小学生男子の体力が過去最低 スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(1)
スポーツ庁はこのほど、令和元年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を公表した。小・中学生の男子・女子ともに前年度より体力が低下し、特に男子の低下が大きく、小学生男子に関しては過去最低を記録した。背景因子として、ゲームやスマートフォンなどの利用時間を示す「スクリーンタイム」が長くなると体力が低くなる傾向がみられるという。2回に分けて紹介する。
調査の目的と方法
この調査は、子どもの体力の状況を把握・分析し体力向上につなげること、および運動習慣や生活習慣等を把握し学校における体育・健康等の指導・改善に役立てることを目的に、平成20年度(2008年度)から毎年行われている。調査対象は、小学5年生と中学2年生の全員。実技と質問紙による調査がある。
実技に関しては、小学5年生は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン、50m走、立ち幅とび、ソフトボール投げを評価し、中学2年生は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、持久走(男子1,500m、女子1,000m)または20mシャトルラン、50m走、立ち幅とび、ハンドボール投げを評価する。
令和元年度調査の調査対象数は小学5年生が108万9,438人で調査実施者は105万1,617人(実施率96.5%)、中学2年生はそれぞれ106万7,071人、96万3,247人(同90.3%)。
体力の変化
体力合計点の変化:小・中学生の男子・女子すべて、前年度より低下
実技テストは前述の各項目を10点満点とし、合計80点満点で評価。
令和元年度の点数は、小学5年生(以下、小学生と省略)男子が53.6点。これは前年度の54.2点より低いだけでなく、調査が開始された平成20年度以降で最低点だった。
小学生女子は55.6点、中学2年生(以下、中学生と省略)の男子は41.6点、中学生女子は50.0点で、いずれも前年度より低下した。
体力合計点の状況
スポーツ庁では、このように体力合計点が低下した背景として、学校での授業以外の運動時間の減少、スクリーンタイム(1日あたりのテレビ、スマートフォン、ゲーム機等の視聴時間)の増加、肥満児童・生徒の増加、朝食を食べない児童(小学生)の増加を挙げている。
実技テストの細項目別にみた変化:20mシャトルラン、持久走、50m走が大きく低下
各実技テストの結果は以下のとおり(括弧内はこれまでの調査における最高記録)。全体的に低下しており、とくに20mシャトルラン、持久走、50m走が大きく低下した。
種 目 | 小学生 男子 |
小学生 女子 |
中学生 男子 |
中学生 女子 |
---|---|---|---|---|
握 力 | 16.4kg (17.0kg) |
16.1kg (16.4kg) |
28.6kg (30.0kg) |
23.7kg (24.2kg) |
上体起こし | 19.8回 (19.9回) |
18.9回 (19.0回) |
26.9回 (27.5回) |
23.6回 (23.8回) |
長座体前屈 | 37.6cm (同) |
33.2cm (33.3cm) |
46.3cm (同) |
43.4cm (同) |
反復横跳び | 41.7点 (42.1点) |
40.1点 (40.3点) |
51.9点 (52.2点) |
77.3点 (同) |
20mシャトルラン | 50.3回 (52.2回) |
40.8回 (41.9回) |
83.1回 (85.9回) |
58.0回 (59.5回) |
持久走 | — | — | 1,500m 400.0秒 (392.3秒) |
1,000m 290.6秒 (287.5秒) |
50m走 | 9.42秒 (9.36秒) |
9.63秒 (9.60秒) |
8.02秒 (7.99秒) |
8.81秒 (8.78秒) |
立ち幅とび | 151.5cm (154.0cm) |
145.7cm (146.0cm) |
195.0cm (195.6cm) |
169.7cm (170.1cm) |
ソフトボール投げ | 21.6m (25.4m) |
13.6m (14.8m) |
— | — |
ハンドボール投げ | — | — | 20.3m (21.3m) |
女子12.9m (13.5m) |
授業以外での運動時間:週420分以上運動していると体力合計点数が高い
学校での体育の授業以外で運動する1週間あたりの時間が「420分以上」と回答した児童・生徒の割合は前年度から減少し、とくに男子の減少幅が大きかった。
児童生徒の運動時間(体育の授業を除く)
そして1週間あたりの運動時間が420分以上の児童・生徒は、420分未満の児童・生徒に比較し、以下に記すように体力合計点数が高かった。小学生男子の体力合計点数は1週間あたりの運動時間が420分以上では57.6点、420点未満では49.3点。以下同順に、小学生女子では60.0点、53.7点、中学生男子43.4点、33.3点、女子54.7点、43.1点。
以上、小中学生の体力低下が認められるが、スポーツ庁がその背景因子として挙げている、スクリーンタイムや肥満、朝食欠食率の増加については、「スポーツ庁『全国体力・運動能力、運動習慣等調査』(2)」として取り上げる。
関連情報
令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(スポーツ庁)
スポーツ庁「体力・運動能力調査」アーカイブ
平成30年度(2018年度)
1.元気な高齢者が増えている!?
2.10代女性の運動習慣に明らかな差
3.ストレス解消、学力向上、達成意欲...スポーツのさまざまな効果と可能性
令和元年度(2019年度)
1.小学生男子の体力が過去最低
2.小中学生体力低下の原因は?
令和元年度(2019年度)
1.調査概要と加齢に伴う運動能力の変化
2.年齢別に見る体力・運動能力の年次推移
3.体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較
4.幼児期の外遊びと小学生の運動・体力
令和2年度(2020年度)
新型コロナの影響か?「令和2年度 体力・運動能力調査」は、わずかに低下傾向
令和3年度(2021年度)
1.小中学生の体力が低下しているのは新型コロナの影響か?
2.運動時間が減りスクリーンタイムの増加が顕著
令和3年度(2021年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化
②青少年6~19歳の体力・運動能力
③成年20〜64歳と高齢者65~79歳の体力・運動能力
④10年間の調査結果の概観
令和4年度(2022年度)
①子どもの体力が3年連続低下
②中学女子以外は肥満の割合が過去最高
③体育が楽しい中学生の割合が過去最高
令和4年度(2022年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化(全年齢)
②6~19歳の体力・運動能力
③20~79歳の体力・運動能力
④運動・スポーツ実施状況と体力、健康状態、生活充実度などとの関係性