコンドリアでATPに作り替えられる
グリコーゲンが蓄えているエネルギー量は、アスリートでも2,500kcalと述べたが、それに対して脂質、つまり体脂肪は、体重60kg、体脂肪率15%の人で9kg存在し、そこには約6万5,000kcalものエネルギーが貯蓄されている。これを活用しない手はない。このときにポイントになるのは「ミトコンドリア」の働きだ。
糖質や脂質は「エネルギー源」ではあるが、そのままエネルギーになるのではなく、エネルギーの通貨と言われる「アデノシン三リン酸(ATP)」に作り替える工程が必要だ。その工程を担っているのが、細胞内にある小器官「ミトコンドリア」にほかならない2)。
ミトコンドリアは、その働きを高めることができる!
トレーニングによって、このミトコンドリアの働きを高めることができる。マラソンのような持久力系のトレーニングを続けていると、ミトコンドリアの機能が高まり、運動の主要なエネルギー源として脂質が使われるようになってくる。その結果、グリコーゲンが温存され、競技終盤の「ここぞ」という時に、スタミナを発揮することが可能になる。
ミトコンドリア機能については今も新たな知見の報告が続いており、ホットな研究領域の一つだ。パフォーマンス向上を狙うアスリートにとって目を離せないトピックなので、詳しく解説されている「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」を、ぜひ最後まで読んでほしい。
カラダの中にある脂質をエネルギー源としてもっと活用し、持久力をアップしよう!
〈監修者〉東京大学大学院総合文化研究科 寺田 新 准教授
糖質を上手に摂ると、理想とする パフォーマンスをより長く続けることができる!
〈監修者〉東京大学大学院総合文化研究科 寺田 新 准教授
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引用文献
- 1)Am J Physiol. 1993 Sep;265(3 Pt 1):E380-91
- 2)Am J Physiol. 1992 Jun;262(6 Pt 1):E791-9