小中学生の体力低下は新型コロナの影響か? 令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査①
スポーツ庁「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果が、さきごろ発表された。令和元年度に比べると、小中学生の男子・女子ともに体力合計点が低下していた。コロナ禍の影響が考えられるという。同庁では、「コロナの感染拡大防止に努めつつ、体育の授業等においてできることから実施していくことが重要」としている。この調査の結果の概要を2回に分けて紹介する。
調査対象と調査項目について
「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」は、平成20年度(2008年度)から毎年行われている。調査対象は、小学5年生と中学2年生の全員。実技と質問紙による調査がある。令和3年度調査の調査対象数は小学5年生が約103万、中学2年生が約98万人であり、令和3年4~7月に各学校において実施された。
実技テストの内容は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、50m走、立ち幅とびと、小学5年生は20mシャトルランとソフトボール投げ、中学2年生は20mシャトルランまたは持久走(男子1,500m、女子1,000m)、およびハンドボール投げ。質問紙調査からは、1週間の総運動時間、スクリーンタイム(テレビ、パソコン、スマートフォン、タブレット、ゲーム機等の使用時間)、体格、生活習慣、コロナの影響などを把握した。
児童・生徒の体力の状況
体力合計点の状況:令和元年度調査から低下
前記の各実技テストの結果を10点満点に換算、合計80点満点にスコア化した体力合計点は、令和元年度調査と比べ、小・中学生の男子・女子ともに低下した。低下の要因として主に以下の3点が考えられるという。
- 運動時間の減少
- 学習以外のスクリーンタイムの増加
- 肥満に該当する児童生徒の増加
これらはいずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受けたことで、さらに拍車がかかったと考えられるという。また、COVID-19の感染拡大防止に伴い、学校の活動が制限されたことで、体育の授業以外での体力向上の取り組みが減少したことも考えられるとしている。
各実技テスト項目の状況
小学生の結果
- 上体起こし、反復横とび、20mシャトルラン、持久走は大きく低下
- 長座体前屈は概ね向上
- 50m走、立ち幅とびが低下傾向
中学生の結果
- 上体起こし、反復横とび、20mシャトルラン、持久走は大きく低下
- 長座体前屈は概ね向上
- 女子は握力、50m走、立ち幅とびが低下傾向
体力合計点の評価の状況:評価A・Bが減り、D・Eが増加
体力合計点の評価を以下の基準で判定し、過去からの推移をみると、令和3年度は、小・中学生、男子・女子ともに、AやBの該当者の割合が減少した一方、DやEの該当者の割合が増加していた。
小学校5年生 | 中学校2年生 | |
---|---|---|
A | 65点以上 | 57点以上 |
B | 58〜64点 | 47〜56点 |
C | 50〜57点 | 37〜46点 |
D | 42〜49点 | 27〜36点 |
E | 41点以下 | 26点以下 |
本調査の結果を紹介する2回目は、運動時間やスクリーンタイムの変化などの調査結果を紹介する。
関連情報
令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(スポーツ庁)
スポーツ庁「体力・運動能力調査」アーカイブ
平成30年度(2018年度)
1.元気な高齢者が増えている!?
2.10代女性の運動習慣に明らかな差
3.ストレス解消、学力向上、達成意欲...スポーツのさまざまな効果と可能性
令和元年度(2019年度)
1.小学生男子の体力が過去最低
2.小中学生体力低下の原因は?
令和元年度(2019年度)
1.調査概要と加齢に伴う運動能力の変化
2.年齢別に見る体力・運動能力の年次推移
3.体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較
4.幼児期の外遊びと小学生の運動・体力
令和2年度(2020年度)
新型コロナの影響か?「令和2年度 体力・運動能力調査」は、わずかに低下傾向
令和3年度(2021年度)
1.小中学生の体力が低下しているのは新型コロナの影響か?
2.運動時間が減りスクリーンタイムの増加が顕著
令和3年度(2021年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化
②青少年6~19歳の体力・運動能力
③成年20〜64歳と高齢者65~79歳の体力・運動能力
④10年間の調査結果の概観
令和4年度(2022年度)
①子どもの体力が3年連続低下
②中学女子以外は肥満の割合が過去最高
③体育が楽しい中学生の割合が過去最高
令和4年度(2022年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化(全年齢)
②6~19歳の体力・運動能力
③20~79歳の体力・運動能力
④運動・スポーツ実施状況と体力、健康状態、生活充実度などとの関係性