体の理想的な動きに必要な「筋肉」と「関節」、そして「腱」とは?
スポーツの競技力向上や、記録向上を狙う際に必要とされる要素は数々挙げられるが、精神面を除いて身体能力に限ると、筋力と持久力に負うところが大きい。とくに瞬発力や敏捷性が要求される競技では、筋肉が生み出すパワーとともに、体をいかに柔軟に動かせるかが鍵となる。
体の動きももちろん、筋肉によって行われている。よって、筋力が強いに越したことはない。ただ、柔軟な体の動きを実現するには筋力だけを高めても不十分だ。筋肉の力を動きに変える「関節」や、力を伝える「腱」の働きが欠かせない。
今回は、関節や腱がなぜ運動パフォーマンスに重要なのか、また毎日の運動によって、関節や腱にどのような負荷がかかっているのかについて解説する。
柔軟性はパフォーマンスの発揮と、怪我の防止に大切
「アスリートは体が柔らかい」と言われるように、柔軟性はハイパフォーマンスを発揮するための重要な要素である。柔軟性とは関節の可動域の程度を示し、柔軟性が高いことは、筋肉や腱が伸びやすいこと、筋肉がダイナミックに関節を動かせることを指す。柔軟性が高ければ、関節に無理のない動きをすることができ、運動中のケガの防止にもつながる。 一方、筋肉と骨をつなぐ腱は、運動パフォーマンスに重要な役割を果たす。例えば、アキレス腱は、硬いほど、ランニングエコノミーが良い(少ないエネルギーで走れる)という研究結果が報告されている1)。また、腱が硬いアスリートほどジャンプ力が高いというデータもある2)。
また、ランニング中の着地の際には歩行時に比べて1.5〜5倍程度の衝撃が足にかかり、ジャンプの着地の際にはなんと十数倍にもなるという。その事実からも、関節や腱に負荷が掛かっていることが理解可能だ。事実、ランナーの70%が関節や腱にかかわる症状を経験するという調査結果も報告されている3)。
関節や腱のコンディショニングという視点
このような関節や腱への負荷が生じていても、その初期には違和感が現れる程度だ。しかし、やがて痛みを発して可動域が狭まり、パフォーマンスが低下したり、怪我のリスクが上昇してしまうことが少なくない。この状態でも無理を重ねると、選手生命に影響が及びかねない。
筋力トレーニング後のコンディショニングの重要性は多くのアスリートが認識しているが、関節や腱のコンディショニングの重要性はないがしろにされがちではないだろうか。関節の軟骨は加齢とともに擦り減っていくため、故障が多発するのはどちらかと言えばトレーニング歴の長いアスリートだが、その下地は若い頃から蓄積されている可能性があり、全てのアスリートが関心を持つべきテーマと言えるだろう。
アスリートにおける関節や腱の重要性について、より詳しく知りたい方は、「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」へ。
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引用文献
- 1)Eur J Appl Physiol. 2010 Nov;110(5):1037-46
- 2)J Appl Physiol. 2005 Sep;99(3):986-94
- 3)Med Sci Sports Exerc. 2004 May;36(5):845-9