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ビタミンD値は体力と相関する一方、競技固有スキルとは関連がない ユースサッカー選手での検討

ユースサッカー選手を対象とする横断研究から、ビタミンDレベルが一般的な体力テストの成績と関連があるというデータが報告された。ただし、サッカー固有のスキルとは関連がないという。クロアチアでの研究。

若年アスリートでのビタミンDの機能性を検討

これまでの研究で体内の組織のほぼすべてにビタミンD受容体が発現していることが明らかになり、さまざまな角度からビタミンDの機能性が研究されるようになった。多くの機能性が報告されているが、とくに骨の石灰化、筋肉の収縮性、神経学的伝導性にとってビタミンDが、重要な脂溶性前駆体ホルモンとして働いていることがわかっている。

アスリートのパフォーマンスとの関連を検討した研究も報告されている。しかし若年アスリートを対象とする研究の結果は一貫性を欠いている。また体内のビタミンDの多くは日光曝露により皮膚で産生されるため、研究を実施する場所の緯度の違いや、季節も研究結果に影響を及ぼす可能性がある。

こうしたなか本論文の著者らは、クロアチア南部のユースサッカー選手を対象とする横断研究を実施した。なお、クロアチアは東欧のバルカン半島に位置し、緯度は42~47度。

北緯43度の土地で、冬の終わりに検討

研究の対象は、同国のスプリト(北緯43度。札幌と同緯度)にあるサッカーチームのユース選手52名(15.98±2.26歳)。適格基準は、サッカー歴3年以上で、研究前月のトレーニング参加率が80%以上であること。怪我や故障中の選手は除外した。研究実施は2020年2月であり、冬季の終わりにあたるこの時期は1年で最もビタミンDレベルが低下する時期。

パフォーマンステストは、一般的な体力を測定する項目と、サッカー固有のスキルを測定する項目に分けて実施された。

一般的な体力を測定する項目としては、10mと20mのスプリントタイム、方向変換走(20ヤードテスト)、カウンタームーブメントジャンプ(countermovement jump test;CMJ)、および反応強度指数(reactive strength index;RSI)を測定した。サッカー固有のスキルを測定する項目としては、方向転換速度テスト(change of direction speed test;soccer-CODS)、サッカー固有の敏捷性テスト(agility test;soccer-AGIL)を測定し、また、バランス力を全体的な安定性指数(overall stability index;OSI)で評価した。

各テストは3回実施し、いずれもベストスコアを解析に用いた。

過半数がビタミンD不足または欠乏

対象全体の25(OH)Dレベルは79.03±25.32nmol/Lで、中央値は73.55nmol/Lだった。ビタミンDレベルが十分(20(OH)Dが75nmol/L超)と判定されたのは46.4%で、半数以下にとどまった。44.0%は不足(同50~75nmol/L)しており、9.6%の選手はビタミンD欠乏(同50nmol/L未満)に該当した。

ビタミンD充足群と不足/欠乏群とで、一般的体力の評価に有意差

ビタミンD充足群23名と、不足/欠乏群29名に群分けし比較すると、充足群のほうが年齢が高いという有意差が存在した。それとともに、一般的な体力の評価項目に含めた20mスプリントと方向変換走、反応強度指数(RSI)に、有意な群間差が認められた。具体的には以下のとおり。

ビタミンD充足群、不足/欠乏群の順に、年齢は15.76±1.67 vs 14.37±2.49歳(p=0.03)、BMIは21.09±1.94 vs 21.71±1.77(p=0.42)、10mスプリントは1.74±0.11 vs 1.80±0.11秒(p=0.06)、20mスプリントは3.06±0.18 vs 3.19±0.20秒(p=0.02)、20ヤード方向変換走は4.74±0.27 vs 4.95±0.40秒(p=0.04)、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)は33.67±6.26 vs 31.09±5.71cm(p=0.13)、RSIは1.03±0.28 vs 1.20±0.30(p=0.04)。

効果量(effect size)を評価すると、年齢(d=0.65,95%CI;0.1~1.2)、20mスプリント(d=0.68,95%CI;0.12~1.24)、および20ヤード方向変換走(d=0.62,95%CI;0.06~1.17)の3項目はd値が0.6を上回っていた。一方、CMJはd値が0.6に至らず、効果はわずかと考えられた。

サッカー固有のスキルには有意差なし

次に、サッカー固有のスキルの結果を比較すると、以下に記すように、いずれも群間差は有意でなかった。

ビタミンD充足群、不足/欠乏群の順に、soccer-CODSは2.52±0.20 vs 2.63±0.25秒(p=0.09)、soccer-AGILは2.80±0.15 vs 2.88±0.25秒(p=0.21)、安定性指数(OSI)は1.94±1.43 vs 1.39±0.45(p=0.05)。

ビタミンDはスポーツパフォーマンス支持的に働く

これらの結果について、著者らは考察の中でまず、44.0%がビタミン不足状態であったことに焦点を当てている。この数値自体は「既報と一致する」と述べたうえで、「冬季の終わりというビタミンDレベルが最も低い時期に行ったことを考慮したとしても、懸念の残るデータだ」という。さらにビタミン欠乏が9.6%であった点については、同じ地理的地域の年齢を一致させた他の研究に比較し「はるかに低い有病率」だとしている。その理由として、「おそらく、ビタミンDレベルが極めて低いことは、競技スポーツへ参加した場合の成功を制限する要因であるため」と推察している。

結論としては、一般的体力の評価に有意差があった一方でサッカー固有のスキルには有意差が認められなかったことから、「ビタミンDは、各競技固有のパフォーマンススキルにおいて重要なのではなく、全般的なパフォーマンスに対し支持的な役割を果たしている」とまとめ、「今後の研究では、サッカー以外の競技に参加するユース選手を対象に、より多くの身体能力テスト、およびその競技特有のスキルに対するビタミンDの影響を調査する必要がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of Vitamin D Levels with Physical Fitness and Motor Performance; A Cross-Sectional Study in Youth Soccer Players from Southern Croatia」。〔Biology (Basel). 2021 Aug 5;10(8):751〕
原文はこちら(MDPI)

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